王都を襲った噂
2018年も終わりですね。今年1年ありがとうございました。
2019年も是非ともよろしくお願いします。
ちなみに三人称視点です
ノーチラス砦が魔王軍四天王・芭蕉扇のヴァイネスによって落とされた。その知らせは当然王都にもやってくる。勇者ニルスと聖女エレナが滞在する王都ガルテンでも当然のようにそれは人々の噂になっていた。
いわく、もう既に西海岸一の港町ハインツが占拠されただの、実は教会派が流した嘘だとか、つい最近暗殺された枢機卿シュテファンは魔王軍の仕業だの、真偽のほども怪しい噂だった。
だが、ノーチラス砦が占拠されたことは純然たる事実である。そして、そうなれば国の騎士団も動かさざるを得なくなる。そして、総括するはずのニルスも。
(……この状態で動くのは悪手だ。教会派が動かないはずがない。だが、俺もノーチラス砦に行かなければなるまい)
ニルスは単騎では王国最強だ。その呼び声は高い。となれば、魔王軍と戦うのであれば当然その戦力を期待される。今のように、魔王軍に王国側の領地が占領されたとなればなおさらだ。
ただし、ニルスの特性から考えれば、大軍に相対させるのは決していい手ではない。一騎当千とも称されるニルスだが、一つの大魔法で敵軍に大きなダメージを与えるわけではない。盾で敵の攻撃をかわしながら、剣で切り結ぶ。その過程で敵を大量になぎ倒す。それがニルスの戦い方だ。一国の王子として大軍の指揮の教育は任せれているがそれは本来のニルスの戦いではない。
当然、現状で向かったところで他の指揮官もできることは任されるだろう。攻城戦も別に得意というわけではなく、むしろニルスの苦手なところだった。けれど、パフォーマンスとして行かなければならなかった。
ニルスがリーゼンヌ砦の戦いに参加せず、ふらふらと王国各地を冒険者のように歩き回っているのには訳がある。ニルス自身がそれを好んでいるというのもあるが、それがニルスの一番いい使い方なのだ。そうして王国内で裏工作をしようとしていた四天王を討伐する。実際に火輪のカリンもそうやって討伐していた。まあ、サラに関しては本人がごり押したというのもあったが。
行きたくない。それがニルスの率直な感情だった。
今西海岸へ騎士団へ軍を率いていくのならば、教会派が黙っているわけがない。ただでさえ現状教会派に喧嘩を売ったのだ。教会派の拠点はどちらかと言えば王国東側にある。下手をすれば教会から背信者認定されかねない。
ただ、それでも行かなくてはならない。最前線で戦う王子というモチベーションも必要だし、国と騎士団が派遣を決めている。その決定にあらがえるほどニルスは権力を持っているわけではない。
「それで、出立の準備の方はどうだ?」
「はっ! 2日後には出立できるかと。急がせれば1日後の午後には準備できますが」
「いや、その必要はない。急いだところで変わるわけではなかろう。それより念入りに準備をさせろ」
出来ることはと言えば、出来るだけ時間を稼ぐことだけだった。
(あいつは言っていたはずだ。西へ向かうと。ならば何か考えていないはずもない。なら、俺は信じて時間稼ぎをしなければ)
先に向かったはずのジャックを信じて、何かできないかと騎士団の動きを遅らせることだけだ。
「サラがいてくれれば心強いんだがな」
ひとり呟く。が、サラはジャックの指示で王都を離れている。戻ってきて、そしてノーチラス砦へ向かうのには時間がかかる。それに相手はあのヴァイネスだ。そうやすやすとやられてくれるとは思わなかった。
(……行くしかない、か)
覚悟を決める。ある程度のものを犠牲にしなければ望む結果は得られない。この場合ならば、教会派が動くかもしれないというリスクだ。だが、それのためにノーチラス砦に赴かないというわけにもいかない。行くしかないのだ。ニルスの前にあった選択肢は行くか行かないかではなく、どのタイミングでノーチラス砦に赴くか。その選択肢である。
少なくとも、ニルスはそう思っていた。
けれど、ニルスをノーチラス砦に行かせるわけにはいかなるなる知らせが、出立直前の王都を襲った。それどころか、ミスリルコーンへと戻らなければならない。そんな情報が。
ある意味で、ニルスの味方をしてくれるその情報。それは。
ミスリルコーンに、魔王軍四天王・雷槍のキールマン現る。
え、お前死んだはずじゃあ? (キールマンの最期参照)
「新年ということでな、雷槍のキールマン様が祝ってやる」
「火輪のカリンもいるわよ」
「そういうわけで、俺たち魔王軍四天王が祝ってやろうと思ってな」
まあ、もうやるかどうかわからない番外編にしか出番がないんだけどね
「え!?」




