アッフェバーデン陥落
今度こそ、予告守った。
そして西と東を間違えていた作者。これじゃあ、伝わるものも伝わらない。
あ、今更ですがアッフェバーデンは秋田市くらいです
北と西二方向から敵が攻めてきた。昼間の来襲だ。恐らく、夜だと飛行するのに距離感等がつかみにくいということだろう。トンネルを襲撃してから3日立っていた。その間何をしていたか。俺は何もしていない。
だって、アッフェバーデンは明け渡す予定だし。まあ、しいて言うならば避難させるべく噂をあおったくらいだ。俺の部下も8人を除いて避難させている。4人は連絡要員と冒険者として来ている奴ら、残りの4人は噂を流布させるために来ている奴らだ。当然、ことが起こる前に避難させる。
弓に矢をつがえる。まずは普通に攻撃をくれてやる。そう思って俺は城壁に上っていた。北微西方面から敵が攻めてきている。
「放てー!」
騎士団の指示に従って矢を飛ばす。長弓と呼ばれる強い弓だ。城壁の外に出ている冒険者たちも各々武器を構えていた。いつでも逃げ帰るように準備しておきながら。
俺の放った矢が飛んでいく。それと同時に何本もの矢が敵陣へ降り注ぎ、雨となって魔族を襲う。それでも引かない、か。
違う。何かが、違う。敵側が何か違う気がした。まるで、希望を見ているような。
雰囲気が違うのだ。敵の士気がいつもより高いと言ってもいい。
そういうことか。つまり、空を飛んで仕掛けてくるのは今日ということだ。
「あ、おい!」
城壁から飛び降りる。ロープで衝撃を殺した。自陣に弓を飛ばす馬鹿はいない、たぶん。
「おい、ミーア、いるか!」
「こっちだ、どうかしたか!?」
前線にいたミーアが手を振る。まあ、友人として、こいつらにはあまり被害にあって欲しくないし、これから使えるし。避難誘導を手伝ってもらおうと思った。
「いやな予感がする。離れた方がいいんじゃないか」
「ジャックがそう言うのならそうなのかも知らんが、今は離れることなんて無理だ。一応用心だけはしておこう」
そう言ってミーアは前線へと戻る。そりゃそうだ。何もないのに前線を離れれば、その分街に危害が及ぶんじゃないかと誰でも思うよな。
だが、ヴァイネスは何か仕掛けてくるはずだ。恐らくは俺がそれに対抗する一手を持ってると思っているはず。まあ、用意はできたんだけど、それは俺の目的に合わないしね。だから、空襲の被害を抑えて、撤退することに全力を注ぐ。
「おい、あれは何だ!」
誰か一人が西側から飛んできた影を指さす。来たか。
「あれは鳥じゃないぞ!」
「飛行魔法だ! 魔族が飛んでやがる!」
これは俺。一気にざわめき出す人族の陣地。飛んできた魔法使いは一気に魔方陣を展開した。大魔法の使用準備に入ったのだ。
さらに後ろから影があと2つ。恐らく大魔法は1人一発しか放てないと考えても3発。城門は壊れるな。
「おい、撃ち落とせ!」
「はっ!」
「しかも同時に2つを使用しているのか!?」
いや、違う。そうじゃない。
魔法というのは、使用するのに集中力を使う。違う属性の魔法ともなればなおさら。だから、2つや3つ同時に展開できるというのはかなりすごいのだ。小規模なものしか使えなかったが、7つを同時に扱うことができた英雄の話もある。そして、飛行魔法は相当高度な魔法に分類される。そんなものが2つ同時に使えるやつの心当たりなんてない。ああ、いや、1人だけいた。魔王メルクレシアだ。
しかし、魔王は人族領には侵攻しないと言っている。ならば、答えは簡単だ。魔法使いを浮かせている術者が他にいる。飛行魔法は、自分以外にも掛けることができるからな。魔王もヨハネスの奴に使ってた。
城壁に上った騎士の列から矢が放たれる。けれど、空を飛ぶ魔法使いに届く前に失速して落ちた。さらに放たれるがそれを余裕をもってかわす。
空襲をやめさせようと思ったら、飛行魔法を使っている術者を倒すしかない。まあ、わざわざ教えないけど。
戦場をかける。ポカンとしている冒険者たちをすり抜けて、カサブランカの剣のところへ。小柄な体を生かして潜り、捻り、飛び、すいすいと人ごみの中を進んでいく。
騎士団は恐らく放置しておいても大丈夫だ。指揮系統がしっかりしている。問題は冒険者だ。まとまりがないから、特に何も考えずに自分の一番と思う行動をとりやすい。突っ込んでいく馬鹿は無視だが、そのせいで被害が大きくなると困る。
