幻の第一王子
前回は焦ってたせいで、語彙力が大分落ちてしまいました、すいません。
「さて、何から話したものか。確か、第一王子の話だったな」
「そうです。知っていることをすべて話していただきます」
そう言うと、シュートリンゲン公爵は落ち着いた様子で息を吐き出した。
場所は変えた。2人が変な行動をした時すぐにひっとらえられて、なおかつ俺以外に人がいない。それが重要だ。ああ、スフィアは呼び寄せたが。リーベルもアナスタシアも俺の部下だと知られるわけには行かないからな。
「わかっている。先ほどの会話を聞かれた以上、隠し通せるとも思えぬ。こうなった以上、話すしかないだろう」
「だが、ヘルマン! ことは国を荒立てますよ! それを彼に話してもいいのですか!?」
「私がいいと判断した。彼は信用がおけそうだ」
じっくりと観察する。シュートリンゲン公爵は話しても構わないというようだ。逆にベネディクト伯爵はそれくらいならここで死を選んだ方がと言っている。これは、演技なのか? 演技でこんな対立ができるのか? わからない。
「実は、国王陛下にはリリアーナ王女が生まれる前に、お手付きになった侍女がいたのだ。それが妊娠してな。その当時腹の中にいたのが、我々が探している第一王子だ」
「よくありそうな話ですね」
「そうだな、私もそう思う」
実際、よくできた作り話かもしれない。シュートリンゲン公爵なら、この状況で口から出まかせを言えるくらい頭が回る。
ただ、嘘をついているにしても完全に無策とは思えない。俺を信用させるに足る何かがあるはずだ。それがなければ俺が2人を信用しないのはわかっている。
矛盾があるか。これから話す内容に、矛盾があるかどうか。それが、大事になってくる。矛盾があればそれは嘘、なければ俺はこの2人を信用する。そうするしかないだろう。流石に俺でも、貴族を冤罪で反逆人扱いしたら殺されるぞ。
「さらに言えば、便宜上王子と呼んでいるが、性別すらもわかっていない。身重のまま放逐されたからな。わかっているのは、それがカールガンツの妾の娘で、フェーンバッハ領にたどり着いた後行方不明になったこと、その子が金髪もしくは栗毛であることだ。生死すらわかっていない」
そこで、フェーンバッハ子爵が関係してくるのか。
フェーンバッハ領は南部にあり、俺の出身村からも近い。最寄りではないが、山を北に2つ越えればたどり着ける。まあ、それよりも近い街があるから、あまり意識したことはないが。
って待て。
「先ほど金髪もしくは栗毛と伺いました。なぜ、そんなことがわかるのです。納得した説明をいただきたい」
「それなら、私から説明させてくださいこれは私の専門分野です」
ベネディクト伯爵が口を開く。専門分野と言えば科学。だが、それがなぜ髪の色の特定に役立つというのだ。
しかも、金髪と栗毛なんて国全体の人口の半分以上だ。栗毛なら俺にも該当するし、ほぼわかっていないというのに等しくもある。
「実は、一般には知られていませんが、髪の色というのは親によって決定されます。種類は4つ。黒、栗、金、そして赤です。どうやって決めるのかというと、親から1つずつ、遺伝子というものを与えられ、その2つの遺伝子によって決定されます。そして、ここからが大事なのですが、その遺伝子が強い順に黒、栗、金、赤となります。例えば、金と黒の遺伝子を親から受け継いだ子どもは、黒髪を持つといったように」
「放逐されたカールガンツの娘は、栗色の髪を持っていた」
ベネディクト伯爵の説明が一気に頭に入ってくる。理解に脳の処理が追い付かない。つまりあれか、基本的に両親の持つ髪のどちらか一方になるということか。それにいろいろと複雑な決定があるらしいが。
「つまり、黒や赤ではあり得ないということですね?」
「そうです。赤は最も弱い。基本的に赤毛同士か、まれに金髪どうしても生まれることはあります。が、それも家系をたどっていけば赤毛の人間にたどり着く。そして黒だとすれば、少なくとも親のどちらかの髪が黒です」
