俺の勝利条件
毎日更新がしんどいんですよ。
もうちょっとで一区切りがつくと思います。
「ミーア、荒れてるけど何かあったのか?」
「ん、まあいろいろとな」
ニーナが単身敵の群れを蹴散らしに行っているミーアを見やる。相当怒っているみたいだ。今も魔族を2人まとめて斬り飛ばした。
夜襲があって、一時はかなり危ないところまで迫られたが、今は盛り返してきている。冒険者たちも参加しだしたしな。ここで、戦いに参加しない奴は冒険者とは言わない。臆病者という。
「いや、あれはいろいろってレベルじゃないだろ」
「知るか」
俺も弓を持ち出して、危なくなりそうになったところから撃退していく。今のところこちら側が優勢だから、積極的に加勢する必要はない。むしろ、ヴァイネスの策を警戒するところだ。
「まあ、理性は残っているようだしいいか」
人間の感情にはわかっていても自分では制御しにくいものが2つある。1つは、俺が普段利用している恋愛感情だ。そしてもう1つが、怒りである。
自分でやめようと思ってもやめられるものじゃない。それどころか、考えないようにしようと意識するほど高く燃え上がるものだ。そうして、時には理性を失いあるいは憎しみを抱いてすさまじい力を発揮する。人間が無意識に体へと掛けているリミッターを外すのだ、そのおかげで、現状ミーアはすさまじい力を発揮してる。
これを能動的にやれたらどれほどの力が出るか。そうは思うが、そう簡単に扱えないよなあ。
「何があったのか、後で話してくれよ?」
「誰が話すか。俺まで斬られる」
俺が、怒りを使わない、使えない理由。それは、攻撃対象がどっちに向くかまったくもってわからないせいだ。今みたいにミーアが魔王軍とか、第二王子派に向いていればいいけれど、怒りはコントロールするのが難しい。ちょっとした状態で攻撃の矛先が俺の方にも向きかねない。
それに、理性の歯止めが利かなくなることもあるんだよな。それで、必要以上に損害を与えるというのも俺に取っちゃ困る。視点が短期的になりがちだからな。俺も制御できるわけじゃないけど。サラを暗殺しようとするやつが現れたら躊躇なく殺すね。
まあ、無能は味方は有能な敵よりも脅威だからなあ。しいて使い道があるとすれば、無能な奴を怒らせて敵のもとに送ればかき乱してくれるかもしれないけど、使いづらい。
「おい、ミーア! 追撃はなしだ! どんな罠を仕掛けられているかわからないぞ!」
今も、ミーアが先走りそうになっている。俺とニーナとリオで頑張って止めた。撤退していく魔王軍に対し、頭に血が上っている。今は攻めるべき時じゃない。
翌日、再び港は大混乱に陥っていた。
まあ、そうか。そりゃ、本当にアッフェバーデンに攻めてくるのか半信半疑な人もいる。けれど、短期間に二度も襲撃があった。それなら、アッフェバーデンが狙われてると思う。そんな状態で逃げ出そうと思うのはおかしくない。リンゴの庭亭みたいな商魂たくましい所もあるし、全員がといくわけはないだろうが、またゴロッソたちの仕事が増えたな。アッフェバーデンが陥落したらメイデンスで合流するとしようか。
はっきり言って、アッフェバーデンは占領されても構わない。というか、その方が俺にとってはありがたい。戦線が伸びると管理が大変になるし、何より接戦を演じられる。自分が勝っていると思う状況の時にはなかなか撤退できないものだ。
だから、ヴァイネスとの読みあいに勝つ必要はない。ヴァイネスも俺の実力をよくわかっているはずだ。ずっと膠着状態になっていたら自らの目的の失敗を悟るはず。そうすれば、ヴァイネスはまた魔族領に閉じこもって裏工作を始めるはずだ。それをされるとこっちも後手に回るからやりたくない。
むしろ、読みあいには負けていい。ほんの少し、あと少しというところで負ける。もちろん、局所的に勝つ戦いは必要だが全体的には僅かな負けがいい。指揮権の獲得に苦労してるとでも見てくれるんじゃないだろうか。
まあ、当然人的被害を出すといろいろ問題が起こりそうなので、それは最小限に抑えたいが。
さて、ヴァイネスはどこから攻めてくるだろうか。ここでヴァイネスの目的を考える。当然、王国を混乱に陥れること。そのために、西のノーチラス砦から、そして東の教会派からの挟撃を考えていたはず。ただ、ニルスがキールマンの情報で東部を動けない故、教会派はこれをためらっている。
となれば、ヴァイネスの裏工作はどうなるか。恐らく洪水のヴァルターは動けない。第一騎士団と攻防を繰り広げているし、ヴァルターは守りが得意な将だからな。
何らかの裏工作をしてくるのは確実。けれど、その場合、俺が当然のごとく邪魔をする。火をつければ誘爆するような組織なら簡単だけれど、小さな火種から大火を起こすのは大変だからな。となれば、ヴァイネスも俺を動かしたくないはずだ。表情には出さないけれど。
だって、ヴァイネスが俺を狙っているといううわさが流れて、俺が保護され将軍に取り立てられてしまえば、現状のように簡単に手出しができなくなるからな。俺も自由に動けた方がいい。その点ではヴァイネスと俺の利害は一致してるのか。
問題はどちらも互いの首を狙っていること。決して声には出さないが、死んでくれれば楽になると思っている。まあ、そう簡単に死なないのもよくわかっているが。
となれば、現状ヴァイネスの目的は、この戦線に俺を縛り付けること。俺と同じか。その上で俺を討ち取れればなおいい。そういったところか。ただし、俺は冒険者で身軽だ。王国中を飛び回れるというのが大きな利点だ。つまり、離れようと思えばいつでも離れられる。
ならば、どうすればいいか。俺が戦場に出ざるを得ない状況に引っ張り出せばいい。簡単に言うと、智謀をめぐらせて攻めて攻めて攻めまくる。単純に言えばそれだけだよな。俺じゃないとかなわない、そんな状況にしたい。
ただし、俺とヴァイネスの実力は五分と五分。どちらかが大敗することもなければ、どちらかが大勝することもない。わずかな負けは演出できるが、それくらいしか戦況を動かせない。つまり、どちらも撤退することはないだろう。俺にできることはと言えば、戦いを激化させ、熾烈な奪い合いを演じることくらい。
どちらも時間稼ぎになる。有効な一手は打てるとは思えない。裏をかくことができるかと言えば、恐らく難しいだろうからな。ならば、その間にいかに手駒をそろえるか。その勝負になる。こちらは、ニルスが上手く教会派を収めてくれれば、か。
ヴァイネスには逃げられるだろうな。こっちが張った罠に飛び込んでくるのを待たないといけないから。ただ、今回は王国側の体勢を立て直す。とりあえず不穏分子を始末する。その時間さえ稼げればいい。
あとは、当然のようにヴァイネスが俺の首を狙ってくるのをかいくぐれば勝ちか。
整理しよう。現状を維持し、ヴァイネスをノーチラス砦に留まらせながら、時間を稼ぐ。その隙に国内を一時的にまとめ上げ、そうしてヴァイネスを撃退する。それが俺の勝利条件か。
次回! アッフェバーデン陥落! アッフェバーデンはどうなるのか、そしてミーアとジャックの関係は!? 乞うご期待!
(内容は変更される可能性があります)




