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なんてことをしてくれたんだ!

大変お待たせいたしました。ぼちぼち更新していきたいと思います。

 勢いよく天高くまで舞い上がる火の粉を眺めていた。

 炎は2日にわたって燃え続けている。既に避難勧告も発令された。どうやら、既に城壁の外にも燃え広がったらしい。ちょっとやりすぎかもしれないが、まあいい。

 おかげでスラムは大混乱だ。まとめ役が抜けた状態で、何もできない。スラムの住人達も自分たちが街の人間に受け入れられないことを知っている。となれば、取れる道は2つに1つだ。このままここでのたれ死ぬか、別の組織の勢力圏に入るか、だ。その組織は2つ。ドロレスとギュンターそれぞれが牛耳る組織だ。ただ、俺としては、そのどちらも勝たせるわけにはいかない。俺が介入する第三勢力を勝たせなければいけない。

 だから、火種を燻らせる。ローレライが炎上しているうちに。


 まあ、間違いなく内紛が起こるだろうな。ただ、この街は放っておけない。ローレライは結構大きな街で、影響力もないわけじゃない。性格に難があるルーベンバッハ侯爵を切れないのもそれが原因だ。だから、それを削ぎ落とす。




「おい、お前誰だ!」


 荷馬車を護衛する男たちに声を掛けられる。荷馬車の中身は麻薬。カモフラージュにそれ以外のものもあるが、まあはっきり言ってどうでもいい。問題は、構成員が殺された。それも、敵対すると思しき人間に、だ。それが大事なのだ。

 今の俺は女っぽい恰好をしている。フードで顔を隠しているのは、疑わしい人間を増やすためだ。

 一番偉そうな男が部下にハンドサインで指示を送る。暗闇の中怪しいものを運ぼうとしてるのに単騎できたら警戒するよね。あれは、捕えて拷問するっていう意味かな。させないけど。


 地面を蹴る。そうして、一気にスピードに乗ってリーダーらしき男の首筋を切り裂いた。技量をすべて明らかにするわけにはいかない。別の人間の仕業に見せかけるのだから。それに、目撃者も残さなければ。ベストな形は、何人か殺しつつ、力及ばず撤退するだな。


「ん、な……!?」

「敵だ! 殺せ!」


 崩れ落ちるリーダーを見ながらサブリーダーらしき人物が槍を構える。中衛系か。恐らくはサブリーダー。この組織、やけに統率が取れているな。支配しているのではなく、手を加えている。

 少し疑問だ。ドロレスもギュンターも仕事は多い。果たしてそこまで手が回るのか。優秀な副官がいるとしたら厄介だな。

 正直なところ、姿を変えつつ手当たり次第に襲っているからどれがどっちの組織とか知らないんだよね。まあでも、俺の役割は対立を煽ることだ。

 スピードを少し抑えつつ立ち回る。いや、ちょっとまずいか。予想以上に強いな。それに烏合の衆というわけでもない。

 仕方ない、不意打ちで一人に重傷を負わせられたがきついな。本領発揮というわけにもいかない。


 体をかがめる。地面に這いつくばるように。そうして、一瞬視界から外れ、一気にアキレス腱を切り裂いた。ここからは急所は狙えない。なら、狙うべきは機動力を奪っての離脱だ。


「ちっ! 追え! 奴を追えっ! ガホッ」


 むせ返るような煙がその場に立ち込める。離脱する前に荷馬車へ火を放っておいた。麻薬というのは大抵燃えやすい。乾燥させて重さを減らすためだ。さらに言うなら、燃えると麻薬成分を含んだ煙が広がる。正常な判断も奪いやすいはずだ。今回の襲撃も一応成功かな。


 闇に紛れることに置いて俺に勝てるものはいない。意気揚々と引き上げた。




 現状、ドロレスの手勢とギュンターの手勢が小規模にしのぎを削っている。全面抗争には程遠いが、ギュンターが少々有利か。俺の予想ではドロレスの方が有利だと思っていたのだがな。まあ、誤差の範囲か。

 現状は油が煮えたぎっている状態だ。このまま放っておいてもいずれ火は吹く。けれど、俺が必要なのはパッと燃え広がる炎だ。はっきり言って俺がローレライに滞在できる時間は少ないからな。

 そのための副都カッツァイからの人材だ。もうすぐ先遣隊が来るはず。内紛の直前だ。まとまった勢力は欲しいに決まっている。決定打になるかもしれないのだ。当然、先遣隊の奪い合いがある。

 けれど、先遣隊と言いつつ、実は全くまとまっていない。リーダー同士も争いあって反目しあっている。そして、カッツァイの人間はこの争いには詳しくない。内紛から飛び火するのには時間がかからないはずだ。




 そう思っていたはずなのだが。

 おかしい。


 城壁の検問が、極端に制限されている。このままでは、先遣隊が入れない。仕方ない、城門を破壊するか。ローレライの周囲はそこまで魔物の活動も活発じゃないしな。


 城門に火を放つ。火事でローレライはかなり乾燥している。さらに言うなら火の粉が飛んできても何の問題もない。そこへ、外で城門を壊せだなんて群衆を煽ればそれでよかった。パッと城門が炎上して崩れ去っていく。これでオッケー。

 問題は、そうじゃない。なぜ、入城が制限されていたのか。その一点に尽きる。いったい誰がそんなことをさせたのか。城門の炎上なんて考えていなかったはずだ。つまり、封鎖が不可能になったと報告が行くはず。指示を出した人物まで。そこをたどればいい。


 想定通りだ。人間が動き出す。それも慌てて。恐らく城門で指示を出していた人物だろう。くすんだ金髪の女だ。そこそこ腕が立ちそうだし、服装もいい。さて、尾行するとしましょうか。

 尾行は少し気にしているようだが、本職ではないな。素人臭さが出てきている。これでは俺は見つけられない。気配を消しつつ、後をつけると、女はある商館に入っていった。

 そんなまさか。


 そう思ったが、仕方ない。間違いないだろう。この商館の構造は覚えている。だとするなら、侵入するべき部屋はここか。商会長の部屋へと続く準備部屋。そして、応接室の隣でもある。鍵を窓の外から開けて侵入し、中にいたメイドを気絶させる。さて、密会の様子を聞かせてもらおうか。


「……というわけです。何者かの手が加えられたのは間違いないでしょう」

「そうか、下がっていいぞ」


 聞き覚えのある声がする。くそっ。まさかこうなるとはな。


「どう思う?」

「ドロレスが動いたと思っていいんじゃないかい。もう川は渡ってしまったんだ。後はどちらから仕掛けるかだけだよ」


 そしてこれはギュンターの声だ。回りくどい本心を隠した言い方。間違いない。こんなところにまで侵入されていたとはな。忌々しい。


「そうか。となれば、入ってきた人間をドロレスに差し向けるしかない、か」

「それがいいんじゃないかな。君の主人のためにもね」


 くそがっ! なんてことを言いやがる。それが本心じゃないことくらい俺は知っている。冒険者ギルドの支部長で満足しておけばいいものの、欲を出しやがって。


 そして、お前もだ。あれほどギュンターには気をつけろと言ったのに、あっさり絆されやがって。あいつがそんな善良な人間であるものか。それをのこのこと騙されやがって。計画が台無しだ。なんてことをしてくれたんだ、リア!

リアは忠誠心が高いせいで空回りしちゃうキャラなんです。

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