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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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ビヨンド 5

最終決戦に向かう前のラスボスのお話となります。まずは前編です。

 ジュリ達は万理の旧宅の前まで来ていた。

 有難いことに万理の前の家はまだ取り壊されておらず、外から見た限り出入りがここ数年無いような雰囲気である。

 窓の端にでも白い影が現れたらそれなりの雰囲気が完成しそうで、女子メンバーで来たことをどこか後悔しそうになる。

 しかし、この先に『呪詛の鐘』に関する情報があるかもしれないと思うと逃げるわけにもいかない。

 朝比が先頭に立ちゆっくりとドアを横に引く形で開けていき、中の空気が外に漏れだしていくと、薄暗い玄関と少し長めの廊下が出迎えてくれる。

 固まってリビングから順にキッチンや一階の寝室にまわっていき、階段を昇ってジュリの前の部屋などに入っていくが中にはこれと言ったものは何もなかった。

 正直ここでなければ手掛かりが無くなってしまうが、そんな中シャドウバイヤがジュリの腕の中で身動きをしており、ひっきりなしに下を気にしている。

「どうしたんですか?」

「下から呪詛の鐘の匂いを感じる。ここにいるぞ……持っている本人がここに来ている」

 マリアと朝比が「本当に?」と尋ねるとシャドウバイヤは黙って頷く、シャドウバイヤがゆっくりと下に降りていき、三人もそれに続く形で一緒に下に降りていく。

 最初に確認したリビングのドアをゆっくりと開けるとそこには茶髪の少年が黒いパーカーとジーンズの恰好で立ち尽くしており、右手には古びた鐘が握られている。

 後ろ姿だがその辺にいるような普通の高校生に見えてしまうが、それでも右手に握る『呪詛の鐘』の存在が目の前の少年が普通ではないと教えてくれる。

「先客万来という言葉があるけれど……きっとこういう状況でいうのかな?それとも違う状況なのかな?君達はどうしてここに来たのかな?」

 振り返る少年は茶髪で優しさと憎しみを混ぜ返したような表情をしており、目つきも口元や鼻も別段変わった所は存在しない。

 警戒心を最大限まで高めている三人は簡単には口を開かない。

 右手に握られた『呪詛の鐘』の対処法は無いに等しいだろう。しかし、シャドウバイヤにはこの能力が通用しない、今はシャドウバイヤの近くにいるしかできそうにない。

「君達を操らないよ」

 王島聡のそんな言葉にいち早く反応したのはマリアで、「そんな言葉を信用できると思うのかの?」と尋ねると薄っすら笑いを浮かべながら口をゆっくりと開く。

「この鐘はそんなに簡単な使い方じゃない。勿論操ろうとすれば出来るかもしれないけれど、君達のように強い意思を持つ者は簡単にはいかないからね。その間にその竜に襲われたらひとたまりもない」

 王島聡はそのまま壁にかけられた掛軸に手を伸ばし優しく触れる。

「どうして?どうして………それをあなたが持っているの?」

 ジュリは我慢していた思いをぶちまけた。

 王島聡は首だけを振り返りそのまま掛軸の方に戻す。

「拾ったから……っていえば納得する?」

「それが真実なら………」

「でも俺にはそれが真実だって証明できないんだよね。でも拾ったのは真実………、そうだね。それを俺は君達に話しておこうと思ったんだ」

 朝比とマリアの警戒心は最大値まで高まり、ジュリは優しく鋭い視線を王島聡に向ける。

「警戒してもいいけれど………俺は何もしないよ。俺はね」

 シャドウバイヤの体を何かが思いっきりぶつかり、シャドウバイヤは悲鳴を上げながら壁に激突すると、その『何か』が姿を現す。

 木でできた体をしており竜を彷彿させる翼鋭い爪はまさしく竜そのもので、身体こそシャドウバイヤと同じサイズであるがその姿は間違いなく竜である。

「ぼ……木竜。復活していたのか?……てっきり………クーデター事件の時に完全に消滅したと」

 シャドウバイヤは痛みに耐えながら立ち上がり鋭い睨みを木竜につきつけ、気怠そうな視線を木竜はシャドウバイヤに向ける。

「人間は愚かだと言っただろう?向こうの人間達は私の種を二つに分けたのだ。その内の1つは向こうでクーデターに使用され、もう一つはこちらにわたっていたんだ」

「分けた?それでお前は復活できるのか?」

「不可能ではない。そう思っていた所だしな」

 声がした方向にはエアロードが窓の外から木竜の方を睨みつけ、木竜は先ほどの同じ気怠そうな視線をエアロードの方に向ける。

「記憶は繋がっているのか?それとも完全に別々なのか?」

 エアロードの質問に木竜は意外と素直に答えた。

「繋がっている。だから覚えている。あの少年が今回の計画の障害になる可能性が高いという事も、だからこそあの少年を無力化する必要があり、その為に海と言う少年を利用しようと思いいたる事になる」

