辿り着いた未来 2
後編です!まるで出店勝負がラストバトルみたいに語られていますね。
エリナさん達がジュリ達が現れたその後に他の兄弟共々姿を現すと俺達の出店に協力したいといってくれた。
「実はね。父さんったら手伝えばいい物を買うって言っているんだけどね。調べてみたら父さん武器とか筋力アップサプリメントとかいらないものばかり買うから問い詰めたら。「父さんに勝てたら好きなモノ買ってやる!」て豪語するの。だから母さんがいっそのこと皆で父さんをぎゃふんと言わせようって」
という事らしい。
海とエリナさんは「別に欲しい物は無い」らしく、他の姉弟たちは欲しいものがたくさんあるので敵として参加することを決めた。
ここでエリナさんがガーランドの策を俺達に教えてくれたことで俺達の状況は予想以上に緊迫してしまった。
「父さん連盟の代表者なのよ。どうも複数の出店の代表として登録しているらしく、北区でいくつかの出店を候補として所有していて、一個でも勝てる出店で勝負しようとしているらしいの」
「き、汚い奴め!正々堂々勝負する気はないのか!?」
父さん怒りで自らのキャラクターを見失いつつある状況、俺としてはガーランドさんが奇妙な演目で勝負をしようとしていた理由がよく分かる。
あれはこちらを油断させるのが目的で、本命は連盟の代表者として複数の出店で勝負なのだろう。
「サクトさんが教えてくれなかったら知らないまま勝負だったな」
「でも、連盟の受付は終了だから私達はこの手は使えないよ」
ジュリの言う通りで既に連盟の受付は前日に終了しており、こちらはこの出店で勝負をするしかない。
マリアが用意してくれた各エリアの出店の内容と代表者の名前リスト、これを確認する限りは本命をいくつか除き、十個は用意しているらしい。
「流石に売り上げトップの本命は無理だったようだけど、それ以外はそこそこ抑えられているな。こうなると売値が低い南区勝負のこちらは少し不利だぞ。しかも、俺達は激戦区のエリア1。売れる分南区全体の売り上げで言えば上位に行けばいい方だろうな」
俺の言い分に父さんが何度も頷く。
「しいて言うならガーランドが北区とカテゴリーを決めていることが救いだな。他の地区まで責められていたら危うかった」
「アベルさん。でも、父さんは本命を覗けば売り上げでは上位を取れる出店を複数用意しているんですよ。このまま行けば勝ち目は薄いんじゃないですか?」
「でも、これ以上対策何て打ちようがないだろうし」
全員で俯き考え込むと、エリア1でお隣の一番大きな場所を確保している『エンハイム商会』の出店内で問題が起きたようでガヤガヤとした声が聞えてきた。
俺はそっちの方に向くとエリーの姿が見えた。
「あらソラじゃない。あんたこんな所に出店していたわけ?」
「ああ、そっちも今年は南区で出店?」
「まあね、うちは商業関係のお店だから南区と西区勝負なのよ。ただ………」
エリーが複雑な表情をしながら自らの出店一帯を眺めているが、どうやらトラブルを抱えてしまったらしい。
俺はエリーに「何があった?」と尋ねると本人は言いにくそうにしているのが印象的で、周囲も気になったのか俺の方へと近づいてくる。
「代表者が夜逃げしたの」
「「「……………はい?」」」
言っていることがよく分からない。
「私達『エンハイム商会』とレイハイムの『アーノルド商会』は各出店を代表者を別にして経営しているんだけど。このエリア1の代表者、実はアーノルド商会とも契約してようでね、それを問い詰めたんだけど………昨日の夜に逃げたらしくて。今日の夕方にエリア1の最終チェックでしょ?今から代表者を変える必要があるわけよ」
よく見ると門を挟んで『エンハイム商会』の隣に位置する二番目に大きなエリアを所有する『アーノルド商会』も同じような状況らしく、レイハイムが話し合いに来ていた。
すると、サクトさんと父さんが悪そうな表情をして俺の方を見てくる。
俺とエリーは背筋をゾッとさせながら一歩下がる。
「「二つの商会さんと話がしたいなぁ」」
どうやら無理矢理にでも話をするつもりらしい。
結局エリーとレイハイムを呼び出してうちの出店に呼ぶと、父さんとサクトさんは二人で両商会に話をし始め、時折俺の方を見ながら指を刺すのだが、背筋が凍る思いがするのは何故だろう?
