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ノーチラス砦陥落

 くそっ! 間に合わなかったか!


 そりゃそうだ。芭蕉扇のヴァイネスがいいチャンスだというのに攻撃を仕掛けて来ないとは考えにくいか。俺の希望的観測が甘すぎただけだ。


「ブリジット殿。情報には感謝するがどうやら、思っていたよりも早かったようだな」

「そのようですね。こちらとしても残念です」

「だが、我々も動かねばなるまい」

「協力感謝いたします」


 その一報を受けたのはリンツァーノルデン公爵家の屋敷にいたときだった。と言ってもオリバー・カワハキ=リンツァーノルデン公爵は王都にいるので、留守を預かっているその弟のブッチャー・リンツァーノルデン男爵に話を持っていったが。


「それで、ブリジット殿はこれからどうなさるおつもりか?」

「そうですね、私一人ではあまり戦力になれるとは思えませんが、現状ここ以外では情報が回ってないかもしれません。ですので、ここから南部の方へ馬を走らせようかと」

「そうか、では南部はブリジット殿に任せよう」

「王都から騎士団も到着するでしょう。それまで、持ちこたえてください」

「わかっている。アッフェローゼまで魔族の手に明け渡すわけにはいかん」


 第一騎士団はリーゼンヌ砦に当たらせているし、第二騎士団以降が対応するのだろうが、王都からここまで進軍してくるのは時間がかかる。それまではリンツァーノルデン公爵家及びその周囲の軍で対応せざるを得ない。後は冒険者か。

 リンツァーノルデン公爵家は第二王子派筆頭だ。けれど、魔王軍、特に魔王軍四天王を前にした場合なら、協力体制になる。どっちにしても魔王軍四天王は敵対関係にある。

 というか、現状表だって内乱起こしたら国が亡ぶ。そこに付け込まないヴァイネスではない。秘密裏に排除しなければならないが、リンツァーノルデン公爵家はそう簡単に排除させてはもらえないだろう。

 まあ、現状は想定通り。俺の見通しの甘さを除けば最高の手だと言える。ただ、ヴァイネスの目的地がわからなかったから王国の西の中核都市であるアッフェローゼを目指したのだが。

 問題は、あっという間にノーチラス砦を占拠されたことだ。あそこの指揮官は第一王子派なんだよなあ。ともすれば、ニルスの失態につながりかねない。どうにかして解決したいが、こればかりは俺の手に余る。


 サラを向かわせられたら一番なんだけどなあ。王国内では、条件さえ整えば最高の攻撃力を誇る。それがサラだ。単騎での王国最強はニルスだが、戦略的に準備をして、防壁を厚くしてそうして撤退まで援護すれば、敵軍を半壊まで追い込めるくらいの魔法が使える。まあ、そんなことやることはほぼないけど。ただ、サラには東部を抑えてもらわないといけないから、動かせない。まあとりあえず、連絡を入れないとな。


 公爵家を後にする。

 ノーチラス砦は、王国から西へ突き出した半島の先端部分にある。西海岸の海の要所だ。はっきり言って王国の海軍はろくなものじゃないが、それでも海の要所だ。西海岸は海岸線まで飛竜連峰が突き出しているから、西海岸経由で魔族領に侵攻するとすれば、当然拠点になる。それは、逆もしかりだ。


「レイン! サラに伝令を飛ばしてくれ!」


 そして、俺はアッフェローゼで馬を管理させているレインのところを訪ねた。間に合わなかったと知った今、サラを動かさないといけない。俺はここを動くわけにもいかないので、レインを動かす。


「わかりました。それで、なんとお伝えしましょうか」

「計画変更だ。手筈通りに頼む、と。それで伝わるはずだ」

「かしこまりました。ローリー行くぞ」


 馬に一声掛けてレインは旅立っていった。優秀な部下たちだからな。サラを見つけて俺の言葉を伝えてくれるはずだ。これで、後顧の憂いを立つ。


 さて、それじゃあ俺も行くか。目指すは王国南西部、西海岸第3の港町メイデンスだ。




 メイデンスにたどり着いた俺は、まず最初に、騎士団員の振りをしてノーチラス砦陥落の報を伝える。それから、一度王都へ伝令として戻ると伝えた。だって俺正規の騎士団員じゃないし、照合されたら偽物だってバレる。誇り高き騎士の偽物を名乗るなんて処刑されるからな。騎士団がメイデンスにやってくる前に逃げ出すに限る。

 そしてそれから海賊に接触し、海賊の船と商人の私設部隊、冒険者たちで軍を組織した。第一王子ニルスの、協力した場合恩赦を与えるという書状をもって。こういう時のために何枚かニルスから書いてもらったものがある。いや、筆跡もまねることはできるけど、一応正式な書類の方がいいし。

 今俺の言うことに従えば、新しく罪もなく人生がやり直せるのだ。罠かどうか疑いはするが一応乗ってみるというのが筋だろう。魔族領と密輸とかもしてるらしいから、戦力には期待できる。というか、はっきり言って王国の海軍は質で海賊に負ける。サラ級の大魔法使いがいれば別だけどね。

 ちなみに俺の今の身分は、ニルスの私設部隊の一員のユリウス・ドーソンである。まあ、どうでもいいか。

 冒険者ギルドの方も依頼を出しておく。ギルドマスターは軟禁して部下にすり替わらせた。これで、一応は戦力を形だけでも整えられた。


 芭蕉扇のヴァイネスは脅威だ。謀略に長けていて、王国内部での離反工作なんかも進めている。俺の部下も抑えに回っているが、どっこいどっこいといったところだろう。闇の底奥深くから糸を操るように、人を操る。それがヴァイネスの戦略だ。

 それが、ノーチラス砦に現れた。当然、ピンチである。が、それと同然にチャンスでもあった。ヴァイネスの強みは、俺と同様にあらゆる場所に現れることができることだ。そうして裏工作を行い、敵地を混乱に陥れる。

 それが、現れた。ならば、闇に潜らせなければいい。ノーチラス砦で指揮をとらせればいい。ヴァイネスの仕事量を増やし、接戦を演じて部下に任せてノーチラス砦を離れることができないようにすればいい。


 完全に分断する必要はない。補給までたったらがむしゃらに攻めてくるかもしれない。あくまでも、大軍で退却するのが面倒だなと思わせる程度でいい。そうして、ヴァイネスをノーチラス砦に縛り付ける。俺という餌をちらつかせる必要があるが、現状は時間稼ぎができるはずだ。


 そのために、海上を封鎖する。

大体、東北地方の岩手秋田以北を10倍くらいにした地図を想像してもらえたら。王都が十和田湖で、リーゼンヌ砦が一関、占拠されたノーチラス砦は男鹿半島に当たります。たぶん

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