辿り着いた未来 15
あと少しで終わりです!では!辿り着いた未来十五話目です!
黒衣の騎士との戦いから一時間も経たないうちに、俺はエアロードと共に南区中央駅前広場に来ていた。
出店から少しだけ張られたスタッフエリアに入ると、中では深刻そうな表情な人間達が既に集まっている。
俺としては少し前にやらかしたといってもいい黒衣の騎士の戦いがバレたのだろうかと冷や冷やして居るところで、輪の中に入っていくと深刻そうにしている商会の役員の人がタブレット片手に喋りだす。
「先ほど売り上げ計算を行い、南区エリア1の売り上げの上下傾向を計算したところ、このままでいくと恐らくエリア1はギリギリで二位だという結果になりました。ここまで来たのなら一位を目指すべきだと判断いたしました」
要するに一位を取る為の作戦会議という話なのだろう。
しかし、SNSを通じてこの『たこ焼き』が出回っており、既にデコレーションたこ焼きなるメニューが俺の知らない間に作られ、売り上げに貢献している。
これ以上、あと二日でどうにかできるとは全く思わない。
しかし、このまま何も対策しないで過ごせば間違いなく二位なのは間違いない。
普段であれば別にいいと高をくくるが、今回はガーランドとの勝負がひかえている。ランキング勝負で同じ位なら売上勝負になるらしい。そうなれば俺達に勝ち目はない。
複数の店舗を持つガーランドでは総売り上げ勝負になれば、勝ち目何て存在しないのでなんとしてもランキング勝負で勝たなくてはいけない。
「でも、デコレーションたこ焼きも順調で、SNSを通じて発信をしています。これ以上売り上げを増やす手段何て……」
なんて言っていると携帯でニュース欄を見ていたらしいレクターが俺の方をじっと見てくる。
俺としてはあの事件を知られたのではないのかと思考する。
「ねえソラはさここに来る一時間前に東区で何かしなかった?」
「何もしていないけど?」
「そう?この緑色の鎧ってソラだと思うんだけど………」
皆にニュース欄を見せると、そこにはまごうことなく俺が写っており、戦闘して暴れ回っている姿が映されており、その上軍はそれを魔導機を使ったデモンストレーションだと発表している。
その下にインタビューに答えたと書かれている俺の父である『アベル・ウルベクト』が顔写真付きで写っている。
あのクソおやじ!!
「ねえ………!俺良い事思いついた」
マズイあの顔は間違いなく悪いことを考えている顔をしている。
しかし、俺としては最終日はジュリとのデートの約束がある為、予定を潰されるわけにはいかない。
「待て!俺は最終日は予定が………!」
「要するに明日は大丈夫ってことだよね」
ますますマズイ。明日一日を使って悪さを考えている。
すると、レクターは周囲の人達に耳打ちをしていくと商会の役員から手伝いに来ているメンバーまでが俺を見ながら微笑む。
一堂に全員が「良いですね」と声に出す。
マズイ!マズイ!!凄くマズイ!!!
