辿り着いた未来 14
後悔していないんです!戦闘シーンをガッツリ書いても後悔していないんです!そうなんです!では……戦闘シーンです!
剣と剣が空でぶつかり合い、火花を散らして夕暮れの空を明るく照らそうとし、俺と黒衣の騎士が鉄塔のような場所の足場に着地する。
黒衣の騎士が俺の方へと突っ込んできて、俺はそれを転がりながら斬撃を回避、着地したばかりの黒衣の騎士目掛けて剣を振り下ろす。
黒衣の騎士は影の中に溶け込んでしまい、俺の視界から完全に消える。
「影の中に入れるなんて……堆虎は使わなかったのに」
「いや、使えなかったのだろう。あの戦いは私も見ていたが、肉体を持つ彼女では使えなかった能力だったのだろう」
そう言われればそういう仕組みなのだろう。
俺は襲われるという感覚を全身に研ぎ澄まし、後ろから前へと身体を突き抜ける風や大きな影を感じ取り剣で足場を崩すことで危機を回避する。
俺達はお互いに地面目掛けて高い場所から落ちていくが、俺はエアロードがいる為空中で静止することが出来た。
地面へと落ちていく黒衣の騎士を複雑な表情で見ていると、黒衣の騎士の背中のマントが大きなドラゴンの翼に変貌し俺めがけて突っ込んでくる。
俺は攻撃を剣を受け止めるがエアロードの力では俺の体を支えながらツッコんでくる黒衣の騎士の威力を軽減できない。
俺達の体は同時に後ろに大きく吹っ飛ぶが、俺は剣を上手く活用し鉄製の足場へと着地する。
「機動力が高く、攻撃力も抜群。どう倒せばいいのかもわからないときた」
「粉々にすればよかろう」
「簡単そうに言うなよ。それが出来たら苦労しない」
そもそも隙が無いのだ。下手に突っ込んでいけばカウンターをやられるのは間違いない。
そもそも俺と同じ戦闘能力ならある程度予測しやすいのだが、戦えば戦うほど色々な人の戦い方が混じっている。
デリアの豪快さ、海の繊細さ、アベルやガーランドの剣術の腕前、それ以外にも多くの人の全てがこの黒衣の騎士に込められている。
その上『竜の欠片』の力を模倣し、その一部を呪術で活用しているのだろう。
その上厄介なのは、物質変化能力まであるようで、マントを翼に帰るなんてことは俺にもできない。
「ただの模倣かとも思ったが、あくまでも竜の欠片を模範としつつ完全に別の呪術に変貌してしまったようだな。剣術や戦い方もお前の知り合いを取り込んでいるな」
「ああ、色々な人と戦っているような感じがする」
でも勝てない相手ではない。
戦い方が分かる分慣れれば抵抗できる。
問題はどこで致命的な反撃を繰り出せるか、俺は俺と一定の距離を保ちつつ明らかな攻撃タイミングをうかがっているのが見てわかる。
突っ込んで行くと負けるこの状態。遠距離攻撃を繰り出すしかない。
俺は緑星剣に力を籠め、淡い光に包まれる剣を思いっ切り横なぎに振る。
すると斬撃が形となり真直ぐに黒衣の騎士の方へと突っ込んでいくが、黒衣の騎士は全く同じ力でこの力を相殺する。
「まあ、お前と同じ力を使えると考えた方が良いわけだが………こうなるとあの黒衣の騎士では使えない力を使うべきだな」
ある。しかし、この力を使えば確かに黒衣の騎士を倒すことは可能だが、同時に隙の大きい技でもある。
『竜の顎』
『竜の欠片』だけが使う事が出来るこの技、あらゆる異能を破壊し、あらゆる異能を吸収する力を持つこの技、かつて『ラウンズ』もこの力が奪ったものである。
そこまで考えた所で俺は忘れかけていた『ラウンズ』を相手が使えるか検討することにした。
「ラウンズ!」
取り敢えず五体を召喚しそのまま突っ込ませる。
黒衣の騎士は剣で攻撃を捌きながら狭い足場の方へと逃げていく。
ラウンズを召喚しない所を見るとやはり『ラウンズ』だけは別、このまま数で押し切ろうかと考えた所で、黒衣の騎士の顔が禍々しいドラゴンの口に変貌し、口から黒い炎は吐き出した。
俺は急いでその場から逃げるため足場を乗り越え、そのまま下まで飛び降りる。
ラウンズも勢いよく吹っ飛んでいき、バラバラになってしまう。
「なんなんだ!?もう……騎士なのかどうかさえ疑問だぞ」
