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支部長との密約

圧倒的に描写が足りないような……

 さて、これから雷槍のキールマンを待ち受けるにあたって考えなければならないことが1つある。それは、キールマンがミモザカートのどこから襲撃してくるかということ。


 ミモザカートには、3つの入り口がある。北、南東、南西の3つだ。この内どこから襲撃してくるのか、それによってどこに戦力を当てればいいかが変わってくる。

 北の入り口近くにあるのが、当主、バングレー男爵家の屋敷だ。当然のように男爵家の軍の拠点も北エリアにある。後は、教会もここだな。

 南東エリアにあるのは冒険者ギルド。ここは宿場町も多い。が、裏路地に入ると一転して治安が悪くなる地域だ。戦力として一番多いのはこのエリアだが、冒険者というのは比較的気まぐれだ。襲撃となった時に即座には対応できないだろう。それから港町リッジモンドと取引のある商館もこの辺りが多い。

 最後に南西エリア。ここは、商業、工業が活発なエリアだ。鍛冶屋だったり、ポーションを売る店だったりモこのエリアになる。そして、ミスリルコーンへの街道が伸びているのも南西の門だ。必然的に、ミスリルコーンとの貿易も多い。

 ミモザカートは主に分けるとこの3つだ。まあ、他にもその周りの小さな村とか、あるいは農園とかということもあるが。


 相手の思考をトレースする。3択のうちの1つ。どれを選んでくるか。これを当てればキールマンを討ち取るのは正しくなる。逆に失敗すれば、ミモザカートに被害が及ぶ。考えろ、冷静になるんだ俺。

 こうやって、外せない問題をいくつも当ててきたんだろう。だから、俺は平民とは言え勇者パーティーにいられた。思考を読んでそこに罠を貼ることができたから、有利にニルスたちを盛り上げてこられた。


 普通に考えれば侵攻しやすいのは港町方面に街道の伸びている南東だ。ミスリルコーンは最前線として最大戦力が詰めているし、魔族領は南だというのに北からというのは攻めてくるとは考えにくい。リッジモンドも海上戦力が魔王軍を警戒してはいる。ただ、途中に大都市もないから、リッジモンドをすっ飛ばして進行するというのが一番考えやすい。


 ただなあ。問題は雷槍のキールマンが単騎で攻め寄せるということなんだよ。大軍と違ってその場合は小回りが利く。南西の関所を越えたところで、北側から回り込むなんて言うことも可能だ。だから、南東の防備を厚くすればいいというのは早計だ。

 そもそも、単騎で落とせるほどミモザカートは弱くない。いくらキールマンが一騎当千、千軍万馬だとしてももしそうならとっくにミスリルコーンが落とされている。それにミモザカートも守りの要所だからな。いくら奇襲を予定していたとはいえ、城門が開かなければ、大した被害は出せないだろう。

 問題はそれなのだ。いくらキールマンが脳筋で考えなしとは言え、そんな愚行を犯すとは思えない。それに魔王軍四天王には軍師、芭蕉扇のヴァイネスがいる。あいつはかなり頭が回る。となれば。


 必要としているのは、ミモザカートを陥落させるのではなく、そこに被害を与えること。そうして、ミスリルコーンの補給路を制限することだ。つまり、混乱を与えればいい。それが、魔王軍側の目的。

 そうなれば話は変わってくる。ミモザカートには指揮系統は大きく分けて3つだ。バングレー男爵家、冒険者ギルド、そして商人たち。そして今あげた順番に混乱が起きにくい。つまり、一番最初に叩くとするならバングレー男爵家の軍を潰して、そこから冒険者ギルド、商人たちの順に潰すと徒党を組んで抵抗されずに済むのだが……。


 問題は、俺の勘が嫌な予感を告げているんだよなあ。こういう勘は往々にして当たる。キールマンの目的はミスリルコーンとミモザカートの繋がりを断つことだとして、それがどうしても引っかかる。侵攻が北からと決めつけるのは早計だな。ミモザカートに入ってから決めよう。


 昨日の夜から馬を飛ばすことほぼ1日。夕暮れの頃に南西の城門にたどり着く。もちろん、正規の手続きを踏むことなく城壁内へと潜り込んだ。


 商人のエリアは相変わらず活気に満ち溢れていた。これから襲撃してくるなんて話は欠片も知れない。そりゃそうだ。俺だってヨハネスから知らされなければ、こんなことはしない。

 北エリア、南東エリアと順番に回っていく。その中で何人か、潜り込ませた部下から事情も聴いた。やはり、男爵の軍は動かせないか。もちろん、口止めもしておくことは忘れない。


 腹は決まった。キールマンは南西から襲撃してくるはずだ。理由はいくつかある。男爵家の軍が動きそうにないこと。これが、ミスリルコーンとの道を断つことであれば、人的被害よりも破壊工作を優先するであろうこと、他にもある。

 とりあえずは、冒険者ギルドを動かさなければな。そう思って、ギルドミモザカート支部長の部屋を訪ねた。


「それで、俺に用とは何事だ、ブライアン。もっとも、その名前も偽名だろうがな」


 俺は仮面をかぶっていた。笑っている奇術師の仮面だ。まあ変装もできるが、この方が胡散臭さも増すだろう。ついでに言うとアポなしである。


「南東5キロに、地竜が出る」

「そんなことを言われても困るな。証拠も何もなく、いたずらに冒険者を派遣はできない」


 そりゃそうだろうな、なんてことを思う。いかにもな人物にそんなことを言われても納得なんてするものか。金貨の入った布袋をお手玉して俺は遊ぶ。

 ちなみに地竜というのは、かなり強い。一流と言われる冒険者が10人単位で集ってようやく討伐できるようなモンスターだ。そんな情報が嘘であれば、いくらの被害が出ることか。


「そもそも、話というのなら、その仮面を取るのが筋だろう」

「それはできない。俺だって、わざわざ危険な橋を渡りたくないからな。この地竜は早々に討伐してもらわないと困る」


 本来ならお前に知らせる必要はないのだが、という態度をとる。こちらが親切で教えてやっているのだと。


「まあ仕方あるまい。これでも取っておけ」

「これは、地竜の爪の破片……」


 ちなみに、地竜云々は俺のでっち上げだ。その代わりに雷槍はいるがな。うろこは本物だが、それを得たのはもっと前だ。


「証拠ならこれでどうだ」

「ああ、だが」

「そう言えば、お前は王都から飛ばされてきたのだったな」


 支部長が渋い顔をする。それくらい、スキャンダルとして掴んでいた。けれど、それだけで俺が底知れ亡く感じたことだろう。


「何だったら、俺が取り計らってやってもいい。それにはいい手土産なんじゃないのか」


 お手玉をしていた金貨の布袋を机へと置く。中身は10枚。ギルド長の給料1か月分ほどだろう。これだけあれば、名剣の端くれくらいには手が届く。


「まあ、いい返事を待っているよ」


 わざと忘れていってのだ。所謂賄賂ともいう。けれど、俺は忘れただけ。それを指摘しなかっただけで、支部長も同罪だ。ここに密約は成立した。


 さて、それじゃあ罠を仕掛けに行くとしましょうか。

大体、銅貨1枚が1000円・銀貨1枚が10000円・金貨1枚が100000円くらいを想定しています


……今考えた。

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