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最悪のパターン

名前だけ出ていたリーベルとアナスタシアが登場。

 馬を飛ばして王都までたどり着く。少しメイデンスで一撃くれてやったが、それ以外はほぼ最速のはずだ。当然、俺より早く王都にたどり着ける奴がいるとしたら、俺より一日早く出発した部下だけだ。リーベルを呼び戻すように指示したが、どうなっているか。あいつも忙しいし一日くらいは必要になると予測している。


 今回は誰かを助けたりなんてしない。こういうのは迅速さが必要になる。襲われていたところもあったが、さっさと加勢して斬り飛ばした。撤退した時点でお礼も何も掘っておいて先へ進む。


 馬小屋で馬を部下に預ける。そしてそのまま最短距離で王都の自宅へと向かった。あ、ちなみに王都へは不法侵入してます。


「スフィア、いるか?」

「はい、ここに」

「報告を受けてきた。情報はどうなってる?」


 スフィアはすぐに飛んできた。どうやら自宅にいたようだ。話が速い。


「はい。アナスタシアが今日あたり報告を持ってくることになってます。それからリーベルもですが今日の午後からこちらに来られそうだと」

「そうか、それはちょうどいい。俺も同席する」

「かしこまりました」


 今はまだ午前9時くらいだからな。一息つく暇がありそうだ。流石に飛ばしてきたから疲れている。


「仮眠をとる。正午になったら起こしてくれ」

「かしこまりました」


 そう言って俺は部屋に引っ込んだ。




「ジャック様、呼びましたか?」

「ああ。待っていたぞ」

「待たせたのならすいません」

「いや、そんなことはない」


 午後2時、リーベルがやってきた。

 リーベルに姓はないらしい。なので、俺がリーベル・ハーフナーを名乗れと言ってある。黒い髪に黒い瞳。王国全体でみると珍しいが、リオは普通だったと言っていたし、俺の故郷も代々黒髪黒目だという。小柄で身長は150センチもない。ついでに言えば胸も小さい。まあ、ショートカットの髪が凛々しい顔つきとあっているのでそう言う指向の人にはもてるだろうが。

 実際、そういうやつに売られそうになってたんだよね。元々親の借金から娼婦として育てられたんだけど、向上心が強くて売り上げを伸ばして自分を買い戻そうとしていたらしい。それを面白く思わない奴がいて、それで変態指向のサディストに売られそうになったのだとか。そこをちょうど俺が潰した。そういうわけで俺を慕ってくれている。

 さらに言うなら、リーベルは力のあるやつを慕う傾向にある。上昇志向が強い故か、上手く流れに乗れそうということで俺についてきた。情報は武器になると語ったら面白そうな眼をして食いついていたよ。

 娼婦の経験故か俺に直接的に色仕掛けを仕掛けてくるのはどうかと思うが。


「それでだ。ミルキーハウス商会の乗っ取りの方はどれくらいだ」

「3割5分ほどは支配下に置けたかと。現状強硬手段はとっていないので、もう少し急がせることはできます。どうしますか?」

「それはいい。むしろやってほしいことがある。ミルキーハウス商会からお前の部下たちを独立させて新しい商会を作る。出来るか?」

「それは……。いえ、恐らくですが出来ます。2割ほどは私について来てくれるかと」

「なら、その準備を進めてくれ。それから俺が指示を出したらアッフェローゼに向かう準備を。俺はしばらく王都を離れられないと思う。だから、アッフェローゼで指揮を執ってほしい。カーマインもつける」

「わかりました。お任せください」


 俺の部下の中で指揮能力が1番高いのがスフィア、2番目がリーベルだ。ただし、スフィアは本拠地の王都で活動させないといけない。となると、動かせる駒はリーベルということになる。リーベルじゃあヴァイネス相手には力不足かもしれないが、誰もいないよりはましだ。

 俺もできるだけ早く戻りたいけど、裏から動かせる人間が不在ってのは絶対に避けないといけないからな。もし、シュートリンゲン公爵の裏切りが嘘だったとしても、噂が流れたという事実は消せない。そこに何らかの意図があったということも。敵の離反工作かもしれないし、元を立つまでは帰れない。


「しかし、そうなると商会はアッフェローゼに置くということになりませんか? あそこは第二王子派の拠点ですが」

「ああ、仕方ないだろう。ただ一応商会主は別の人間を立てておいてくれ」

「かしこまりました」

「俺からの話は以上だ。そちらからは何か報告があるか?」

「いえ、特に問題は起こっておりません」

「そうか」


 リーベルがそう言うのなら間違いないだろう。俺の配下の中で3番目の頭脳を持つからな。それに、自分1人で解決しようとしない。問題が発生すれば俺にも報告するし、必要とあれば俺を呼び出したりもする。ホウレンソウがちゃんとできるからな。


