辿り着いた未来 6
万理のエピソードの決着話です。
華園までの道のりだが、北区にはトラムが存在しないので、自然とバス移動が主になっていくのだが、パンパンのバスの中に入りたくない俺としてはここで駄々の1つでもこねたいのだが。
俺の隣で既に父さんが駄々をこねている姿を見ると俺は自然と精神的に落ち着いていく。
しかし、ここから華園まではどう考えてもバス移動しかないので、このパンパンに詰まっているバスに乗り込まなくてはならない。
父さんは「歩いて移動したい」と自分で建てたスケジュールを守るつもりがないようで、その姿を見た母さんは本気で父さんに叱りつける。
反省したところで俺達はスケジュールが押し気味という事もあり、素早くバスに乗り込む。
勿論、乗り込んで直ぐに後悔したのは、押し込まれる最中に同じバス移動をしていたガーランド一家と鉢合わせ、俺の目の前にゴンに怯えるガーランドがいたことである。
忘れていたが、家に置いておくと面倒なので連れてきているのだが、ガーランドはどうもゴンみたいな犬タイプが苦手なようで、ゴンに対して恐怖の感情を全身で表している。
表情から、頭の先から流れ出る汗が恐怖を現している。
そんな表情をゴンは興味津々な感じで見つめており、今直ぐでも突っ込んで行きそうな勢いを俺は何とか抑えていた。
「止めろ………こっちに来るんじゃない………」
怖がっているな。しかし、どんなに嫌がっても華園まであと三十分は掛かるので、三十分は掛かるので少なくともこの状況は後三十分はこのままである。
三十分の間先ほどの嫌そうな表情とは打って変わり、ガーランドの恐怖の表情を見ながらニヤニヤと笑っている父さん。
性格が本当に悪い。ちなみに母さんズは前の方ですっかり井戸端会議に集中しきっており、俺としてはこれ以上どうしようもないのでほっとくことにした。
華園まで降りてそのまま華園の中に入っていくまでガーランドだけが俺達ウルベクト家とガーランド家集団から外れた所を歩いており、父さんがそんなガーランドを強制にでも輪に居れようとする。
華園の前は看板や受付すら存在しないのだが、今日だけは仮設の受付がきちんと用意されており、俺達は家族ごとに入場する。
色とりどりの花々と整備された道を道なりに進んで行き、まず一つ目の植物園前に立っどり着くのだが、取り敢えずその前、俺の視界の先の植物園前のベンチに座り、サクトさんと一緒にアイスを食べている出店でマスコットの仕事をしているはずのエアロードとシャドウバイヤがいた。
取り敢えず万理やメイちゃんと一緒に行動しているが、メイちゃんのお姉ちゃんがいない理由とまるでその代わりにと居る二人のマスコットの存在理由を教えてください。
父さんとガーランドが一緒になってサクトと話し始め、それを母さん経由で俺の方に来る情報をまとめるとこういう事らしい。
今朝南区の軍本部に行ってから車で再び華園での待ち合わせをする予定だったらしい、その過程で『たこ焼き』の出店で朝食をとる事になったらしいが、その際エアロードとシャドウバイヤがひたすら「暇」と五月蠅かったらしい。
メイちゃんが一緒に歩いて回りたいといい始めたので連れてきたらしい。
ちなみにメイのお姉ちゃんは現在女学院で出店の店番をしているとのこと。
一通り話し終え、結局三つの家で一緒にまわる事になると幼馴染の四人が連日一緒に行動する事になるという奇跡を前に、奈美とメイちゃんのテンションは最高潮を迎えている。
その上エアロードとシャドウバイヤは俺に出店に置き去りにされたと不満げにしている。
俺はその全ては聞き流しながら植物園の中に入っていく。
入り組んだ道を順番通りに進んで行き、ある程度開けた場所に出ると蝶々が飛び回るフロアに辿り着いた。
周囲に分かれて広がる中、奈美と海が二人っきりで端っこの方へと歩き出していく。
ゴンが奈美の方へと行きたがる中、俺はどうしてもあの二人の事が気になってしまう。
「ソラ君はあの二人の距離感に気が付いてる?」
「距離感?万理は何か知っているのか?」
「う~ん………ソラ君よりは知っている感じかな。ソラ君はどのくらい知っているのが全く知らないけど」
俺はジッとそっちの方を見つめ、距離感を見てみるが全く理解できない。
しいて言うなら楽しそうに話しているなってイメージぐらいなんだが。
「そう言う所全く変わらないんだね。安心した」
「なんか何直に馬鹿にしている?」
馬鹿にされているように見えるのだが、俺の後ろではエアロードとシャドウバイヤが蝶々を捕まえようと奮闘している。
なんか和む光景なのではあるが、しかし俺としては馬鹿にされたままでは引き下がれない。
「付き合っているとか?」
「う~ん。付き合っているわけじゃないんだよね」
付き合っているわけじゃないという事は、その手前という事か?