間違いなく明日俺に厄が降りかかってくるのは間違いない。こうなれば俺は一目散に逃げる必要がある。
俺は全神経を使って踵返し、走り出そうと全力を尽くすが、俺をレクターお得意の足払いで阻止してくれる。
俺はこけそうになる中、両腕の力を使ってでも逃げ出そうとする。
しかしそれを阻止するべくレクターが上に乗っかってくる。
「どけ!嫌だぞ!何か奇妙な事を提案するに決まっている!」
「いいや。ちょっと演劇じみたことをしよ。俺も付き合うからさぁ」
「絶対に嫌だ!疲れる奴だ!面倒ごとが俺にやってくる前兆だ!」
俺は全力で逃げ出そうとするが、他のメンバーまでもが悪そうな微笑みをしている中、全員が「ソラ」と言いながら近づいてくる。
「絶対嫌だ!!!」
結局逃げ切ることもできず、五日目の夜中を迎えた。
レクターが提案した内容というのは俺とレクターを使った武術を使った見世物をする事、それは魔導機を使ったものを使用し、それを見ることが出来るフロアを別に作る。
あくまでも出し物は『たこ焼き』を入れた物で、見世物は金は取らない。
しかし、五日目の夕方に俺がやらかした事件の結果、俺が有名になっている事を利用し客を集めようという運びになった。
簡単な見せ場を作り、そこで簡単な試合を行うという項目、定期的に俺とレクターが行う中、それ以外の道場メンバーもそこで試合をする運びになった。
俺としては疲れる事この上ない事態なのであり、出来る事ならやりたくないが、逃げ出すことを考慮に入れ、エアロードとシャドウバイヤが買収されてしまった。
そのままお開きとなり、家に帰って夕食を食べながら憂鬱そうな表情をして、実質に戻りベットの上で天井を眺めているうちに現在に至る。
この窓から見える風景も又俺にとってはいつもの風景であり、奈美達からすれば慣れない風景でもある。
明かりでライトアップされた帝城と、その明かりが反射している帝池、北区や西区などの街並みや明かりがここからでもよく見え、車の走る音や光が窓越しにでも俺に伝わってくる。
やっぱり俺はこの街が大好きだ。
この街にきて、この街で過ごして本当に良かった。
今日。改めて思った。
だからこそ、奈美や海や万理たちにも同じことを感じて欲しい。
「………嫌な所だって思われたら嫌だな」
口から漏れ出る言葉は俺の本心だ。
何度毎晩暮らしていても、このワクワク感は忘れられない。
「そういえばだが。明日の夜は帝城で行われるパーティーに参加するのか?」
エアロードが自分用に用意したハンモックに揺られながら尋ねる。
しかし、すっかり世俗慣れした竜だな。
ちなみにシャドウバイヤは奈美の部屋で同じようにハンモックで寝ていることだろう。
そんな事より、パーティーか………まあその時間には俺も抜け出しているはずなので、そのままジュリと一緒に行くことになるか。
「ジュリと一緒に行くことになるかな。あのパーティーはチケット以外に男女一組のパーティーだったはずだし。父さんと母さんで一組。俺とジュリで一組。海と奈美で一組だったはずだ」
ペットは参加自由だったはずなので、ペットとしてゴンと一緒にエアロードとシャドウバイヤを入れる予定とは言わない。
「フム。美味しい食べ物があると聞く………楽しみだ」
涎を流しながら想像に胸を膨らませているのだろうが、豪華そうな料理って俺にとっては美味しそうに見えないのだ。
というより苦手の分類。
「イリーナもヴァースって人と参加するからヒーリングベルと一緒に居られるな」
「何故私があいつと一緒にいなくてはいけないんだ?」
「そうだな。むしろヒーリングベルがお前達を統率するリーダーだよな」
しっかりしていそうなイメージ。
その変わりにエアロードとシャドウバイヤは堕落した生活をしているイメージ。
しっかり者の委員長と、ニートの中高年という比較図。
「失敬な。私とてしっかりするときはしっかりするのだ」
奇妙な事で胸を張るのだが、こいつに限っては半分は嘘のような気がするので真に受け無いようにする。
本棚に置いてある教科書類を眺め、そのままドアの方を見るとなんとなくドアが開きそうな気がしてしまった。
案の定であるが室内に奈美が入ってくる。
入ってきた奈美は父さんが購入した大きな人形を引きずりながら現れ、侵入した奈美とベットで適当にくつろいでいる俺とバッティングする。
「失礼しまーす」
「自分の部屋に帰りなさい。シャドウバイヤはどうした?お前の部屋にいるはずだろ?」
「ここにいる」
奈美の背中にくっついて姿を現してシャドウバイヤはそのまま飛んでエアロードのハンモックに入っていく。
「止めろ!私のハンモックに入ってくるんじゃない!」
抵抗するがエアロードだが強引でも入ってくるシャドウバイヤに敗北していく。
奈美は人形を抱きしめながら「入っていい?」と尋ねてくるが、俺としては断っても駄目なような気がするので諦めて中に入れてやる事にする。
室内を暗くし、エアロードとシャドウバイヤの呻き声だけが聞えてくる状況。俺の背中越しに奈美の息づかいが聞こえてくる。
すっかり眠っているらしく、寝つきの良さは昔から良いのは知っている。
「………兄ちゃん。また……一緒に……」
俺は振り返る事もせず、ただ小声で呟く。
「また一緒にな……」
感想は後編で!では!二時間後に!