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8´.モブな少女と主人公②

「はぁーい、皆さーん。試合終了でーす!」


 ホイッスルと共に審判役のローブに身を包んだ女子生徒が整列を促した。一礼をし互いの健闘を称え合うと対戦相手の生徒たちは体育館の出口へ。最後にはAにも手を振ってくれていた。


「エイ、お疲れ。どうだった? 初めてのスポーツはさ」


 そんな彼らに小さく手を振り返し見送っているとタクトがタオルを片手にやってくる。


 手渡されたタオルを受け取るとAは滴っていた自身の汗を拭った。


「あはは、流石に疲れたよ。バスケットボールってあんなにコートを往復するスポーツだったんだね。でも、新鮮ですごく楽しかった!」


「そっか。昼飯前だし、せっかく体育館に来たんだから身体でも動かせればいいと思ってさ。楽しんでもらえてよかったよ」


「うんっ。でもごめんね。私が能力を使えてたら勝てたかもしれないのに……」


 試合中自分のしたことを振り返る。うん。やはりなにもできていない。どころかせっかくのシュートチャンスで()()()()()()()()()()()()()()。結局足を引っ張る結果になった。


「なーに言ってんのよ! Aはまだここに来たばっかりなんだから能力なんか気にしなくていいのっ。それに能力を使える使えないの話なら、タクトだって同じよ」


 自分の無力さに落ち込み床へと視線を落としかけているところで背後から飛びついてきたのはターニャだ。


 Aは少し首を後ろに捻りながら、


「そ、それってどういうこと? さっきの試合、タクト君すごい活躍だった、よね……?」


 タクトが能力を使えていない? そんなことありえるのだろうか。何故なら先ほどの試合、一番得点を取っていたのは他ならぬタクトだったからだ。それもそのシュートは一度も外すことがなかった。


 獣の身体能力や嘘みたいな能力が渦巻く中、それを成し遂げるのは簡単なことではない。確かに、一見タクトは能力を使用しているようには見えなかったのも事実だ。


 しかし、あの状況で一度も外さずに得点王になる、そんなことを異能なしで成し遂げられるとはとても思えない。だからこそ、なんらかの能力を使用しているのだろう。Aは勝手にそう思っていた。


「活躍はしてたわね。でも、それはタクトだけの力じゃないわ。だってタクトは一人じゃ能力を扱えないんだから。まっ、能力にも色々と条件や代償があるってわけ。生徒会長なんか、かなり酷いけど――そこの男も相当に面倒くさいわね」


「条件、代償……。そっか、能力っていっても万能じゃないんだ」


 どうやら無条件で異能を行使できるほどこの世界は甘くないらしい。先ほど腕を翼に変化させて飛翔したターニャを例とするならば()()()()()()()()()という条件が存在していたのだろう。そうでなければ、翼など背中に生やしてしまえば良いのだから。手もフリーとなり当然反則を取ることもなかった。


「それで、えっと、タクト君の能力って……?」


 だからこそ気になるタクトの能力。ターニャの口ぶりから使用はしていたみたいだが、相当扱いづらい能力らしい。ただ、やはり試合中も特に変わった動きは見られなかったと思うが……。


 するとタクトは少しバツが悪そうに、


「オレの能力は、だなぁ……。あー、いや、そうだなっ。見てもらった方が早いか。――ターニャ、頼むわ」


「はいはい、どーぞー」


 タクトはあらかじめ用意されていたかのようにサッと差し出されていたターニャの手を握る。そんなやり取りにAが首を傾げていると「まぁ、見ててくれ」と一言。そして、次の瞬間、


「き、綺麗な光……。それに暖かい……!」


 思わず声を溢す。繋がれた手から橙色の光が漏れ出してきたからだ。その光は今まさにターニャからタクトへと流れていき、その全身を包み込む。


 脈打つように光が流れ込む光景はなんとも神秘的で、妙な暖かさを感じ取れるそれにAの目は釘付けになった。


「そんなに見られると恥ずかしいんだが……。ま、まあなんだ。これがいわゆる()()ってエネルギーでな? オレの能力はこいつを身体に纏わせて身体能力を上げたり、武器を強化したりする〝気力強化〟ってなやつなんだ」


「気力を纏わせる――そっか、スポーツ漫画だもんね。えっと、それって気合なんかと似たようなものってこと?」


「そう思ってもらっても構わない。オレの世界は純粋なスポーツマンガだったからさ。能力とか特別な才能とかを持っていたわけではなかったんだ。だから、とにかく気合に根性、そーゆーのが重要な世界だったよ」


「おぉー、熱血だ。タクト君の漫画はスポ根だったんだね!」


「――あぁ、まあそんな感じ、かな?」


 話を聞く限りどうやらタクトの世界は随分とリアル思考のスポーツ漫画だったらしい。だとすれば、少年漫画かなにかだろうか。もちろん、ギャグ漫画の世界にもスポーツものはあったが、なんというか笑いを取るために現実離れしたものがほとんどだった。


 しかし、それでも気合や根性といった熱血要素は外していなかったのには覚えがある。やはりというか、スポーツ漫画というものは精神的な要素が大事なジャンルなのだろう。

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