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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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東京決戦 7

ジャパンクライシス編としては初の七話目ですね。実は……この話さらに続くんですよ。

 王島聡は妹を溺愛しており、その愛情は死んでからも決して変わることは無かった。

 だからこそ妹の遺品を決して捨てることは出来ず、しかし同時に直視することもできなかった。

 妹の楽しかった記憶が頭の中で何度もリフレインし、その度に苦しむだけの毎日。

「あの時こうしておけば、あの時自分があんなことをしなければ」

 そうやって自分を責め続けてきた王島聡。

 そんな毎日を終わらせようと東京まで来た。

 王島聡と木竜の手によって世界の主要都市は全て崩壊し、日本の各都市の殆ども攻撃の憂き目にあい日本社会は完全に崩壊し、皇居を落とされれば間違いなく日本という国が無くなるだろう。

 王島聡は東京の夜空をスカイツリーから眺め、下から登ってきている者達を想いながら心の中で妹の事を考える。

 もうすぐ終わる。

 それだけは確かな事だった。


 スカイツリーの一階エレベーター前に現れたドアからジュリとイリーナを回収した後、三人はそのまま展望台までエレベーターで移動して行く。燃え上がる東京の街並みを想えば、心が苦しくなる。

 最初の展望室に辿り着くが、人の気配がしない。

「もっと上かな?それとも……」

「外かもしれないな」

 イリーナはフラフラした足並みで窓際まで寄ると燃え上がる東京の街並みが見えてきた。

 特に丸の内方面は大規模空母を交えた戦闘が起きており、それ以外にもあちらこちらから戦闘の痕跡が遠目に見えている。

「終わらせないとな………」

 俺はつい口から言葉を出してしまっていたが、それに二人は黙って頷く。

 しかし、空母がこの場所まで来ているという事は既に世界各地で戦力が投入されているという事だ。

「ジュリ……準備は出来るか?」

「うん。呪詛の鐘を取り戻した段階で直ぐに歌えるようにするね」

「いや、あくまでも安全になってからの方が良いだろうな。取り敢えず三人で外に出てみよう。確か階段を昇れば外に出れるはずだ」

 なんて言ってみたが、この三人はそもそも上ったことが無いどころか、知識がないので階段一つ見つけるのも一苦労。

 ようやく見つけた階段をゆっくりと昇っていき、ドアをゆっくりと開けると強い風が体を吹き飛ばしそうになる。

 俺は周囲を探し出すとそこに一人だけ端っこの方で立ち尽くしながら東京の街並みを眺め、プロテクター付き防具と両刃片手直剣を右手に、左手にハンドガンを装備しているその姿はまるで一人の兵士に見える。

