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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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ビヨンド 4

ソラと海の戦い本番です!

 二人が床を蹴り至近距離で海が刀を振り下ろすが、途端に俺は攻撃を剣で攻撃を流しながらそのまま海の腹目掛けて蹴りを一発決める。

 海は後方に吹っ飛んでいき転がり、俺は海の刀を蹴る瞬間に上に突き刺すために思いっきり上に吹き飛ばす。俺はそのまま海に一気に近づき剣を振り下ろそうとするが、海は白羽取りの要領で俺の剣をつかみ取り、そのまま剣を思いっ切り上に振る事で俺の剣も全く同じ場所に突き刺さる。

 俺が舌打ちを放ちながら海に向けて拳を叩き込もうとするが、海はその拳による打撃攻撃を上手く横ステップで回避しながら俺の足を払って体を土台にしてそのまま刀へと手を伸ばす。

 俺は素早く立ち上がり剣を呼び戻し、海はそんな俺の体目掛けて刀を振り下ろし、俺はその攻撃を剣で受け止める。

「海……その動き方、やはり武術も身に着けていたのか、それも空手と柔道の両方だな」

 海は後ろに大きく後退し、俺はそれを追いかけるように突っ込んでいく。

 海に二連続水平斬りを繰り出すが、海はそれを刀を使ってうまく捌き切り、海は隙が生じた俺の胴体目掛けて思いっきり刀を横薙ぎで斬りつけてくるが、俺は思い切り腰を引いて攻撃を回避しながら後方に大きく飛ぶことで距離を取る。

 しかし、海は俺の逃がすつもりが無いらしく素早く距離を詰め鋭い縦斬りをおれの脳天目掛けて振り下ろすが、俺はその攻撃を何とか回避する。

「呪術で身に着けた身動きだと思っていたが、お前自身の特訓もあるんだろうな。でも……その刀。呪術だと思っていたが、魔導か?」

「……………信念の塊」

 信念の塊。

 対象者の最も強い気持ちを現す魔導の象徴で、イメージする力とその人の信念ともいうべき感情に反応してその力の形を決める魔導の1つ……か。

 王島聡かと思ったが、完全に違うな。

 ジャック・アールグレイめ、俺と海の実力を均等にするために隠していた魔導を与えたな。

 全く気に食わない男だ。

 人の考え方をある程度四での行動なのだろうが、気に入らないけれど今の俺には大切な事でもある。

 一方的な戦いにはなりたくないが、かといって手加減をすることを海の為にはならないだろう。

「今だけは感謝しておくよ」

 窓の向こう側にジャック・アールグレイがニヤリと笑っているような気がし、その姿はどこか幻のように消えていった。

「俺の竜の欠片には及ばないだろうが、呪術で縛り付けている感情を『信念の塊』で制御しているのか。なるほど、理にはかなっている。なら………俺も竜の欠片の力を最大まで引き出すだけだ!」

 体中から放たれる力が視認できるほどの形に変貌し、そのまま剣に集まっていきそれを自分の頭の中にイメージした形で斬撃として正面に放つ。

 斬撃が飛んだ途端、周囲から悲鳴と共に斬撃をよけようとする音が聞こえてくると、海はその斬撃に自分の『信念の塊』の力を正面からぶつけると、空気が振動し周囲に響き渡る。

 師範代や門下生、奈美の悲鳴と、レクターを含む士官学生は黙って戦いを見届けている。

 俺と海の視界が確かに重なった気がして、その瞬間に俺達の魔導は俺と海を記憶の世界へといざなう。


「小さい頃………先輩達を尊敬していた。実のお兄ちゃんやお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって」