「夜にアナスタシアが来る予定だが、お前も同席するか?」

「そうですね。今日は午後からは予定はあけてきましたので。ジャック様との蜜月ですから、時間はたっぷりと」

「それはいい。リーベルも同席してくれ」

「わかりました」


 艶めかしい表情をしたが素に戻る。

 スフィア、リーベル、アナスタシアは俺の部下の中でも優秀で特に信頼している3人だ。そして追放の件も知っている。それとこの間に魔王との関係も話しておくか。リリアーナ王女は魔王とつながりがあるみたいだし。




「それで、本題だ。結論から聞かせてくれ、どうだった?」


 夜遅くになってアナスタシアがやってきた。アナスタシアは侍女として第二王子派の中枢の貴族のところへ侵入させている。その結果、王城に登場することも多い。そうして情報を集めてくれているはずだ。まあ、侍女の仕事があるから会えるのは夜くらいになるが。

 アナスタシア・シャルルヘルム。男爵家の令嬢で、スフィアが貴族だったころの親友だ。助けてあげて欲しいというスフィアの要望を受けて評判の悪かった婚約相手を潰した。その結果として俺の部下になり、現在は侍女をしている。さらに言うならいろいろと暗殺術とかも仕込ませてもらった。アナスタシアが俺を崇拝してるのはスフィアの洗脳……、もとい教育のせいだな。

 要旨は栗毛に蒼い瞳。貴族の中にも血が混じって栗毛の人物はいる。身長は俺より少し高いくらい。そして貴族なので当然のように美人だ。宿屋の看板娘風の美人とでも言えばいいか、近寄りやすい印象を与えてくれる。

 俺直々にいろいろと盗賊の技能とか、戦闘方法とかを仕込んだからな。隠密としてはすさまじく有能だ。


 既に、魔王軍との情報は話してある。それから、リリアーナ王女とまだ見ぬ敵に気をつけろとも。


「はい。結論から言いますと、シュートリンゲン公爵は裏切っています」

「そうか……」


 下唇を噛む。悔しい。見抜けなかった。それを隠さずに。

 俺が大丈夫だと判断したのに。だというのに、それが失敗だったとは。ヴァイネスとリリアーナ王女以外では初めて手玉に取られた気がする。

 大丈夫だと思っていた。シュートリンゲン公爵の娘エレナは勇者であり第一王子ニルスの婚約者であり聖女だ。その娘さえ捨て駒にし、娘付きの侍女まで抱き込んでいた。そうしてガブリエルにすり寄っていたなんて。想像していなかった。

 となると、俺のパトロンになるというのも嘘か。しかも、俺が有能だということまで知れ渡っている。下手をすれば、俺がお尋ね者になりかねない。最悪のパターンだ。


「詳しいことを教えてくれ」

「はい、あまり詳しいことは聞けませんでしたが、ベネディクト伯爵と密談していました。第一王子は早く始末しないといけない、後々残しておくとまた火種を生みかねない、と。早く探し出せなんてことも言っていました」

「決まりだな」


 くそっ! ベネディクト伯爵と懇意にしているところまではたどっていたのに。中立派を宣言しているはずのベネディクト伯爵が第二王子派に誘い込むだなんて。

 間違いなかった。始末しないといけない、禍根を生む。それだけ言えば十分だ。明らかに、シュートリンゲン公爵は裏切っている。


「どうなさいますか?」

「決まっている。あちらが動く前に、俺たちが動くしかないだろう。俺がいく」

「かしこまりました」


 打てる手は1つしかない。簡単だ、ことを起こされる前に起こせないようにする。脅しは聞かない。恐らくこちらに引き込むこともできない。なら、答えは簡単だろう。暗殺するしかない。

 本物の貴族相手だ。当然警備も厚いし狙われるに決まっている。それでもやるしかない。実行するのは当然俺。部下たちを巻き込めないし、この中で一番秀でているのは俺だと思っているからな。


「明日にでも決行する。準備だ。3人とも手伝ってくれ」


 やるしかないのだ。そうするしか、俺たちが生き残る道はないのだから。

サラちゃん、ジャックが大変なことやらかそうとしてるよ。


次回、再びヘルマンと対峙します。

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