ワンフォーオール・オールフォーワン 1
最終決戦後のお話です!
東京決戦と呼ばれ戦いはイリーナの歌声と共に集結し、木竜の消滅と共に世界樹も同様に消滅し、中に閉じ込められていたメンバーも東京駅に帰ってきていた。
肝心の俺達はスカイツリーの展望室で今回の事件の首謀者である前田信義を拘束し、その状態でガイノス帝国の主力が到着するのを待つことになった。
元内閣総理大臣が代理で内閣を総理大臣を受け継ぎ、ガイノス帝国の最高議長と条約を結ぶのに時間はかからなかった。
世界中でも大混乱の真っただ中であったが、皇光歴側でもいくつかの思惑があったらしく、アメリカを含めて色々な国が皇光歴の国々の援助を受けられることになった。
アメリカは技術大国が、魔導大国はヨーロッパ地方のイギリス、フランスなどの援助を行ったりと忙しくなっていく。
ガイノス帝国も多くの国と条約を結んでいき、東京決戦から早くも二日が経過した。
俺とレクターとジュリ、エリーとレイハイムと一緒に俺達は俺の出身中学まで来ていた。
と言うのも、レクターが何かを思いついたようで、先ほどから職員室の机の引き出しをひっきりなしに探っている姿を俺を含めた他四名で眺めている。
「さっきからあいつは何をしているんだ?聞いてないか?ソラ」
「聞いてない。何か思いついたようで、さっきからあの調子だ」
すると奥の机の引き出しから紙の束を見つけ出し大きな声で「見つけた!」と叫ぶレクター、そしてその声の大きさに顔を渋りながら耳を塞ぐ他四名。
「何なのよ!アンタは!もう明日には帰るっていうのに。それにあんな激闘を潜り抜けてなんで元気なわけ?」
「良いと思うよ。こういう雰囲気も」
ジュリのフォローになっているのか、なっていないのか分からないフォローをしつつレクターを手に居れた紙の束を俺達に見せに来る。
俺達で首を傾げて髪を一枚一枚確認していると、これが俺達の世代の同級生全員分の名前が書かれた紙だという事が分かったが、それ以上この紙が何なのかと言われたら困る。
「で?何なのこれ?」
ついにエリーがゴミを見るような目でレクターに尋ねるとレクターはあるで当然のようにはっきりと答えた。
「卒業式をしよう!この紙はその為の紙だと思う!」
「卒業式って、卒業証書も無いのにそんな紙一つで卒業できるわけないでしょ?それに卒業しようにもソラとガイノス帝国立南区大学病院に入院している万理さんだけでしょ?」
「確かに。それに万里さんもサクトさんが引き取るから……」
そうなのだ。サクトさんが親のいない万理を引き取りたいと言い出し、海に至っては既にガーランドが引き取る為に既に帝都に連れ帰っている。
そんな状況で卒業式が出来るとは思えない。
「だからじゃん!この世界からみんないなくなるわけだし、それを卒業と呼ばずして何を呼ぶ!?」
「「「「知るか(知らないわよ)(知りません)」」」」
その辺をきちんと教えて欲しいものだ。
「だから!卒業式をすることでキチンとした別れをするんだよ。だって、ソラの同級生はこの世界の学校似通うわけじゃないんでしょ?それに………芯でいった人達だって卒業したかったんじゃないかな?」
エリーとレイハイムはどこか気に乗らないのだが、俺としては堆虎達の為にも卒業式位をしてもいいかもなんて思い始めていた。
「じゃあ、やるか……」
体育館にパイプ椅子を用意し、席一つ一つに紙を張りつけて同じように教員の席に入れてあった簡易的な卒業証書を証書入れに入れてそれぞれの席に置いていく。
勿論そんなことで卒業できるわけじゃないが、それでも気持ちだけでも卒業して欲しい。
俺達は横断幕も用意し、出入り口で完成させた卒業会場を眺めていると会場の壇上にてレクターがふんぞり返っている姿を発見したので、俺は直ぐに回収した。
「全くお前は。それがしたかっただけだろ」
「別にいいじゃん。味わってみたいでしょ?あそこに立って下に座っている生徒をながめるんだよ」
「その辺で教師をしている人だってもう少しましな理由で卒業式に参加すると思う」
