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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
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竜の欠片 3

竜の欠片三話目です。ヘーラ戦前半戦になります!

「空!」

「ジュリ!?どうしてここに?」


 空は驚きと共に声のする方向へと視線と体の方向を向ける。沈みゆく陸橋の上で手すりに体を預け、落ちないようにと抵抗している。

 空は気が気でないような状態が続くが、空の思考を封じるようにジュリが声を荒げた。その姿は空が今まで見たことがない姿で、空は黙って意識を向ける事しかできない。


「空のその姿は遺伝する魔導の一つで、通称『竜の欠片』と呼ばれていて、『竜の焔』と違い武装以外にも防具の生成、呪術や魔導などのいわゆる異能と呼ばれるような力を無効にすること、ただ、不完全とも呼ばれているの。でも、今の力なら呪術に侵された力の原点に行くことが出来るかも。それなら………テラを救うことが出来るかもしれない」

「テラを………救う?」


 空は混乱に陥ってしまい咄嗟に声が出てこない。しかし、それ以上にジュリが大きな声で空の意識を取り戻させる。


「救わないと!ただ殺して終わるだけじゃダメ!救える人なら救わないと、たとえそれが自業自得だとしても。空にはそれが出来る。それにテラを救えばこの事態も収束できる。飲み込まれた全てを取り戻せる。人も、動物も、建物のすべて!!」


 それはテラの方を向く。

 化け物になったテラを、体中から血を垂れ流し、血があらゆる全てを飲み込む。そんなテラを空は救うと決めた。

 しかし………空はある事に気が付いた。


「どうやって………救えばいいんだ?」

「………テラに触れて」


 言われた通りテラに触れる。どこに振れればいいのかふと悩んでしまったが、最終的に鳩尾付近を選んで触れてみる。辛うじて地面から出て居る鳩尾。


「意識を触れている手の方へと集中させて、腕を相手の中へと差し込むようなイメージで」


 言われた通り腕を差し込むように力を籠めると、空の右腕を中心に周囲へと淡い光が広がっていく。空自身が狼狽えてしまう。しかし、それをジュリの一声がまた現実へと引き戻す。


「空!今から空は呪術の世界へと行くことになるから!」

「呪術の世界!?どういう事!?」

「呪術の原因になっている世界というか………記憶の世界というか。多分八百年前の貴族内紛の記憶だと思うけど………とりあえず頑張って!?」

「アバウト!?」


 そんな間抜けなやり取りをしていると空の腕を中心に光は強くなっていき、空の意識を吸い取っていく。



 白黒の世界。見慣れたような光景に見えるが、よく見るとどこか建物が古臭く、周囲に鎮座居している乗り物も馬車ぐらいに見える。

 どうやら、これが呪術の中心の世界なのだと大雑把に理解したふりをして、思考を投げ捨てとりあえず歩き出すことにした。

 と言っても古い帝都の街並み何て今とそこまで違うところがなく、迷うまでもなくメインストリートまで歩き出す。


 全く人らしい人に会う事が無いのはここが呪術の世界だからだと思っていた。


 そんな現実逃避気味の思考をしながら、南区のメインストリート方面だと思う方へと歩き出す。

 大きな影があったような気がした。


「ここまで来たとは。また逢ったな袴着空」


 聖竜がそこにいた。色彩の失ったような世界で、普通に存在していた。巨躯を前足で起こしていて、尻尾は何度も地面を打って、何度も瞬きをしている。


「なんで………いるんですか?」

「気にしないことだ………と言いたいところだが、あれを退治出来たらある程度は話そう」


 そういう聖竜の視線の先は同じように彩られた騎士が立ち尽くしていた。


「騎士って当時の人間は普段着で騎士姿なのか?」

「今のお前も騎士姿だが?」

「そうでした………」

「それに当時はまだ騎士団などが存在した時代だからな。彼女は貴族派のリーダーだった女性だ」

「あんたは………知っているのか」

「ああ。彼女が君の前任者にあたる」

「前任……者?それって………」


 聖竜は言いにくそうにしている。しかし、空としては聞かないわけにはいかない。聖竜が黙っている事二分ほど、まるであきらめたような表情をつくる。


「君に託したのは『竜の焔』ではない。君に託したのは『竜の欠片』だ。そして、彼女『ヘーラ・ノーム』はその前任者だ。最も子孫に恵まれず、この戦いでガーランド一族に敗れた際に力は我々聖竜に帰って来たが。『竜の欠片』は受け継ぐのは自分の子でなければならない。テラ・ノームは彼女の親戚の子だ。彼女の死後一族は彼の一族に受け継がれた。しかし、力は別だからな」


 空はそんな話を聞きながら黙ってヘーラと呼ばれた女性の方を見つめる。俯いて、全身は青と白の騎士鎧に大型ランスとシールドを装着している。


「それ以上近づくと戦う事になるぞ」

「あれと戦わないといけないんだろ?」

「そうだな。あれが呪術の中心にいる。あれはノーム家の記憶と結びついている。ノーム家最強の騎士。そこに呪術が憑りつくことで再現された。当時ほどの戦闘能力はないだろうが、十分脅威だ」


 空は緑星剣を更に強く握りしめ、一歩前に踏み出す。


「約束は守ってくれよ。俺があいつを倒したら………真実を話すと」

「それはできない。しかし、一部を語ることはしてやる。全ては話せんがな」


 空はさらに一歩前に出ると、ヘーラは顔を上げる。東部の鎧が色彩を失った世界でも光を反射し、顔に装着したマスクから覗かせる、そのマスクだけが空の鎧と似ているようにも見える。最も、ヘーラのマスクが青色なのに対し、空のマスクはエメラルドグリーンだが。

 ヘーラの右腕がかすかに後ろに下がり、ランスの角度が空を捉える。肝心の空も剣を低く構え、両足に力を籠める。回避するにしても、こちらから打って出るにして咄嗟の行動にいつでも体が反応できるようにと。


 長い長い三十秒が過ぎ去り、先に動いたのはヘーラの突進攻撃で、その零コンマ五秒で空も回避行動をとる。


 ヘーラのランス攻撃が空の左胸を捉えかけると、身体を低くしゃがみ込み、緑星剣でランスの攻撃で打ち上げる。しかし、ランスの重さは予想以上で微かに軌道を上にそらすことが出来るぐらいで、空はそのままヘーラの至近距離まで行かづくことには成功する。


 右下から左上に掛けて斜め切りに移行するが、ヘーラはシールドで攻撃を受け止め、攻撃を弾く。体の行動が完全に止まってしまい、ランスを再び構えなおす。

 左胸を標的に再び突き出すが、空は体中の力をあえて抜き、攻撃を再び回避する。


 頭部のマスクが脱げそうになるような攻撃力が頭部の端っこにあたり、空は地面に尻餅をつく。

 そのまま左腕で地面の支えにしながら右足で蹴り上げる。

 体を起こそうと力を籠めると同時に後ろから声が聞えてきた。


「ほう。咄嗟とはいえあの切り返しは感心したな。私は戦えないからよろしく」

「………!?戦えないの?」

「ああ。この私は思念のようなものだ。ここにいるわけでは無い。だから………ファイト!所で、攻撃しなくてよかったのか?」


 振り返ると、ヘーラが体を完全に起こしてシールドで防御態勢をとっている。


「ああ!?話しかけるから!!」


 攻撃のチャンスを失い、空自身は意識を再び切り替える。


ある意味ガイノスエンパイア編前半を飾る戦いです!試行錯誤を繰り返して書いています。

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