辿り着いた未来 3
奈美と恵美がついにガイノス帝国に到着します!
列車に乗って十分も経たずに袴着奈美が見る景色は険しい山岳地帯から草原地帯へと変貌していく。
ひたすら広がる草原の向こう側に高そうな壁が見えてくると、列車内のアナウンスで帝都まであと三十分ほどであるのが分かった。
「綺麗!お兄ちゃんこんな所で三年間も過ごしたんだね………早く会いたいなぁ」
「それは良いけど奈美ちゃん。荷物はまとめているの?さっきからテーブルの上に荷物を散乱させているけど」
朝比の忠告に「うっ」と胸を押さえながら目の前の惨状に目を逸らす。
「奈美。早く片づけなさい。後で、後でなんて言って全然片づけないんだから」
母親からの言葉に窓の外の景色に見とれる振りをして全然片づけようとしない奈美。
二人は大きなため息を吐き出し、さらなるアナウンス列車内に響き渡り、二人からくる強烈な視線にさすがの奈美も片づけ始める。
列車が少しづつではあるが地下へと入った頃、奈美はようやくの想いで片づけ始める。
三十分が経過した頃ガイノス帝国首都南区中央駅の地下ホームへと停車する列車、奈美達が大きな荷物をホームに降ろす。
奈美が「ふう」と息を吐き出し、母親である恵美は車輪の付いた旅行鞄を引きずりながらホームを見回している。
朝比は警察手帳を確認し、二人に別れを告げてそのまま何人かで上へと歩いていく。
奈美と恵美はそのまま歩いて上へのエスカレータに乗り、複雑な駅のホームを歩いていると周囲にいる人々も異世界と言う単語に希望を持ち始める。
すると、駅のホームから外への道に大きな横断幕で『ようこそガイノス帝国へ!』と書かれており、多くの人々はこの先に待ち構えている光景に様々な思いを抱えている。
ある人は新しい生活を。
ある人は観光の為に。
ある人は技術を学ぶためにこの地を訪れようとしており、奈美達はここでの新しい生活を想像したこの一か月間。
日本でのうだるような夏の日とは違い、ガイノス帝国の夏は涼しさが残っている。
奈美は目の前に広がる光りの束を前に目を細め、腕で視界を塞ぎながら前へと確かに踏み出していった。
ガイノス帝国南区中央駅前。
白い外壁と青い屋根が特徴的な旧市街地、高いビル群と都市高速が特徴的な複雑な街づくりの新市街地。
それが全くの同時に見ることが出来るこの駅前はある意味珍しい光景であるだろう。
「この大きな壁ってなんだろ」
「わからないけど、この壁が街並みを分けているんでしょうね」
多くの人は旧市街地の綺麗な街並みや高層ビル群の見慣れた街並みを交互に見ている人が多く、「変わった街並み」というのが周囲から聞こえてくる言葉だった。
「お兄ちゃん迎えに来ているはずだったよね?」
迎えに来ているというソラがこの場に来ていない、二人で探しているが降りる場所を間違えたのかと奈美が口にする。
「降りる場所って、ここ以外ないわよ」
「だよね。だったらなんでいないんだろ?」
(用事が出来たのかな?今日一日一緒に行動できると思っていたのに)
奈美が俯いているとエリナが写真を見比べながら二人に近づいていく。
「えっと………袴着奈美さんと恵美さんでいいかしら?」
恵美が「そうですけど……?」と言いながら少しだけ怪しむようなそぶりを見せる。
「私海のお姉さんのエリナと申します。実はソラ君から二人の道案内を頼まれまして」
右手を差し出すエリナ。
恵美から奈美の順に握手をしていき、エリナがポケットに写真を入れながら歩き出すので二人も遅れずとついて行く。
「ごめんなさい。本当はここに来る予定だったんですが。七夏祭の出店をしていて午前中は身動きが取れないんですよ」
二人は聞き覚えの無い単語に首を傾げる。
「七月に帝都でのみ行われる大規模な祭りで、七月一日から一週間かけて行われるんだけど。この祭りはいろんなところが出店を出店したり、中には演劇なんかでもうけを出そうとしたりするの。各エリアが枠組みされていて、売り上げで勝負する人が多いのよ」