サクトさんと父さんが一緒に帰ってくると自信満々で「我々の出店は合併することになった」と言い始めた。
全員で渾身の「はぁ?」と首を傾げる。
「連盟は禁止だろ?」
「連盟はな。でも、同盟は一定の理由があれば『七夏祭』の間でも認められている。今回の場合は両商会の代表が失踪という事になる。それ故に二つの商会の出店を我々と合併させる」
「要するに売り上げも基本は同一として計算するっていう事?そうか……それなら勝てる可能性が高い」
俺の言葉に全員が「なるほど」と呟きながら少しずつではあるが活気が付き始める。
しかし、俺は忘れない。
非常事態でなければ代表者の変更は認められない。
この場合両商会の代表者変更は受け付けられるだろうが、うちの出店の代表者の変更は受け付けられないはずだ。
「ねえ。この同盟代表者って代表者の名前を変更するんだよね?」
俺はオズオズと問いただすと、二人は口揃えて恐ろしい事実を告げてくる。
「「ソラ・ウルベクトが代表者になるけど?」」
素敵な事である。
その辺が全く変更されないという素敵な状況に涙が溢れ出てくる。
その日はガーランド姉弟はみんな俺の家に泊まる事になり、空き部屋が多く残っているうちは別にいいという事になり。明日の供えて………何故かジュリとレクター、レイハイムとエリーまで参加する事態に発展していた。
「しかし、この人数が泊まれるって相当大きな家だよね?」
「まあ五階建てで部屋の数も多く確保しているしね。まあ、空き部屋に関しては一年に一回しか掃除しないから急な大掃除になったけど」
先ほど大掃除も終わり、寝泊りする用のベットも洗濯し終え現在は夜ご飯を俺とジュリとエリナさんの三人で作っている最中だったりする。
「しかし、まさかあんな大事になるとは思わなかった。書類での変更にもそこそこ時間が掛かってしまったし」
「そういえばソラ君。明日妹さんと迎えに行くんでしょ?」
「それなんだけど。朝は俺の当番だからな………無理なんだよなぁ」
それをどうにかしなければいけないのだが、レクターと海とジュリは午前担当、レイハイムとエリーも別区画の出店に向かう為変わることは出来ない。
「だったら私が迎えに行こうか?海の幼馴染なんでしょ?だったら私の妹も同然よ」
「え?エリナ頼めますか?」
「ええいいわよ。午前中は私は暇だし、どうしようか悩んでいた所なのよ」
ならエリナさんに任せて俺達は午前中の担当をやり抜くしかない。
と言うのも明日は今後を占う重要な一日であり、ここで手を抜けば評判を落としてしまう。
「午前中は食材の消費量を計算しながら今後の計算をし、適度にメニューを変更していく必要があるな」
「そうだね。出来る事なら顧客のニーズも聞けたらいいんだけど。そっちは商会の人に任せるしかないね」
「そうね。私達は作りながら消費量なんかを計算し、発注数を計算しないとね。位置を一日分は確保しているし、他のお店にも『タコ』の予備を確保してもらっているから大丈夫でしょ」
「でも、すごいよな。商会の人。俺達のメニューを聞いて直ぐに『たこ焼き』に合いそうなメニューを作ってくれるんだから」
「そうだね。でも、これで後は明日を迎えるだけだね。商会の人が当日の朝まで店番してくれるし、私達はしっかり休まないとね」
なんて話をしていると俺達の後ろで複数の声が消えてきた。
「「「腹減った!」」」
猛獣な声が「メシ!」とうるさいので俺は「ラウンズ!」と叫んで騎士人形を呼び出し差し向けた。
静かになる食堂を背に三人で夜ご飯づくりに精を出した。
どうだったでしょうか?海とも無事和解し、次回はいよいよ四人が再開します。ガーランドとの売り上げ勝負と共に『呪詛の鐘の章』の行きつく先をどうか見届けてください。では次回!