「やはりお前が建てた計画だったか、明らかにソラに対する一方的な策、お前達は最初っからソラを警戒していたんだな」

「もちろんそれだけじゃないよ。木竜も俺もソラを警戒してはいたけど、それ以上にこの国に乗り込んでいたノアズアークだって警戒していた。イザークは俺の『呪詛の鐘』欲していたし、各国も狙っていたから同時にどうにかする事にした」

「幸いな事にお前達が来るという情報は操っておいた自衛隊官僚から降りてきていたし、ノアズアークに対して国が苦戦を強いていたのもそこで知った。隠れていればノアズアークとお前達がぶつかるだろうと私と聡は読んだ。お前達の狙いは直ぐに理解できたしな」

 ガイノス帝国が『呪詛の鐘』を狙っていると読んだ上の行動だと説明する木竜に、マリアと朝比は戦慄した。

「ノアズアークのイザークとソラが相打ちになればいいなと思っていたし、それが失敗した時の対策で海という少年を要したけど、ジャック・アールグレイと呼ばれている男が邪魔されるとは思わなかったよ」

 王島聡は「やれやれ」と首を左右に振り、木竜は左右に挟まれる形で鎮座しているシャドウバイヤとエアロードに警戒心をさく。

「でも、さっき戦いが終わったらしいけど………ソラ倒れたらしいよ。疲労も溜まっていただろうからね。それを確かめにと、君達に戦闘能力があるのかどうかを確かめたかったんだ。でも、無いみたいだね。あるのなら二匹の竜に挟まれた状況で何とかするだろうし」

「ソラ君は………絶対に竜達の事を『匹』なんて数えないよ。ソラ君は竜達の事を『人』で数えるんだから」

「それはソラの事情でしょ?俺の事情じゃないし………」

 王島聡はポケットからスマフォを取り出し、画面を操作し始める。

「この操作を最後まで実行すれば世界の終焉が始まる。言っとくけどおかしくなったわけじゃないよ。これだけで世界は終り始めるんだ。世界はこの醜い有様を受け入れられず、自らの意思と罪の重さでつぶれて終わるんだ」

「何をするつもりなの?」

「『呪詛の鐘』の音源データをインターネットでずっと配信していた。ここ三年ずっとだ。それがノアズアークの結成に繋がるとは思わなかった。でも、配信は今では各国軍関係者にも及んでいる。何せアプリとして販売しているからね。各国の軍や警察なんかはこのアプリをインストールしている人間が多いんだ」

「アプリじゃと!?お主……!まさか………」

「あなたアプリの形で販売していたの?そんな事をすれば直ぐにアカウントを経由してバレるでしょ!?」

「簡単だよ。『呪詛の鐘』で複数の人間を時間を掛けて操り、複数のサーバーを経由してアプリを裏サイトで販売した。見つけやすいように実際に使わせてな。ついでに操る方法も知っておきたかったし一石二鳥だったよ」

 エアロードとシャドウバイヤとジュリは頭の中に嫌な結末が見えてきた。

「アプリという事は………更新すれば音源データを改ざんすることが出来るという事」

「お!大正解。そう………言葉を混ぜれば簡単に人は命令に従うようになる。勿論簡単には操られるわけじゃないけど、こんな力を簡単に使うような人間は常日頃から『呪詛の鐘』に浸っている弱い人間だ。簡単に操られてしまう」

 王島聡の言っていることは決して間違っていない。彼の行動1つで世界の崩壊するだろう。

「どうして?あなたはどうしてそんなことをするの?」

 王島聡は無表情に変化しそのまま重苦しく口を開く怒りと憎しみを吐き出すように。


感想は後編で!では二時間後に!

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