宿を取る
商人のカナールと別れた後、弘樹は街を散策し始めた。
「よく考えてみると言葉が通じていること自体が不思議だよな…某こんにゃくみたいなものを食べたわけでもないし…まぁスキルとかがある世界だしな…」
「とりあえず宿を探すのが先かな…あれ?あの看板日本語じゃないのに読める…これもスキル的なものか…」
弘樹は考える事自体諦めた。
???「お兄さんもしかして宿を探してるの?」
突然の声に少しビクつきながらその声の方へ顔を向ける。
「そんな驚いた顔で見ないでよ」
日本なら中学生ぐらいの少女らしき子が少しニヤつきながらこちらを見ている。
(新手の詐欺か何かか…⁈…)
「すみません、突然で驚いてしまって」
「お兄さん珍しいね、ここら辺で丁寧な言葉遣いが出来る人はあんまりいないよ。そういう私も丁寧な喋り方ができないんだけどね」
(敬語で話すのは珍しいのかな…まぁいいか)
「そんなことよりさっき宿がどうのとか呟いてたよね?良かったら私ん家の宿に泊まらない?」
(独り言を言ってたつもりはなかったけど声にでてたのか…ましてや聞かれてるとは…恥ずかしい…)
「どんな宿なんですか?」
「お父さんとお母さんのやってる宿屋なんだけど、お父さんの料理はこの街で一番美味しいんだよ!」
(なんと微笑ましい光景でしょう…)
「あと、お兄さんその丁寧な話し方やめた方がいいよ?歳下にその話し方だと冒険者の人に舐められるし、あと私がモヤモヤするから」
(敬語だと舐められる世界って…元いた世界でも昔はそんなもんだったかな?この間の冒険者の人たちは相当優しい人たちだったんだな…)
「分かったよ、ごめんよ」
「うん、それで、家の宿に泊まらない?」
「あぁ、ちょうどいいし泊まるよ、ありがとう」
「よしっ…」
少女は小さくガッツポーズをしていた。
5、6分歩いたのちに小さな看板の宿らしき建物の前に着いた。
「ここだよ!外見はボロだけど…中はそこらの宿より綺麗だから!」
「うん」
弘樹は少し不安だったが悟られないように返事をした。
中に入り驚く。
「へ…?まさか、ボロ宿の中がこんな明るくて綺麗だとは…」
中は壁などに装飾が施されており、椅子やテーブルなども清潔そうな布で覆われていた。掃除がしっかりされているのか床も清潔感のある状態であった。
「わるかったね、ボロ宿で」
店の奥から美形の女性が出てきた。
「お母さん!お客さん連れてきたよ!」
(宿の女将さんってもう少しふくよかなイメージが…)
「あ!失礼しました!つい心の声が漏れてしまって…」
「お兄さん、さらに失礼な事言ってるのに気づいてない?」
弘樹は少女に少し冷めた目で見られた。
「そういえば、お兄さん名前は?私はベネット」
「わた…ぼ…俺は弘樹」
「もうさっき謝る時に丁寧なことば使ってるんだから今更感があるよ…」
「あはは…あっちが地だから…」
「お客さん、お役所の人でもないのに丁寧語が地なのかい?珍しいね、外では気をつけるんだよ」
「分かりました、ありがとうございます…」
(まさか2回も心配されるとは…)
「ところでお客さん、何日ぐらい泊まりたいんだい?」
(とりあえず1週間…いや、2週間でいいか…)
「2週間でお願いします」
「2週間ならご飯付きで1日銅貨4枚だから銅貨56枚だから、銀貨5枚と銅貨6枚だね」
(なるほど…さっきの服が大体銀貨1枚で宿が一泊銅貨3枚…大体銀貨が一万円で銅貨が千円ってところか…ん?銀貨が1枚一万円ってことは金貨が十万円ってことだよな…じゃあさっき貰ったのって90万円…?!そういえばさっきの月契約の提示額が90枚ってことは…900万円⁈ほぼ俺の2年分の年収じゃないか…とりあえず宿代を払ってしまおう…)
弘樹はポケットからお金を出すフリをしてアイテムボックスから硬化を取り出した。
「これでいいかな?」
「銀貨5枚と銅貨6枚ちょうどだね、部屋は階段上がって二つ目の部屋を使ってちょうだい」
「わかりました、ありがとうございます」
(貰ったお金が大金だったことに動揺して気づかなかったけどこの宿めっちゃ安いな…飯付きでこの綺麗さで1泊五千円ぐらい…実は部屋は汚いとか?!)
そんなことは無かった。
(めっちゃ綺麗じゃん…この綺麗さで五千円って…良心的すぎる料金で逆に怖いな…)
「とりあえず休もう…」
ひとまず宿を取り一息ついた。
相変わらず最後が雑で申し訳ないです“〇| ̄|_