ワンフォーオール・オールフォーワン 2
最終決戦後のソラ達のお話となります。
そのまま歩いてホテルまでの帰路につく中、真後ろからゴンの吠える声が聞えてきたので振り返ると案の定首輪に紐を付けず自由に歩き回っているその姿はもはや俺には見慣れた光景である。
しかし、ゴンはこのまま俺と父さんについてくるのでこのまま家に放置していた場合、学校や軍本部にまでやってきかけない。
母さんと奈美は一か月ほど待つことに(事務的な理由から完全な移住は時間が掛かる為)、代わりの家には犬を飼う事が出来ないため、俺と父さんが引き取る事になった臥、正直すごく心配。
「ゴン。お前………また勝手にホテルからでてきたのか?お前の首には紐が付いていただろうに。毎回毎回どうやって外しているんだか」
また綺麗に紐を外している。
紐を噛み切ったとかなら頑丈な紐をつけるんだけど、どうやっているのか施錠口を外しているんだよな。
器用な事をするな。
「暇だからとかな叱るけどな」
ゴンを連れてホテルへと向かって歩いていく中、横断歩道前で一旦止まりそのままふとゴンを見ているとゴンは俺の視線に気が付いたのは俺の視線に合わせて元気よく吠える。
「向こうは一杯人がいるんだぞ?このまま向こうに連れていくのは不安だな……」
横断歩道の信号が青になったタイミングで渡りはじめ、私終えた所で遠目に奈美がいることに気が付いて俺は奈美の方へと近づいていく。
肩を叩きながら「奈美。今から帰る所か?」と尋ねると、奈美は「うん」と肯定するので俺は家に帰れるまでついて行くことにした。
「別に付いてこなくていいのに………忙しいんでしょ?」
「癖になっているのかな。万理の事が」
奈美は不用意な事を言ったと表情を曇らせ、俺をどう言って話題を変えるべきかと悩む。
ゴンの話題にするかと思ったが、今更言っても仕方のない事である。
ならここはガイノス帝国方面に話題をシフトした方が良いだろう、意識を切り替える所でゴンの大きな咆哮に俺達の意識は俺と奈美の間に挟まる形で歩いているゴンに向く。
「お前が万理の事を気にする必要も、それで俺を気づかう必要も無いんだからそんな表情はやめてくれ。それも……さっきは俺も無関心だったな」
俺が多少誤魔化せれば奈美があんな表情することも無かったはずだ。
「ううん。私も御免なさい。ねえ、ガイノス帝国ってどんな所?」
奈美から聞いてくるとは思わなかったが、ここで意識を完全に話してやろうとここは語るべきだろう。
「四つの区画に分かれていて、俺が住んでいるのは南区。目の前に帝城ていうガイノス帝国の皇帝が住んでいるお城が大きな池という名前の大きな湖みたいな場所が見渡せるんだ」
「ほんと!?綺麗?」
「ああ、毎朝見ると見慣れてくるけどな。それ以外にも古い町並みが残る旧市街地とその外側に壁を挟んで存在する新しい街並みで作られた新市街地。南区と北区はそれぞれ住宅地何だけど、南区が一般庶民向けに作られているのに対して、北区は綺麗で旧貴族向けに作らているんだよ」
「お兄ちゃんは南区なんだよね?どんな所なんだろ?」
奈美が思いをはせてくるので俺は携帯に入れてある画像フォルダーに入れてある画像を奈美に見せてやる。
「すごい家の前からお城への橋が見えるんだ。あっ!こっちが夜景だ!綺麗。このコロシアムみたいなのは何?」
「ここで武術大会が行われるんだよ。ガイノス帝国は魔導機があるから今でも白兵戦は重要な要素だからな。聖竜誕生祭なんかで大会が行われるんだ」
「お兄ちゃんが去年中等部優勝なんだよね?」
「俺はあれを優勝したと認めていない。レクターが決勝で腹痛を起こしていなければ俺の優勝は無かったよ」
「そうなんだ………でも、お兄ちゃん中学校の頃学年二位だったんでしょ?お父さんが教えてくれたよ。二年生の頃に上級生を押しのけて決勝トーナメントを驀進したって」
あの人はなんでも話しているんだな。
俺の不幸話すら嬉々として話しそうで困る。可愛い娘には何でもしてやりたいのだろうか?
