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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
131/156

ワンフォーオール・オールフォーワン 6

事件の概要が語られる話で、伏線の回収回でもあります。

 二人と十三時まで食事をしたのち、二人にゴンを一旦預けそのまま帝城の仮名に入って聖竜の元まで行くのにそんなに時間はかからなかった。

 慣れ親しんだような道をエアロードとシャドウバイヤと共に進んで行き、大きな門を開いて奥に入っていくと聖竜の大きな体が横になっているのが一番先に見えた。

 皇帝陛下がいない所を見ると今回の会合が極秘に行われている事を意味しており、そんな中機竜のドローンが異彩を放っている。

 どうやらここに居る人間は俺と先に音竜事『ヒーリングベル』と一緒に来ていたイリーナだけのようだ。

「お久しぶりです」

「そういえば先にこっちに来ていたんだっけ?明日ライブなのにこんな所に居てもいいの?」

 彼女は晴れてこちらの事務所にスカウトされ、ボディーガードとして雇われた『ヴァース』と共にこちらに来ていた。

 さすがにヴァースはいないようだが、彼女は明日室内プールのオープン記念式典ライブに呼ばれているはずで、そもそもこんな所に来ているべき人間ではない。

「私が呼ばれたので彼女にも来てもらいました。遠縁ですが彼女も決して無関係ではありませんから」

 ヒーリングベルの優しい声が俺の下にもしっかり届き、俺の視線がイリーナの細い両腕によって捕まっているヒーリングベルへと移動する。

「これで全員ですね。では、聖竜。いい加減私達全員に説明をしなさい」

 機竜の珍しいぐらいの厳しめの声が俺達全員の背筋をピンと伸ばす。

 エアロードとシャドウバイヤですら恐怖で大人しくしている。

「それはよいが………」

 ゆっくりと立ち上がる聖竜は厳しい目を他の竜達へと向け、獰猛な声を上げる。

「お前達は竜としての誇りは無いのか?そんな情けない姿を!!」

 機竜はそもそも遠隔操作のドローンだし、ヒーリングベルを含めて他の竜は全員が体を小さなサイズまで落としていた。

 まあ、こんな部屋で大きなサイズになったらそれこそ部屋がパンクしそうだが。

「「「そんなものは無い!」」」

 しっかりとした断言の言葉、それはこれ以上の追及を刺せない不思議な言葉に聞こえた。

 聖竜も「グヌヌ」と唸りながらその場で多少の悔しさを滲ませる表情をしており、俺とイリーナそんな姿より早く話を進めて欲しいという表情で訴える。

「いいから話しなさい。これ以上時間を掛けるのなら少々強引な手段に出ますよ」

 機竜からの最後忠告を受け素直に話す気になった聖竜は二千年以上前から始まる今回の事件の始まりを語りだした。


 聖竜がおかしいと感じたのは木竜の身近にいる『何者か』の殆どが不幸な結末をたどっているからである。

 それが二千年以上前の話である。

 木竜の『不幸体質』に気が付いたのは皇帝一族と契約を結ぶようになった時である。

 皇帝一家の『因果律』を無意識の状態でコントロールする能力、それは聖竜からすれば己が一番求めていた能力だった。

 しかし、俺が聖竜に因果律などを通じて未来を見る能力を会得させるのだが、同時に聖竜は因果律を覗く力も得た。

 それが木竜の『不幸体質』に気が付く切っ掛けになる。

 どんな『問題』もその全ての結果が『不幸』へと辿り着くという体質。

 あらゆる『問題』を結果に辿り着く前に『回避』することが出来る皇帝一家の能力とはある意味似ているようで全く違う能力。

 同じ『因果律』にまつわる能力なのだが、その結果がまるで違う。

 そういう意味では『竜の欠片』とも全く違う能力なのだが、こちらはあらゆる異端に対する対抗能力で、『竜達の旅団』は更に別の能力である。

 竜にまつわる名前を持つ能力は大体が『異能』と一括りにされる力が多く、ヒーリングベルとイリーナが持っている共通の能力『ノイズ・ボイス』力の込められた歌や声を聞いた対象を操る能力。

 人間側が所有する力には偏った力も多く、そういう意味では木竜は少々変わった能力であったことは確かである。

 しかし、周囲を不幸にする力が多い木竜の力の本質が『不幸体質』であることに由来する。

 俺達一族が代々所有する『竜達の旅団』と呼ばれる能力、これは人の言葉を介さない存在とも会話をしたり、『異能』の力に対して一定の耐性、そしてあらゆる因果律に対する介入を力とする。