「へえ。お兄ちゃん達出店を出しているんですか?何やっているんだろ」
「それは見てからのお楽しみだけどね。午前中は悪いてけど私と一緒に居てね。取り敢えずこれから会いに行くけど………お二人共お荷物はそのままで大丈夫ですか?」
そう言われて二人は自分達が持つ荷物をじっと見つめる。
(そう言われたらこのまま移動するには邪魔かな……)
「近くにコインロッカーがあればいいんですが………」
「コインロッカーと言うのは分かりませんが、荷物を預けられる場所があるのでそこに行きましょうか」
駅前のオレンジ色の看板のお店に入っていくと、狭い店内に店員と客の間に線引きがきちんとされている。
店員の前に二人は荷物を預けてもらい、エリナが代金を代わりに出してもらったのち、店を出ていく。
駅前から駅前広場までは大きな横断歩道を渡り、大きなアーチを潜れば出店で溢れかえっている駅前広場に辿り着く。
入ってすぐ右に曲がって歩いて直ぐの所にソラ達の出店が店構えを見せている。
店の前は多くの人で溢れかえっており、長蛇の列を十人ほどの人間達が捌き切ている。
ソラはその中で大きな声を出しながら指示を出しており、素早く捌きながらも耐える事の無い長蛇の列に二人は入る余地を感じなかった。
「ごめんね。今日一日が勝負で、今日ネームを売り出さないと今後の売り上げに関わっちゃうの。でも、この調子なら大丈夫かな」
「ここって一番人が多いエリアなんですか?」
「多いエリアの1つでしょうね。南区の激戦区の1つであることは街が無いわ。私達の目的はこのエリアのナンバーワンになる事なのよ」
「ソラも頑張っているから邪魔しないでいましょうか」
二人はその場から一旦立ち去り、座る事の出来るスペースまで移動し簡単なメニューで朝ご飯を取る事にした。
テーブルの上にはケバブに似た何かなどが並んでおり、飲み物として飲みやすいアイスティーが置かれる。
「どう?口に合えば良いんだけど」
「大丈夫です。そうだ。海君こっちではどうなんですか?」
奈美がどうしても気になっていたことでもあり、今日何としても確かめておきたい事でもあった。
エリナが顎下に指を置き、言葉を選ぶような仕草を見せる。
「真面目な感じかしらね。私が朝方は知っていると必ず付いてきてくれるのよ。道場ではすっかり馴染んだらしいし。学校こそまだ授業には参加していないけど、あの様子なら友達作るのは問題なさそうね」
「そっか。良かった」
「………奈美ちゃんは優しいのね。ありがとね。あの子を心配してくれて」
奈美は照れくさそうにしながら頬を赤く染め、恵美は微笑みながらアイスティーを一口だけ飲み込む。
「奈美ちゃん。おばさん」
万理の声が聞えてくるので、三人はそちらの方に振り返るとメイちゃんが素敵な白いワンピースから覗かせる細い手を握りしめる万理。
涼しそうな水色の短パンとパーカー付きの上着とTシャツを着ている万理。
今にも泣きだしそうな奈美は椅子を蹴り、万理に抱き着いて大粒の涙を長し始める。
「ごめんね。心配させて」
「ううん。いいの。こうして会えたから」
メイちゃんだけは不思議そうな表情で二人を眺めていた。
五人で自己紹介をしながらテーブルを囲み、一旦落ち着きながら話題はこの国の歴史や成り立ちへと移行していき。
どうやってこの国が出来たのか、この首都がどういう歴史をたどって今に至るのか。
エリナの話を聞きながら、メイちゃんは可愛い猫耳をピコピコ動かしながらジュースを飲んでいると後ろの方からソラと海の声が近づいて来た。
「じゃあ私はここで交代するから後は皆で仲良く」
そう言ってエリナは手を振ってその場から移動して行き、その交代で二人が席に姿を現す姿は仲の良い兄弟のように見えた。
感想は後編で!では!二時間後!