俺のツッコミは聞いていないらしく先ほどからふんぞり返った自分の姿を思い出しては笑っている。
「まあ、でもこれは完成でいいでしょ?」
「ソラ君。本当に式はしなくていいの?」
「ああ、俺はソラ・ウルベクトであって、袴着空じゃないしな」
なんて苦笑いを浮かべてみるが、教師もいない卒業式を行えるわけが無い。しかし、この卒業証書は彼等への贈り物なんだろう。
「でもさ。レクター。よくお前あの紙や卒業証書があるって知ってたな」
「うん。だって………王島聡の話を聞いたら多分あるんじゃないかなって気がしたんだ。だって、何もしていないならきっと三十九人の結果を知れば弔いとしてそうしたかったんじゃないかなって?」
ああ、そう言う意味か。
王島聡は万理を殺した段階であそこを墓であり、卒業会場に変えてしまうつもりだったのだ。しかし、俺が生きていると知り予定を変えたという事だ。
「なら……このままでいいんじゃないかな?ここはこのままであるべきだと思うし」
俺達は彼等の墓をこの場所から移すべきでも、弄るべきでもない。ここは彼らの眠る場所なんだ。
俺達はこれ以上ここにいるべきじゃない気がする。
俺達が体育館から出ていく際俺は一人体育館を最後に眺めておくことにした。
ここもいつかは取り壊されてしまうのだろう。
それでも………出来る事ならここはいつまでも残っていて欲しい。そう願うのは俺のわがままでしかない。
勿論叶うわけでも無い。
すると、体育館の中に同級生である俺と万理を除いたメンバーがそれぞれの席に座りこんで俺の方に手を振っているような気がした。
「迎え入れてくれるさ」
堆虎達ならきっと王島聡だって受け入れるはずだ。
俺は安心して体育館を出ていった。
ガイノス帝国への帰国前に俺がどうしても寄っておきたい場所があった。
今度は正面の階段を昇っていくこき、俺は道場前までたどり着いた。正面に付けていたはずの看板はすっかり下ろされ、中では師範代が荷物をまとめている姿が見えた。
「本当に出ていくつもりなんですね」
師範代は「ソラ君か」と俺を確認しながら荷物を端っこに纏めて、俺は縁側で座ってその作業を待っている事にした。
「そいえば。君も帰るんだったね?」
「はい。学校の方は今直ぐは無理だけど振り替え休日は一か月後に必ず取らせるらしくて、今はレクターがそれだけを楽しみにしていますよ」
「フフフ。学生であるという事は良い事だ。万里君は元気かい?」
「どうでしょうね?意識は戻っているらしいですが、何せ体調は万全とは言い難いというか、少なくとも危険は超えたらしいですね」
「そうかい。ならよかったよ。ここを発つ前にそれは聞いてきたいところだったからね。なら海はどうだった?」
「海は少なくとも精神的な問題以外は特にないですよ。今の両親にもこれから会うんですけどね。海の現在の精神状態で目を覚まして直ぐに合うのはよくないだろうってみんなで話し合ったんです」
「君に任せてもよさそうだね。これで起きなくここを出ていけるよ」
「聞こうと思ったんですが、出ていく必要あります?」
師範代は「フフ」と軽く笑うが、目元だけは笑っていない様な気がする。師範代が何に悩み、何を想ってここを去るのかそれをきちんと聞いておきたかった。
「今回君達の一件を見ていて思った事だよ。私はまだまだ未熟だとね。君達の成長を、君達が仲違いしてしまったのは私の責任だよ。それが君達が乗り越えたんだ。私は何もできなかったよ。もう一度やり直そうと思う。別の地で修業巡りでもしようかとね」
「それは………」
師範代の所為じゃないでしょ。なんて言えなかった。
師範代は結局の所で俺達を指導しきれなかった事を後悔しており、俺もまたもっと別の道があったのではと考えてしまう。
「ここで適当な慰めをしないのは君の良い所だよ」
「褒められている気がしませんよ」
「褒めているんだよ。でも、ありがとう。また逢おう」
「………はい。また逢いましょう」
そう言って俺は道場から出ていき、階段を完全に降りたところで振り返り道場に向かって深々と頭を下げた。
「今までありがとうございました」
感想は次にでも!では二時間後に!