お兄ちゃんはまだ認めませんよ。
「お兄ちゃんはまだ認めませんよ」
「そう言う所は変わらないんだね。でも、いつまでもソラ君が依存していたら奈美ちゃん自立できないんじゃない?」
「?その時は無理矢理でも自立してもらいますが?」
「結婚は?」
「お兄ちゃんは認めません。絶対に。海にも、奈美にも早すぎます」
「二人がどうするのかは二人に任せる方が良いと思うけど?ソラ君だってジュリちゃんとの関係を両親から文句言われた嫌でしょ?」
「それでも付き合うけど?」
万理は「あっそう………」と言いながら遠い目を俺にむけてくる。
何だろうか?俺の話におかしな点が存在するのかな?
「万里はいないのか?誰か付き合いたい人物」
俺がふいに尋ねると万理は俺に背を向けてしまう。
「気が付かない?」
「言わないと分からない」
これは嘘。
本当は何年も前から気が付いているのは事実、どんな告白を告げても俺の答えは何年も前から変わらない。
「………嘘つき」
万理だってずっと気が付いているのは事実だ。
万理からの想いは小学校の頃からずっと知っていたし、それを俺は長年見ないふりをしてきた。
だって、俺にとっては万理は兄妹のような関係であり、それ以上の関係になれる自信が俺には無い。
「……………ソラ君は私が「好きだ」って言ったら真面目に交際を考えてくれる?今の人の関係を忘れて私と付き合ってくれる?」
万理から絞り出される想い、それは長年積み重ねた想いが俺の心を襲い掛かる。
堆虎を好きだってはっきり理解できたのは、彼女と別れた後の頃だったし、ジュリの事を好きになったとはっきり理解できた時期と同じだ。
しかし、俺はきっと何年経っても彼女を好きになれる自信はまるでない。
「……ごめんね。私。意地悪だね。忘れて」
その場から歩き出そうとする万理の右手を握りしめてこっちの方を強引に向かせる。
万理の両目は真っ赤に染まり、一筋の涙が流れているのが見て取れる。
「俺はお前との間の感情に兄妹以上にはなれない。これまでも………これからも」
俺にとって初めての恋であり、最後の恋だと確信できる相手は『堆虎』と『ジュリ』以外いないのだ。
この気持ちだけは誰にも否定できないし、否定したくもない。
「俺は万理からの想いにずっと気が付いていた。でも、告白されないことを良い事に俺はずっと見ないふりを続けてきた」
そう逃げた。
「でも、多分逃げたらいけなかったんだろうな。俺の優柔不断が海に悪影響になったのだろうし、それが俺達の関係の破綻を招いたんだと思う。だから、お前からはっきり告白をされた今………俺は断る事にした」
「………そっか」
万理は決してこっちの方を見ないようにし、俺は今万理が大粒の涙を流しているだろう姿を想像すると胸が締め付けられる。
「…………………………ありがと」
立ち去っていくその後ろ姿は俺の心にダメージを与えてくれる。
どうでしたか?ソラに恋する万理のエピソードの結末として、ソラに振られるという結末を描いたのは、ジュリや堆虎への想いを重要に考えるソラの想いを描いたエピソードになりました。そろそろ後日談エピソードもまとめに入る時期です。次回は海と奈美の決着話にするつもりで、その後にジュリと堆虎の決着話。その後に今回のまとめに入って『呪詛の鐘の章』を終わらせるつもりです。もう少しお付き合いください!では!また次回!