 海は剣道場の奥で作り笑顔を作っている。

 俺は庭先で作り笑いを浮かべる海にどうやって声を掛けたらいいのか分からずに困り果てていた。

「俺はお前からの尊敬に気が付かなかった。お前からの尊敬や信頼に気が付かず逃げ出したことをどこか後悔した」

「僕は………実の両親何て知らなかったから、でも先輩達と居ると家族ってこんな感じだったのかなって」

 海は決して俺と目を合わせようとはしないでおり、俺は何を海と話せばいいのかと試行するうちに海はおのずと俺の方を振り向いていく。

 俯く海に俺は一歩近づく。

「家族を知りたかった。お父さんやお母さんに会いたかったし、もっともっと家族の愛を受け取りたかった」

「だから、俺が両親と仲良くしているのを見て嫉妬したんだな?」

「………はい。憎しみが生まれて、ドンドン先輩達が憎く感じるようになってしまって、そしたら僕は………万理せんぱ…………!」

 涙を流しながら俺の方を力強い視線を向けてくるが、俺はその強い言葉を、強い呼び方を受け止めた。

「万理お姉ちゃんを殺すために刀を振り下ろしていた!引き返せないんだ!あんなことをしら………!もう」

 万理を傷つけたことを引きづっており、それは海にとって一生の痛みなのかもしれない。

 でも、その痛みは本来俺や万理や奈美で背負うべきことで、俺達四人でならきっと痛みも分かち合えるはずなんだ。

「引き返せるさ。どんな辛いことをしても………それがどれだけ一人で背負えない様な重たい事もさ………俺達でなら背負えると思えないか?」

 俺は一歩踏み出し強く自分の意識を瞳に乗せて海を見つめる。

 きっとここで逃げたらそれこそ万理や奈美の想いを踏みにじる行為だ。

 魔導が導いた意思疎通の空間、ジャック・アールグレイや皆が繋いだ場所。

「僕にそんな資格なんてない!万理お姉ちゃんに刃を向け、こうしてみんなに迷惑をかけた僕に手なんて差し伸べないでください」

 そう言って海は俺に背を向けてしまう。

 俺はそれでも近づいていき海の真後ろに立つ。

「迷惑をドンドンかけてくれないと俺も万理も困るんだけどな………お前のお兄さんとしてお姉さんとしてお前の尊敬する人間で在り続けたいんだ」

「でも、僕は………」

「それを言い出したら俺は堆虎を殺しているしな、でも堆虎は安らかに旅立っていったよ。どの世界でも死者が返ってこないことは変わらないんだ。だからこそ、俺達生きている者は未来に進むんだろ?」

「僕にはその資格だって無いんです。だって……憎しみにかられて刃を振り下ろしたんです」

「俺だってそうだよ。何度感情に任せて刃を振るった事か、それでも多くの助けがあればどんな間違いも正してくれる気がした。それに、お前がそうやって縛られることを誰が望むんだ?お前が誰かの事を考えるなら………俺達の事を考えてくれ!」

 海は驚きと共にゆっくりと俺の方を振り向く。

「万里も奈美も俺も………何より他の世界にいるお前の家族だってお前の痛みや辛さを背負ってやりたいって思っているんだから!勝手に袋小路に入り込んで考えることを放棄するな!生きている限り人間は戦いだ!誰も望まないんだよ!お前がそうやって傷つけ続ける事を!」

 俺は強引に海の腕をつかんでしまう。

「帰ってこい!その呪術に負けるな!お前の意思と信念を忘れるな!その魔導はお前の信念を認めたんだぞ!」

 海の体から漏れ出る呪術は海の意識を縛り付けようとするが、俺は海の右手に一本の刀を握りしめさせる。

「お前が決着をつけろ。これは俺がするべきことじゃない」

「もう一度………一緒に稽古をつけてくれる?」

「勿論だ。一緒に剣術を学ぼう。そうやって元に戻るんだ」

 海は刀を強く握り目漏れ出た呪術は海の姿形を取り襲い掛かろうとするが、海はそんな呪術で構成された自分を容赦なく切り裂いた。

 とたん光りが周囲に広がっていき俺達の意識を現実に引き戻されていく。


 斬撃は空気の振動に変わっていき、俺と海は全身の息を吐き出していく。

 疲れが限界を迎えたのか、俺の体や心が戦いの終わりを告げているのか眠気がどんどん襲い掛かってくる。

 海も鎧が粉々に砕け散り、刀が床に音をたてながら倒れていき、俺の鎧を解除しながら握る剣が力なく俺の両手から離れる。

 終わったんだ。

 それが本当によく分かり、今までの疲れや痛みがどんどん襲い掛かってきて俺と海は真正面から倒れてしまうがそんな俺達の体を二人に男性が掴む。

「父さん?どうしてここに?」

「随分派手な喧嘩だな。でも………よくやった」

 俺は父さんの声と近づいてくる母さんの姿を確認するとそのまま海の方を見ると、海はガーランド夫妻が海を抱きしめている。

 既に海の意識は存在せず、深い眠りに包まれている海を涙を流しながら抱きしめる二人。

 俺はその行動に安心してしまい、そのまま力なく倒れる。

 

どうでしたか?今回はソラが海を救うお話という事もあり、必要以上にソラに主人公らしさを持たせてみました。誰も心に闇の一面があると思いますが、海は不幸な生い立ちがある手前どうしても闇に堕ちやすいキャラクターでした。空は三年前にその思いから気が付かずに逃げました。ですが、三年間で成長したソラなら海を救うことが出来るという話でもあります。勿論そこには多くの助けがあって初めて出来ることで、それこそがソラが英雄と呼ばれる所以です。次ではジュリサイドのお話をもって最終決戦に入りたいと思います。では!次回!

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