 俺は二人に「下に降りておいてくれ」と言いながら数歩前に出る。

 ここで襲い掛かれば勝てるだろうかと思うが、どこかで隠れている木竜を警戒してある程度の距離感を維持する。

「初めましてなのかな?」

 聞いた事の無い声である。

 憎しみや怒りを滲ませた様な声であるが、同時にどこか悟りきっているようにも聞え、俺には声だけでは顔が連想しにくい。

「いや、多分だけど入学式前後でどこかですれ違っているはずだ。最も俺は知らなかったけどな。クラス違うし」

 王島聡は「あはは」と笑いながらこちらを振り返る。

 優しさと憎しみを混ぜ返したような顔つき、背丈は俺より少しだけ高そうな身長と中肉中背の身体つき、強引に茶髪に染められた髪は短く断髪されている。

「俺とお前と万理……だっけ?なんとなく生き残っているんだろ?まあ、突っ込んでこなかったのは正解だよ」

 腰回りから這い出るように小さな体の木竜が姿を現すとこちらを睨みつける。

「フン。お前とはクーデター事件以来だな。最もこうして話をするのは初めてかな?マント回りに隠れている奴らから聞いているだろうがな」

 マントからエアロードとシャドウバイヤが姿を現し、お互いにいつでも戦えるような状態が整う。

「呪詛の鐘はどこにある?」

 俺の問いに王島聡はまるで持っていませんと言わんばかりのジェスチャーで返す。

「どこに置いてある?」

「さあ?どこかな?あそこかな?それとも……こっちかな?」

 あくまでもすっとぼける王島聡、木竜も語るつもりは無いらしく俺達は明らかな時間稼ぎのような気がする。

 俺達は周囲に気を配っていると皇居内から火の手が上がり始める。

「王島聡!お前どうやって?」

「別に………お前が主力をいくつか引き抜いてくれたからだろ?まあ、あの様子だと目的を達するのは不可能だろうな。それどころか今殲滅されかかっているんだろうな………」

 王島聡は一歩俺の方へと近づき、木竜は元の大きさに戻っていくとエアロードとシャドウバイヤも対抗するように元の大きさに戻っていく。

「お前が俺に勝とうが負けようがもうほとんど俺の目的は達している。この戦いに俺は意味があるとは思えないんだけど?」

「けど、このままの状態が維持されればお前はこの星も滅ぼすんだろ?」

「俺は生きていたいと思う気力が無いんだよ。そう言う意味では俺は負けても勝ってもさほど意味は無いんだよなぁ」

「だったら世界樹を解除して降参すればいい」

 しかし、俺の言葉を木竜が遮った。

「断る。私はこの世界を滅ぼしたい。その為なら私は自分の命すら差し出しても構わない」

「木竜………お前はどうしてこんなにも命を滅ぼしたいと思うんだ?」

 エアロードの言葉に木竜は特に考えることも無く、思案することも無く答えた。

「人間は竜以上に愚かだ。どの世界において知性を持つ命と言うのはいつだって愚かなものだ。考えることで他者を差別し、見下す生き物だ。特に人間は他者を見下す傾向が強い。特にこの世界の十人の事を知ってからはその思いは強くなった」

「妹だけじゃないさ。大人の殆どは子供食い物のように扱い、ある者は子供は自分の見栄の為に利用して、そうやって生きている。それも全ては人間が他の命以上に知性を持ち合わせているからだ」

「不幸な命が生まれる。望んだわけでも無い一生の中で汚い大人達が子供を食い物にする世界なら壊してしまったほうがましじゃない?」

 木竜と王島聡の言葉に俺は頷くことは出来そうにない。

 それでも、父さん達のように正しい事が出来る大人だって存在しているはずだ。

「それでも俺は堆虎達が信じた道を進んでいたい」

「こんなこの世界を守るだけの価値があると?」

「俺はこの世界を守りたい。生き抜きたい未来がある。どんなにつらくて苦しい未来が待ち受けていても、どんなに息苦しく醜く生きても俺は………未来を生きたい」

 どんなに苦しくても、どんなにみっともなくても、泥臭く生き残っても俺は未来を見て生きていたい。

「堆虎が言ってくれたんだ。俺が………堆虎達の生きた証だから。俺が生きなくちゃ堆虎達に申し訳が無い」

「そうか……まあ理解してもらおうと思ったわけじゃない。お前の意見が分かるわけじゃないけれど、お前はきっと敵対するんだろうなと思ったよ。俺はこの世界に未練なんて無いんだよ」

「俺はあるんだよ。この世界には俺の大切にしているモノがあるんだ。それを捨てて死んでしまうなんて御免だ」

 ハンドガンを俺の方へと向けてくる王島聡の目は完全に座っていた。

 俺も緑星剣を鞘から抜き出し真直ぐ王島聡の方に向ける。

「もう一度聞く。世界樹を解き呪詛の鐘の場所を吐け」

「断る。俺を殺してから探し出せばいいだろう」

「お前が持っている可能性を俺はまだ捨てきれないんだ」

「俺と木竜はもっていない。これは約束するよ。嘘はつかない。これについては俺は既に『呪詛の鐘』の目的は達しているんだ。これ以上は意味がない」

「その言葉………今だけは信じる。だから………全力で戦う!」


「俺もだ。俺は滅ぼしたい!」

「俺は守りたい!」


「「だからお前を倒す!!」」


感想は後編です!では二時間後に!

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