かまをかけた。理解はしていないが、小難しいことを言って並べ立てている。こちらが理解しているということで話しているのだろう。ベネディクト伯爵が語っているのは真実のようだ。あとで、スフィアにでも調べさせよう。
そう言えば、リオは故郷がほとんど黒髪だと言っていた。黒髪が強いとすれば、その理由にも納得がいく。俺の故郷もずっと黒髪らしい。だからブラック村と名づけられたとか。
「つまり、幻の第一王子が生まれていたとして、金髪もしくは栗毛ということだ。逆に言えば現状わかっているのはそれだけだがな。どうにも、カールガンツのところから脱出した形跡だけはあるが」
つまり、身重だった状態で脱出し、どこかで子どもを産んだ可能性がある。その子どもが、第一王子として国の権力争いを割る可能性から処分しておきたい。だとしても。
「銀髪という可能性はないのですか。エレナは銀色の髪を持ちます」
「それは、確実とは言えないがほぼないでしょう。そもそも、銀色の髪というのは普通の人とは少し違うのですよ」
「ああ、そうだ。むしろ、それの相談でプルートーに接触したのだからな」
「銀色というのは、たまに生まれる特別変異なのです。アルビノと同じ。確立としては10万人に1人もない。ですから、その可能性はほぼ排除していいでしょう」
違和感を挟んだところに突っ込んでも、如才なく返される。事前の相談なんてさせていない。
嘘を相手に信じさせるコツは、真実と虚構を交えて話すこと。恐らく、銀色の髪とベネディクト伯爵とのつながりは本当だ。問題は、幻の第一王子の存在だな。
ただ、俺に気づく前からフェーンバッハ子爵のことは口に出していた。
「それで、このことを知っている人間は何人いるのですか?」
「国王陛下と、王妃殿下、私、プルートー、オリバー、カールガンツ。それから、オリバーが教えた者たちと、当時王宮にいた限られた侍女たち。後確証はないが、恐らくリリアーナ殿下もご存知と思われる」
「ニルス殿下とガブリエル殿下は。それから、ヘレンも知っていますよね」
「ヘレンは知っている。国王陛下の娘と息子には知らされておらん。リリアーナ殿下は時々知っているようなそぶりをなされるが」
新しい情報。ここまで、嘘を吐く必要があるか? いや、ない。
って、ちょっと待て!? リリアーナ王女が知っていそうだと?
俺の頭の中で何かがひらめいた。とりとめもなかった、ただの空想。けれど、それはだんだん大きくなり、辻褄が合っていく。そうだ、俺はどこでニルスと出会ったんだ? リリアーナ王女は俺のことを何と呼んだ?
まさか、そんなわけがない。けれど、疑えば疑うほどその可能性は組みあがっていく。取るに足らないとバカにしようとしたものが、いつの間にか大きくなって。
「それで、後は何を話せばいい?」
「いや、それで構いません。公爵殿下と伯爵殿下を疑ってしまい、申し訳ありませんでした」
「え!?」
ベネディクト伯爵があっけにとられる。知ったことか。
俺が建てた仮設。それが正しいとするならば、いや、ほぼ間違いなく正しい。その場合、幻の第一王子が存在することになる。
「このことは、決して口外してはならない。|わかっているな?《それから私の駒として働いてもらう》」
「わかっております。私には用事がありますので、これにて失礼」
そして、さらなる疑問。お前は、どこまで知っている? そしてその情報をどこから得ている? お前のバックにいるのは何だ。いや、ひょっとしてそんなもの存在しないのか? だとするなら。
考えがまとまらない。
「スフィア! 今すぐ王宮に連絡を取り付けてくれ! 今すぐだ!」
お前は、いったい何を知っているんだ。リリアーナ王女!
次回、再びのリリアーナ王女との対談。そして、明らかになる真実!
あと評価頂戴!




