東京決戦 2
後編です。今回は少し長めになるかもしれませんね。
東京到着の二時間前にスカイツリーから移動していた王島聡の元に自衛隊員から連絡が入った。
新幹線の路線を未確認列車が三台ほどが高速で東京目指して移動していると。
その一方が入ると王島聡は素早く自衛隊員に「今使える戦力で迎え撃て」と命令すると、自衛隊は命令できる範囲で部隊を動かし始める。
十人乗りの軍用ヘリが二十、コブラと同種の戦闘用ヘリが十を用意させ目標へと急がせた。
列車は予想以上の速度で移動していたが、彼らは今回の作戦に対し新型兵器の使用を決断した。
磁力と電力を使った新兵器、王島聡に与えた兵器のプロトタイプ版を全員分配備し実戦に投入することにした。
列車の上を押さえたヘリからまず合計三十の兵が高速移動する列車の上に降り立つと、列車の天井に両足を磁力で張りつけ、襲い掛かってくる列車の勢いに負けじとパワードアーマーと呼ばれる強化外装で素早い移動を始める。
肉体より大型にならないようにと改造を受け、素早く身軽な動きを可能にした新型パワードアーマーは肉体とフィットさせており、腰に付けたワイヤー突きアンカーとハンドガンと一本の細剣という旧時代的な兵器であるが、高速で動く手前この武装が一番適した武装だった。
しかし、下から襲い掛かってくる人影に回避しながら一歩後ろに引くと青と緑と黒色の鎧を着た男が片刃片手直剣を振り回しながら姿を現した。
「東京まであと一時間なのに………まあ、簡単にはいかないってことか………俺が先に逝くから魔導機の準備が終わったチームから列車上で交戦だ。マリアと朝比姉は車内に残っていてくれ」
俺は列車の屋根に上る為窓を開け、上の部分をしっかりつかみ、足元に魔導の力を集中させて一気に腕の力で天井へと向かう。
屋根に着地するタイミングで剣を召喚し、そのまま切りかかるが予想以上に敵が身軽なのかあっさりと回避されてしまう。
「訓練された部隊か………服装を考えれば自衛隊という事になるが………耳に通信機を付けているのか」
イリーナ対策を既にされているらしいが、そもそもこの環境では歌を歌ってもまともに聞こえないだろう。
足元を吸着させながら戦うので飛び跳ねたりするとそのまま後ろにすっ飛んでいくので気を付けねばならない。
左手を屋根に付けながら剣を低めに構え、敵は右手に細剣を左手にハンドガンを装備している。
こちらに向けてハンドガンの弾がやってくるが、俺はそれを当たる弾丸だけを弾きながら前へと突き進む。
同時に視線を周囲に向けながら他の戦力の確認をするが、遠目にかなりの数の軍用ヘリが構えており、大きさを考えれば同じ装備を持っている人間が多数乗っていると考えるべきだろう。
問題は俺達の武装で遠距離を攻撃できる武器の持ち主が少ないという点だろう。
なんて考えていると前々から細剣の横なぎの一撃が飛んでくるので、俺は片手を使ってうまく後ろに回避し、そのまま隙が出来た相手の体を横なぎに切り払う。
「ソラ!しゃがんで!」
俺は思考する前に体を動かし、そのまま体勢を含めにすると、レクターが俺を土台にさらに前に出るとそのまま二人の体を列車の外へと吹っ飛ばす。
俺はレクターの右頬に紅葉型のハリテの跡が残っているのがどうしても気になった。
レクターの右頬を指さしながら「何それ?」と尋ねた。
「何故か………エリーがいてさ」
下にいるのだろうかと覗き込もうとするが、上からやってくる敵にとっさに反応できず攻撃を受け止めるかどうかを刹那の思考を繰り広げるが、それよりさらに早く銃撃が飛んできた。
「という事は……この攻撃はレイハイムか?」
「久しぶりだな。応援に来てやったぞ」
この数時間全く話を聞いていなかったので、おそらく父さんやガーランドあたりが本部から列車を運ぶ際に読んでおいたんだろうな。
まあ、エリーが来ているという話を聞いた時にもしかしたらとは思ったが。
キャシーも上に上がってきて槍を横なぎに振り回す。