「術者だ! 術者を倒せ!」
誰かが叫んでいる。けれど、それは無理だろうな。恐らく術者は同時に攻めてきた船の上だ。つまり街の西側。遠すぎる。
「ミーア! 撤退の準備だ! 被害が出るぞ!」
「伏せろ! 来る!」
誰が叫んだか。わからない。
轟音。魔方陣が妖しく光り、そして何かが爆発した。
城門へ2発。市街地の中央付近に1発。計3発。城門の外からでも、中で火の粉が舞い、黒い煙が上がっているのが見える。
そして、城門はと言えば、完全に破壊されていた。
「撤退! 撤退だ! これ以上魔法が飛んでくる前に城壁の中へ入れ!」
ミーアが叫ぶ。そりゃそうだ。誰も、これ以降空襲がないなんて思わない。ヴァイネスがいたら切り札としてあと何枚か隠し持っているはずだ。いや、むしろこれは俺の反応を見るための様子見といったところか。
一気に冒険者たちが動き出す。
「マイケル! お前も撤退を手伝ってくれ!」
「おうとも! 任せておけ。ここは俺に任せて早く逃げるんだ!」
『眉間抜き』のマイケルが最前線に出て槍を振り回す。魔族側から飛んできた矢を弾き飛ばした。流石だな。他にも俺たちのような高名な冒険者が殿を務める。後騎士団。まあ、こんなところで死んでやるつもりはない。
「おい、ここは一旦引く! 城壁はまだ持つ! その間に体勢を立て直せ!」
騎士団からも指示が飛ぶ。まあ、一度逃げ腰になったのは立て直せないし。それに、ダメージがあるとはいえまだ城壁は残っている。いい指示だろう。そんなことを考えながら、俺は混戦に紛れて弓を引いた。
味方に向けて。
砲台の準備をしていた騎士にぶつかる。ちょうどいい。撤退するにあたって、飛行魔法に手が届く武器は壊しておいた方がいいからな。
すぐに近づいてきた魔族を剣で切り払った。
この日、俺たちの戦線は城壁ギリギリまで下がった。
城壁ギリギリというのは、防衛線ではあまりいい手ではない。城壁が魔法の射程範囲に入るからな。だから通常は、城壁を使った有利を生かしつつ、少し外で戦う。現状城壁まで追い込まれたということは、城壁をすり減らしても一刻でも猶予を稼ぎたい。そういうことだった。
そして、そんなアッフェバーデンに一つの噂が流れる。それは、騎士団はアッフェバーデンを放棄するつもりのようだ。そういう噂だ。ソースは当然俺。後はヴァイネスも流したかもしれない。士気を下げるために。
そして何度も言うが、この街の混乱体制は低い。さらに、城門も破壊された。街も火に包まれた。となればどうなるか。避難民が続出する。もはや港に来るゴロッソたちの船なんか待っていられない。夜にでも脱出しようとする人たちで東門はごった返していた。
さらに、ここに来て冒険者たちも追随する。そりゃそうだ。自分たちの命だ。危険にさらされるというのなら、逃げるというのも選択肢の一つ。しかも、半分壊滅仕掛けている。
指揮官がヴァイネスだというのもあるのだろう。あいつなら、あいつが本気を出してしまえばもうおしまいだ。そんな雰囲気すらある。
騎士団が収集を収めようとしているが、そううまくも行っていない。
そして当然、ヴァイネスがこの混乱に乗じて攻めてこない奴でもなかった。
ここまで苛烈になるかというほどの夜襲。それが北門にやってくる。
空襲はない。飛行魔法や空爆の大魔法はそうすぐに使えるようにはならない。けれど、再び使用されないなんてことはないだろう。その場合、打つ手がない。
魔法使いに届きそうな準備が必要な強い弓や砲台は俺が破壊したからな。
今度こそ壊滅的な被害を与えられるかもしれない。さらには、守るべき民が逃げ出し、ほぼいなくなりつつある。誰もかれもが逃げ出す状況で、撤退したとしても仕方がないことだ。そういう空気が騎士団の中にも流れていく。
城壁が壊れるのも時間の問題。そうなった場合、騎士団が壊滅するかもしれない。ならば。
「おい、お前ら! 騎士団でこの門を死守する! その間にお前ら冒険者は街の住人を避難させろ! 明日の夜明けまでは持たせる!」
北門に集っていた俺やマイケル、ミーアたちへと放たれる指令。騎士団の指揮官は撤退することを決定した。
ここに、西海岸第一の港町、アッフェバーデンは陥落した。
次回、撤退戦をちょこっとやって、それから新しい物語が始まります。お楽しみに




