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密談するリリアーナ王女

リオちゃんの話とか、闇の王子とか、少しは伏線はってたんですよ。

 俺は何者だ?

 最初に思い浮かんだのはそれだった。

 ブラック村出身の平民のジャックで、勇者ニルスのパーティーメンバー。それだけだと思っていた。だけど、だけどもしそこに幻の第一王子が俺だという可能性があったとしたら?

 まさか、では済まされない。


 最初にニルスたちと遭遇したのは、ブラック村の北にある山の中だった。と言っても、そこまで険しい山じゃない。当時一人で狩りをしていた俺が走り回っていたくらいだ。そこに、ニルスたちは北から追われてやってきた。フェーンバッハ子爵領領都ミャスライから来たと。


 つまり、フェーンバッハ領ミャスライとブラック村はそこまで遠くないということになる。ひょっとしたら、身重の女性が一人でも超えて来られるくらいに。


 まさか、とは思う。ただ、その可能性を否定できる決定的要因はないんだよなあ。


 俺の故郷、ブラック村に住んでいる村人は、全員が黒髪黒目だ。俺を除いて。弟のカイも幼馴染のミッチェルも黒髪黒目だった。俺の親とされている人間も。先祖代々黒髪黒目だと聞いている。

 けれど、俺は違う。栗毛にブラウンの瞳。明らかに、あの集団からはおかしかった。俺の先祖に栗毛の人間がいるわけでもないのに。

 村長から聞いたことがある。俺には、別の母親がいたのだと。ある日、突然どこからともなく表れて、そして俺を生んですぐ亡くなったのだと。そうして、カイやミッチェルと一緒に育てられた。

 さっきまで忘れていた。けれど、今はそれがやけにリフレインする。母親は栗毛でブラウンの瞳を持っていたらしい。それから、生まれてくる子ども、つまり俺の父親に関することは一切語らなかったと。まもなく亡くなったため、真相はわからない。けれど、一つ言えるのは、俺と血のつながりのある両親は誰か、わからないということだ。


 それはつまり、現状では俺が国王の血を継いでいるという可能性もあるということ。というか、その可能性がかなり出てきた。


 証拠はない。けれど、それは問題ではない。問題になるのは、そう仮定した場合、辻褄があってしまう。そういうことなのだ。それだけで俺を持ち上げようとするやつは出てくるし、俺を殺そうとするやつも出現する。


 シュートリンゲン公爵がどうのこうのと言っている場合ではなくなった。リンツァーノルデン公爵以下、同様の情報を持っている人間は数少ないとはいえいるに違いない。すぐ裏が取れる嘘を吐くわけがないからな。その情報で難を逃れようとしたという可能性は捨ててはいけないけど、信じるしかなくなった。

 現状、シュートリンゲン公爵が裏切っていた時点で打てる手がなくなるのだ。ニルスは負けるし、俺も命を狙われることになる。ならば、信じるしか手段がなくなる。その上でどういう手を打てばいいか。幻の第一王子の噂をたどるしかない。


 もし俺がそうだとしても、俺とつながりを立たないとなあ。そりゃあ、俺が偉くなったらという妄想をしたことはある。だけど、ニルスは上手く国をまとめそうだし、俺はサラが好きなだけで、結ばれるなら貴族にこだわる必要もない。はっきり言って、もし俺にそんな繋がりがあったとしても迷惑だ。

 だから、何としてでも、幻の第一王子を探し出すかでっちあげるしかない。


 というか、幻の第一王子がいたとして、それがフェーンバッハ領から行方不明になったとしても、あの発言がなければ俺がそうかもなんて思い当たってない。俺だって、言われるまで出生のことを忘れていた。

 それが、ひょっとしたらなんて思い至ったのは、リリアーナ王女のあの発言があったからだ。


『ニルスが光の王子だとするならば、ジャックは闇の王子ね』


 たわいもないかまかけ。そう見えた。俺がどう反応するか見ている。その時はそう思った。

 だけど、それにそれ以上の意図があったとするなら? リリアーナ王女が、俺が第一王子である可能性を知っていたとするなら? それは、どういう意味を持つ?




「あら、ジャック。闇の王子はアッフェローゼにいるのではなかったのかしら? そんなに慌ててどうしたのかしら?」

「リリアーナ王女。あなたは何を知っているのですか」


 そう言うと、王女はくすくすと笑った。俺とて、これで聞き出せるとは思っていない。場合によってはナイフも使うつもりだった。


「うふふ、そうね。教えてあげてもいいのだけれど、一つお願いごとをしようかしら」


 何だって!? 教えてもいいだと!? 何を企んでいる。それから、何をやらせる気だ。

 仕方がない、か。俺はこいつにはかなわない。よく知っていた。こいつはまだ俺に仇なしてはいない。なら、従った方が利になるはずだ。


「では、私は何をすればいいのですか?」

「それは後で話をしましょう。ふふ」


 してやられた。依頼の内容を先に言われたら拒否することもできたというのに。これでは、断りづらくなってしまう。まあ、それでも無理やりバックレることはできなくはないが。リリアーナ王女は策士だ。そして、俺の心理を嫌味なまでに突いてくる。


「それで、私が何を知ってるのか、でしたっけ? 実は私、ジャックのことには詳しいのよ? あなたは天才だし、とても興味があるの。出来れば、欲しいくらい。サリエラが羨ましいわ」

「そう言っていただけると光栄です」


 やっぱり、話さないか。第一王子の件でかまをかけてくるかと思ったが。


「冗談よ。わかっているわ。確かに、追い出された侍女がいるわ。そして、それが父親の子どもだっていうのも本当みたいね」

「っ!?」


 くすくす笑う。かまをかける必要も見せなかった!? それはつまり、俺に情報が渡っているのを知っていたということか。


「あなたが知っていることは恐らく全部知っているわよ。あなたの懸念もね。あなたの考えは正しい。言ったでしょう? 私、ジャックのこと大好きなのよ」


 これほど怖い、大好きなんて言うセリフは初めて聞いた。内心では心臓に穴が開きそうになる。


「ただ、一つ話をするなら、彼女には肖像画があるわ。よほど大事にされていたのね。妾の娘だというのに……」


 冷汗が噴き出した。

 ブラック村は火葬だったか? 違う、そんなことはしていない。それはつまり、遺体が残っている。掘り起こされたと擦れば……。


 わからない。こいつが味方なのか、敵なのか。これは俺に利する情報だ。けれど、それで何を見ようとしているんだ?


「ふふっ、お役に立てたかしら?」

「え、ええ、とても……」


 底知れぬ恐ろしさを感じる。だけど、俺はやらなくちゃ。


 そんな中で、リリアーナ王女は俺の耳元で囁いた。俺を、この俺を戦慄させるかのように、本性を出してゆっくりと刻み付ける。


「それならよかったわ。ところで、お願いなのだけれど……」

最近、書きたいものとの解離がすさまじいことになってる。文章力も落ちてるし……


とりあえず、これにて密談は終了です。このあと、リリアーナ王女が何を話したかについてはまた別の機会にということで。


そういうわけで、この章は主人公の過去を巡る旅です。

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