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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
123/156

東京決戦 8

決着とはなりませんでしたが、最後に音竜が復活します!

 ジュリとイリーナは来た道を戻っていき、展望室内を隈なく調べ始めた。

 と言うのも、ジュリやイリーナは王島聡が『呪詛の鐘』を持っていないという事に気が付いた。

 しかし、時間的にスカイツリー内に隠されているという結論に至り、二人は手分けして展望室内を時計回りに調べ始めたが、これと言った成果を上げられずに一周してしまっていた。

「もっと上じゃないかな。前にテレビで見たことあるけど、スカイツリーはもう一つ上に展望室があるんだって」

「じゃあ、どこかに上がることが出来るエレベーターがあるってことだよね?」

 二人は念入りに調べると、上へのエレベーターを見つけ出すことに成功した。

 二人で上へと上がるが、一番上の展望室にもそれは存在しなかった。

「おかしいね。ここに無かったらやっぱりあの人が持っている事になると思うけど……」

「もっと上じゃないよね?」

「流石にこれ以上は………」

 考えても結論が出ない中、二人はもう一度一個下の展望室に戻り探し出し始めるとイリーナがふと足を止めて周囲を見回し始める。

「ねぇ。今何か聞えなかった?女の人の声というか………透き通るような声が」

「ううん。何も聞こえなかったけど……?」

 ジュリが耳を澄ませてみるが、人のいないこの場所では機械の動く音も聞こえていない。

 それでもイリーナは「聞こえるの」と言いながらエレベーターでさらに下へと降りていく。一階まで降りてエレベーター前、世界樹への出入り口前のフロアから外へと出ていくと、化け物たちから逃げるように二人は『闇』を逃れるように近くの駅へと入っていく。

 すると、一本の電車が残っている。

「この中から聞こえる。間違いない」

「もしかして……音竜の声?イリーナさんにだけしか聞こえないのかな?」

「分からないの。でも、さっきよりハッキリと聞こえるようになった。透き通るような女性の声、私をここまで導いている」

 二人はゆっくりと電車の中へと入ると電車の出入り口が突然しまってしまう。

 慌てた様子で二人は電車の出入り口を開けようとするが、電車は急に出発してしまう。

「誰か乗ってるの?」

「この声が言うには先頭車両にいるって。この列車を動かしている人物も」

 二人は意を決しそのまま警戒しながら確かに前へと歩いて行き、先頭車両まで入ると一番端にある運転席にスーツ姿の男が列車を動かしていた。

 その右手には『呪詛の鐘』が握られており、二人は警戒心を最大まで高めながら遠くから声をかける。

「何をしているんですか?」

「何って………この列車を動かしているんだよ。特に目的は無いよ………だってこの列車を脱線させることが目的なんだからね」

 ジュリが「止めてください」と言うと男は振り返りながら歪んだ表情を二人に向け、列車の速度を一段階上に引き上げる。

「どうしてそんなことをしているんですか?」

「こんなものを破壊するんだよ。君も私もここで死ぬんだ」

「どうして?何のために?」

「この国は、この世界はこの金に呪われてしまったんだ。私もね………」

 ジュリはイリーナと男性の話を聞いていると、この男性の正体に一つの仮説を立てる。

「あなたは……総理大臣ですね?」

「へぇ。異世界人にも私の存在は知られているのかな?それとも君が賢いだけなのかな?」

 男は運転席から出てくると、呪詛の鐘を上に掲げながら音を鳴らそうとするが、それより早くイリーナが歌声を挙げる。

 男は負けじと呪詛の鐘の音を周囲に響かせるが、イリーナの歌声が呪詛の鐘に響き渡り、男の手に握られた呪詛の鐘が強い光を放ち始める。

「クソ!このまま貴様達の思い通りになると思うな!」

 男は『呪詛の鐘』を近くの座席の過度にぶつけて破壊しようとするが、それをジュリが男の腕に掴まる事で阻止する。

 イリーナは一瞬だけ歌声を止めようとするが、ジュリは「止めちゃ駄目!」と叫んで振り回す男の力に耐える。

「放せ!貴様のような異世界人に何が分かる!私は上に上がる為にバス事件を起こし、それを利用して直衛敏行を引きずり落としたんだ!この三年間、私はこの日本に負けないように強い国に変えてきた。なのに!!」