「と言ってもな。一個上の上級生はあまり強くないんだよ。キャシーなんかにも聞いても分かるけど、それで当時は一個上の先輩たちが苦情を入れてきたくらいだし」
「苦情?何?どんな内容だったの?」
「別に、結局受け入れられなかったけどな。決勝トーナメントに自分達が出れないのは後輩が細工をしたんじゃないか?とか、ドーピングをしているんじゃないかとか?とかいろいろだよ。でも、結局本人達の実力不足だって教師陣から叱られてな」
「弱いの?そんなに?」
「まあな、極端に弱いというより目立つような強さを持つ人間がいないんだよ。二個上はまだ色々いるんだけどな」
二個上はまだ強い人間がいるのだが、一個上の先輩はとにかく弱い。実際テラだって目立つような強さを本人はもっていなかった。実際俺も全く記憶していなかった。
強ければ俺やレクター辺りは覚えているはずだし、決勝トーナメントに出場していてもおかしくないので俺達が記憶していないというのはおかしい。
「まあ、軍関係者が参加する大会も開催される由緒正しい場所だよ」
奈美が「そうなんだ」と言いながら画像を次に変えると、次は学校が映し出されており、大きな中庭、大きな二階建ての食堂、視聴覚室クラスに大きな教室、体育館だけでなく、武術用の特別教室など色々な部屋。
俺としてはすっかり見慣れた光景だが、奈美からすれば真新しい学校の姿、それ以外にもある理由から訪れた女学院の写真。
白レンガと青い装飾などで作られた外観は小さな丘の上と相まってとても古く綺麗な造りをしており、門構えから高貴さが出て居る。通っている生徒も金持ちが非常に多く、制服も白と青の帝国式のワンピースに似たデザインの制服を着ており、街中で歩いていても非常に目立つ。
次に奈美が開いたのは今度移住のタイミングで開催される予定のお規模文化祭である。
帝都中が文化祭のように華やかで、軍関係者から各学校や生徒個人、各店などもお祭り騒ぎになる。
実際出店を振らくために役所に書類を提出し、その上で個人で参加する場合は個人で金を出さなければならず、軍や学校などを仲介して参加する場合は最低限は軍や学校が費用を出す造りである。
俺としてはあまり参加したくは無いのだが、どうもレクターが何か企んでいるらしく、俺達は参加せざる終えないだろう。
と考えた所で良い事を考えた。
「なあ、奈美。よかった向こうに言ったらこの祭り。参加するか?」
「ほんとに!?絶対だよ?」
「ああ、その頃には万理も外に出歩けるようになっているだろうし、海や万理と一緒に四人で見て回ろうか」
奈美は嬉しそうにはしゃいでいる間に仮設住宅に辿り着いていた。
俺は家の前で奈美の頭を撫でてやり、そのまま立ち去ろうとするが奈美が俺の服の裾を掴んでおずおずと顔を俺の方へと向ける。
「待っててくれる?」
「はい?何の話?」
「だから………向こうで待っていてくれる?また、みんなと一緒に昔みたいに笑っていられる?」
ああ、そう言う事か。
「勿論だよ。万理が元気になったらみんなでどこか一緒に出掛けよう」
俺が優しく頭を撫でてやると嬉しそうにしている奈美、するとゴンも嬉しそうに吠えてくれる。
「ゴンだって同じ気持ちだと思うぞ。一緒に散歩したいって」
俺がゴンの頭を撫でてやると奈美は「ゴンなら勝手に歩いて行きそうな気がするけど」と笑って見せる。
それについては俺も同じ意見である。
二人で笑ってしまう。
どうだったでしょうか?今回は戦いを終えたソラ達が未来へと向かって歩き出していくお話です。当分は小実弾的なエピソードが続いて終わりにするつもりです。完結までもう少しだけお付き合いください!では!次回!