「あくまでも呪術で構築された存在だ。能力次第で存在を変化させられると先ほどマントの一件で確認したろうに。それより落ち着いて射程距離を伺え。炎というだけあって射程が短いぞ。それに威力もさほど高くない」
「ああ、でもその代り広さは大したものだぞ。横に回避したら逃げられる自信がない」
実際ラウンズは横に逃げようとして失敗しているのだ。
「接近しすぎれば黒い炎で攻撃され、遠距離で近づけばカウンターを狙ってくる。本当に面倒だな」
「刺殺の束を使え」
それもあったな。多分あいつが使えるだろうが、ここは刺殺の束が効果的に使える場所でもある。
工場の鉄塔や建物で密集している場所、細い路地や建物が複雑に組みあがっている場所では至る所から刺殺の束を使うことが出来る。
俺は剣を下に向け意識を集中し、目を大きく開いて地面に突き刺すと同時に脳の思考回路が焼き切れそうなそうなほどの速度で思考し、剣を召喚する場所を瞬時に考え付く。
「咲き乱れろ!刺殺の束!」
刃は周囲のあらゆる場所から黒衣の騎士めざして現れる。
黒衣の騎士は何とか回避しようと空を飛び上に逃げようとするが、それは俺も呼んでいた行動である。
退路を塞ぐためにあえて先に刃を召喚すると、黒衣の騎士はダメージ覚悟で突っこんでいく。
ボロボロになり、刺殺の束が届かない場所までやってくると、黒衣の騎士は剣を自分の体に突き刺し溶け込んでいく。
俺達は何をしているのかと警戒しながら、一旦刺殺の束を解除し剣を握りしめて目の前の敵に視線を向ける。
両手を夕焼けに向け、黒い体を真っ赤な夕日が染め上げる。
しかし、黒衣の騎士の体中から漏れ出る禍々しいオーラとでも呼べばいい気配、それはまっすぐ上へと集まっていく。
その禍々しい気配は一つの球体へと変貌していく。
「なんなんだ?見たことも無いぞ」
「私も聞いたことも見たことも無い。少なくとも現在存在している呪術では確認されておらん」
禍々しい球体は太陽を隠そうとしており、その大きさはいい加減周囲からでも確認できるほど大きく成長していく。
俺はどんどん大きくなる球体に恐ろしさしか感じない。
すると黒い球体は黒衣の騎士を飲み込んでいき、大きな黒い光を周囲に放つと、まがまがしい鞭のような攻撃が工場へと攻撃していく。
俺は崩れ落ちてくる鉄塔や工場の外壁などを回避しながら、どんどん肥大化していく黒い球体に視線を送る。
「あれ突き刺して破壊できると思うか?」
「分からん。何せ未知の呪術だ。しかし、突き刺すのではなく『竜の顎』で攻撃するのではだめなのか?」
「アレは攻撃中に隙だらけになるから」
「それこそラウンズで対抗すればよかろう」
「それでも足りるかどうか……」
「ならラウンズに『刺殺の束』を使わせればよかろう。それなら手数が足りるだろう」
それしかないか。
「ラウンズ!」
そして俺はラウンズを周囲に散開させ、ラウンズに俺の攻撃と同時に刺殺の束による防御行動を指示。
俺は剣先に意識を集中させ、あの時と全く同じ感覚で剣を後ろに一旦引く。
正直勝てるとは全く思わない。
怖くないと言えば嘘になる。
剣を前に突き出すのが恐ろしくなるが、剣を握る俺の両手に触る感触があるが、ここは人のいない場所である。
しかし、その温かさを感じて一気に恐怖が吹き飛んでいく。
『さあ………行こう」
「ああ、行こう!……竜の顎!!」
黒い球体目掛けて突っ込んでいく竜の頭部の姿をした攻撃は周囲から飛んでくる刺殺の束による防御行動を頼りにしながら一気に突っ込んでいき、黒い球体に噛み付くとそのまま粉々に砕いていく。
中から黒衣の騎士が姿を現し、回避する前にドラゴンはそのまま黒衣の騎士に噛み付こうと突っ込んでいく。
胴体に食いついて、粉々に砕こうと俺が力を籠める。
黒衣の騎士の体が粉々に砕け散り、半壊した工場地区中に光の雨が降り注ぐと俺は周囲から受ける称賛を感じた。
どうやらいつの間にか観客がいたようで、俺は途端に安心してその場に座りこんでしまう。
どうでしたか?三十九人をジュリの前に語りたいなという事で思いついた話です。あと数話で終わりですので最後までお付き合いください!では!次回!