「そんな事の為にに?あなたは上に成り上がる為にソラ君達四十人を犠牲にしたんですか?」

「そんな事だと?私がその為に多くを犠牲にしてきたんだ!」

「あなたが成り上がった果てが、その為に犠牲にしてきた結果でしょ?この現状が、この状況が!なのに、あなたはその上にまだ誰かを犠牲にすると!?」

「君には分からないさ!上に上がる為に、私は信頼すら裏切ったんだ。その上、あの少年に協力してもらいながらここまで来た。なのにあの少年は………今この国を壊したんだ!私が維持してきたものを!!」


「あなたが維持してきたわけじゃない!多くの国民がいたから、繋がりがあったからこそこの国が維持されたはずです!なのに………あなたは成り上がる為に繋がりすら断ち切った!」


「繋がり?国民?それがどうした!?全国民は私の言う通りに動けばいいんだ!どいつもこいつも………」

 この男は呪詛の鐘によって精神を歪められている。

 王島聡の手に渡る前はこの男『前田信義』が所有していたのだろう。

「私はこの『呪詛の鐘』を使って成り上がって来た。せっかく『ノアズアーク』をこの国に入れてやったのに!なんの役にも立たない!!」

「あなたが………あなたが引き入れたんですか!?自分の目的の為に!」

 ジュリは前田信義の右手を握りしめながら信じられない人を見るような目で見つめ、謳うイリーナも同じような目を向ける。

「当たり前だ!全ては私がトップに立つ為の必要な犠牲なんだよ!君のような子供には分からないだろうな。私のような地方で生きてきた者には………!」

 ジュリはこの言葉聞いた時、どうしようもなくある男を思い出した。

 上に成り上がる為に『原初の種』を使った男『ファンド』、ガイノス帝国の革新派のリーダー。

 前田信義はファンドと同一人物である。

 ファンドもまたガイノス帝国の地方出身人物、スラム街でこそ過ごしたことが無いが、決して裕福な暮らしをしてこなかった。

(そっか、前田信義とファンドが繋がったんだ。十六年前にソラ君の本当のお父さんは多分この人に辿り着いたんだ。だから殺された)

「あなたは?まさか……十五、四年前に問題を起こしませんでした?」

「?何故君がその一件を知っているんだ?そうだよ。ある教団を利用してバイオテロ引き起こさせてもらったよ。その時に知り合ったんだけどな。飯島という男を」

「万里さんのお父さん?」

「万里?そう言えば娘がいるとあの事件前に聞いていたな。そうだよ。前科を消してほしいと、その条件として私の手足となって色々動いてもらったよ」

 ジュリですら怒りを覚えていく。

「ついでに私の周りを調べていた袴着という男を殺してもらったりもしたかな?」

「あ、あなた!あなたは自分の目的の為にどれだけの人を!?信じられない。あなたみたいな悪人を私は聞いたことが無い!あなただけは許さない!」

「そうですね。竜としての一生を受け、鐘として生きてきたこの私『ヒーリングベル』でも中々聞かない悪党ですね」

 ジュリと前田信義はそっと前田信義の右手を見つめる。するとそこにはピンク色の体色をした小柄な竜が羽を羽ばたかせながら尻尾を握られていた。

「ところでそこの男性。いい加減私の尻尾から手を放しなさい」

「あ、はい」

 言う通りにして手を離し、ヒーリングベルは翼を羽ばたかせながら鋭い睨みを前田信義の方に向ける。

「あなたのような人間は殺すことすら生ぬるいでしょうね。それはそうと、いい加減列車を止めて元の場所まで戻ってくれませんか?私はこの列車の終点まで行くつもりはありませんよ」

「分かりました」

 前田信義は言う通りに運転席で列車を動かしていくとジュリの頬を優しく撫でる。

「あなたは優しく優秀な者ですね。その優しさでソラという少年を支えてあげてくださいね」

「は、はい!助けてくれてありがとうございます」

「良いのですよ。鐘状態でもちゃんと見ていましたので。しかし、ようやく出会えましたね。イリーナ」

「はい。ヒーリングベル様」

「ふふ、私の事はヒーリングベルと呼び捨てにしてください。それより、戻りましょう。私達の役目を果たさなくては」

 三人は列車で来た道を戻って行く。

 今頃ソラ・ウルベクトと王島聡、エアロードとシャドウバイヤと木竜は最終決戦に入ろうとしていた。


どうでしたか?今回はジュリとイリーナサイドのラストバトルとなりますね。前田信義はガイノスエンパイア編のラスボスと異世界を挟んだ同一人物です。この二人が欲に走ったばかりに今回の物語が動き出しました。次回はソラVS王島聡となります!では!次回!

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