 名の由来はこの皇光歴の世界で竜達の間を旅していく旅団が存在しており、その中に竜達と話をする一族がいたことが由来になっており、俺の末裔が父さんという事になる。

 しかし、似たような能力は似た世界に現れる傾向があるらしく、その中でもすべての世界で共通して存在するのが『竜達の旅団』である。

 正式名『ワールド・ポイント』であり所謂世界の起点であり世界の中心らしい。

 時に人に、時に星に、時に現象として現れるらしく本質はこの世界が生まれたときから何らかの形で存在してきた世界の中心。

 世界によっては目に見えない形で存在することもあるらしい。

 そんな存在がこの二つの世界では人間と言う命に宿る『異能』の力であるらしく、聖竜曰く「珍しい事ではない」らしい。

 しっかり説明を受けてもよく分からなかったし、俺としては生まれつきの力に説明を受けても最終的な理解は「よく分かりませんでした」だったりする。

 イリーナの能力も生まれつきらしく、聖竜が言うには王島聡がネットワークを通じて呪詛の鐘の音源データを撒いたことで、イリーナの元まで届いたことが切っ掛け。

 聞くことでイリーナの中に眠っていた『ノイズ・ボイス』が目を覚ました。

 しかし、突然の目覚め故に本人がコントロールできなかった。

 そういう理由からどの時点で王島聡の不幸体質が目を覚ましたのか、それとも最初っから目を覚ましていたのか。

 その答えは聖竜が同じように答えてくれた。

 これは中途半端な目覚めだったらしく、妹の死にまつわる周辺の不幸が起きたのはやはりその場に『呪詛の鐘』が現れたことが原因だった。

 『異能』は『異能』を目覚めさせる。

 俺がこの世界に来た事で『異能』を目覚めさせたように、イリーナが『呪詛の鐘』の音源データを聞いたことで能力を目覚めさせたように。

 『異能』が存在する事でお互いに影響し合うのだという。

 それはノアズアーク達がきちんと証明してくれている。


 イザーク然り、アラウ然り、ヴァース然り、イリーナ然り。


 その全てが『呪詛の鐘』の音源データが原因だった。

 そういう意味では王島聡の計画が一筋縄ではいかなかったのは、本人の『不幸体質』が根本的な原因なのだ。

 俺だけが弾かれたのもそう思えば、呪詛の鐘の音を事前に聞いてしまったのがきっかけの一つ、そしてそこに王島聡が関わる事で彼の周囲を『不幸』にしてしまう力が俺には聞かなかったのも原因だ。


 あの事件から全てが始まった。


 あの時、『呪詛の鐘』の音色聞いたことが、王島聡があの場にいたことが俺をジュリや父さんと引き合わせこの場所まで道案内を受けたのだろう。

 俺は三年間通じて少しずつ大きくなる『竜達の旅団』の力、俺はそれに気が付かなかった。

 多くの人との関りが、多くの運命の結びつきが俺をここまで導き、その全てが二千年前からは始まっていたのだと思うとほんの少しではあるが感慨深くもある。

 『異能』と交わり続けてきた毎日。


 『魔導』と『呪術』が争い。


 『人』と『竜』が交わり。


 『世界』と『世界』が繋がる事で二つの世界を救い、今異世界間を変えようとしている。


 その中心にいるべきなのは俺ではなく、多くの人達なのだから。

 堆虎達が命を懸けて俺に託してくれたからこそ辿り着き、俺は生きている多くの人を救うことが出来た。


「一人は皆の為に、皆は一人の為に。今世界は脅威を乗り越え変わろうとしているんなら、それは堆虎達の生きた証でもあるんだ。生きた証は胸に、俺は剣を抱きしめながらこれからも突き進もう。忘れないように………願いながら戦う」


どうでしたか?今回は海の話の結末と、今回の事件の結末でもあります。伏線を回収させてもらいましたが、もう少しうまくできたらいいなと言うのが反省でもあります。皆さんはどのくらい伏線だったかわかりましたか?実は皇帝陛下とソラが会話していた一件が伏線でした。それ以外にも神隠し事件当日の事件や、ノアズアーク達の能力の目覚めなども伏線になっており、その辺が今回の事件の始まりとも結びついています。ワンフォーオール・オールフォーワンはもう少しだけ続きます。では次回!

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