後方車両では屋根がゆっくりと開いていき、ウルズナイトがライフルの銃口を真直ぐに軍用ヘリ方を向けると、今度は反対側からコブラと似た造りの戦闘用ヘリが飛んできた。
「まずいぞ。反対側じゃウルズナイトの展開方向の都合で攻撃できない」
レクターが俺にそう告げるが、今更俺達で何とかできるとは思えない。
そう考えていた時、一つの人影がコブラに跳びかかって行大剣を思いっ切り突き刺しながらヘリを横に真っ二つにしてしまう。
「大丈夫そうだね」
「だな。なんかヘリにくっついて真っ二つに出来るんなら問題は無いな。ソラ。そっちは大丈夫か?」
「ああ、キャシー俺達で前の敵を叩くぞ。レクターとレイハイムは後方の敵を頼む」
しかし、しつこく降りてくる敵兵に対しいい加減うんざりする気持ちを抱くと、更に一機のヘリが近づてくる。
さすがのウルズナイトでもすべてのヘリを打ち落とせるわけでも無い。
「また降りてくる!もううんざりなんだけど」
レクターの不満げな声に俺も同意したくなるのは確かだ。
しかし、東京まで既に三十分を過ぎようとするこの状況では列車を止めるには中途半端な距離、ここで敵を撃退しなければまともに停車出来ないのも事実。
「ソラ。いい加減何とかしないとこのままだとまともに停車出来ないぞ」
「だけど中に入り込まれているわけじゃない。このまま押し切れば………」
そう思っていると、その奥から戦闘機がいよいよ姿を現した。
「押し切れば?あれを?」
レイハイムからの疑問を含めた声を俺は視線を逸らしながら「……多分な」と言い訳のように言うしかできなかった。
いや、無理だな。
「ミサイルの一発でも終了ぽいよね」
「レイハイム先輩!あれ撃ち落とせますか?」
「無理だな。ウルズナイトの一撃でも撃ち落とすのは難しいだろうな」
俺は剣を弓に変形させながら意識をイザークを倒したときの状態まで高める。
「キャシー少しだけ前を任せる。俺はあれを落とす」
俺は弓の弦の部分を大きく引いていき、架空の矢を作り出して照準を戦闘機の燃料タンクに付ける。
この武器の攻撃は『線』ではなく、『点』の攻撃なので目標場所を間違えると外すことになる。
その上移動中でもあるのでその辺を考えて打つ必要がある。
矢が飛んでいくイメージが真直ぐタンクへと向けられ、タンクを中心に戦闘機がタンクの方へと圧縮されていく。
兵を含めた全員が驚きの声が上がるが、俺は更に力を集中させて周囲のヘリも同時に巻き揉もうとする。
列車はは辛うじて範囲を脱しているようで、戦闘機とヘリをまとめて排除することに成功した。
周囲の風景が少しずつ東京中枢への景色に変わっていき、俺達の遠い視線の先に東京駅が見えてきた。
「まずな!父さん!東京駅まで目算であと十分も無い!」
父さんとガーランドは列車の間を飛び交いながら戦闘しており、二人も東京駅を確認する。
「先頭車両は強化シールドを展開、車内にいる人間は何かに捕まり外にいる人間は衝撃が来る前に飛んで逃げろ」
「え?それって?」
レクターが父さんの言っている言葉の意味をまるで理解していないらしい。
ウルズナイトと戦車は既に飛び降りる準備を終えて衝突タイミングを待っているような状況である。
列車毎駅の中に突っ込んでいくのだろうが、出来る事なら止めて欲しい。
しかし、俺達が抗議する前の既に先頭車両ではシールドが展開しており、衝突までもう一分も無い。
講義は不可能だと判断し、俺は交戦するのも忘れて駅に到着すると同時に外へと飛び出していった。
列車が衝突する大きな音が周辺に響き渡り、衝撃から逃げるように俺は体を丸めながら地面に着地すると列車に巻き込まれないようにとなるべく遠くに逃げていった。
どうでしたか?東京決戦前の穏やかな話と列車上での戦いを描かせてもらいました。列車の上での戦いは前から書いてみたかった戦いで、ガイノスエンパイア編では分け合って書けませんでしたから。豪快な東京上陸になりましたが、次は東京駅の中での戦いという事になります。では!次回!お会いしましょう!