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危ういリア

突発的に思いついたエピソード

 ニルスたちが王都に帰ってきた。

 今すぐにも会いに行きたい。サラに会えなくて恋しいから。でも、目の前のことを片づけなければ。


 とりあえず、王都のごたごたはスフィアが対応してくれている。判断する必要があるのは俺が向かわないといけないかもしれないところだ。ただ、王都で仕事を終えたら西海岸の方に行かないといけない。出来ることなら、俺が動く事態は避けたい。どう頑張ってもタイムラグができるからな。出来ることなら最前線地帯にいたい。

 俺の部下であるリアもそんな相談をしに来た1人だ。本名、リア・ルーベンバッハ、悪名高きルーベンバッハ侯爵の三従伯母(みいとこおば)(曾祖父の異母妹の孫娘)である。一応一門に数えられてはいるが、ほぼ他人だ。ルーベンバッハ家から追い出されたところを拾った俺が利用できそうだとルーベンバッハ領で大手の商会に忍び込ませている。かなり古参の部下の1人だ。

 こいつは、ちょっと暴走しがちなことがあるんだよな。俺が意味があってやるなと言っていることを自分で判断して突っ走りがちな傾向がある。はっきり言って冷や冷やものだ。俺の役に立ちたいと思ってくれるのはありがたいが……。


「それで、手が回らないと?」

「はい。ルーベンバッハ侯爵家に潜り込ませようにも排除されています。内部の情報も全く分かりません。麻薬の密売に侯爵家がかかわっているみたいですが、街1つ完全に掌握されているようです」

「侯爵の妻のドロリスはやり手だからな。そう簡単にはいかないだろう」

「侯爵家にはいまだ全く接触できていません」

「そうか……」


 できることなら、第一王子派の人間を頭に据えたい。まあ、ルーベンバッハ家はどちらかと言えば第一王子派だが、この状態だとアキレス腱になりかねない。出来ることなら、現状のルーベンバッハ家に影響力を持っている人間を闇組織と一緒に一掃して、ニルスの傀儡にしたかったところだが……。


「やむを得ない。公爵家は潰せ。その結果、ガブリエル派が入り込んでも構わん。完膚なきまでに叩き潰せ」

「わかりました」


 必要とあれば、ルーベンバッハ侯爵領が荒廃しても構わない。全て使って使い潰すくらいで。最悪、侯爵領で内乱が起こっても構わない。

 元から、ルーベンバッハ侯爵は潰すつもりだった。頭を挿げ替えた方が効率的だと思ってたが、そうできないならそうする必要はない。それに何より、スフィアが処刑されかけた原因だ。引き合わせてくれたことだけは感謝しているが、許すつもりは毛頭ない。

 闇組織は利用するのには便利なんだけどなあ。麻薬だけは許す気になれないんだ。それ以外なら人身売買だろうと賭博だろうと武器の密輸だろうと、経済を回すのに必要だと思うが、それは許せない。それに、好色で自分の思い通りにならないとスフィアを処刑しようとするような人物だ。それがまかり通るというのも嫌なものだ。サラも粉掛けられたらしいし。


「あとそれから、冒険者ギルドのギュンターには気をつけろ。あいつは敵か味方かわからないように見せているが、恐らく敵だ。それに頭が回る。一見こちらに利がありそうな話を持ってくるかもしれないが、罠だと思え。気を抜いたら足元をすくわれる」

「ギュンター、ですか?」

「ああ。関りを持とうとして来ても拒絶しろ。あいつがいるといろいろ面倒だ」


 前に、部下が殺されたことがある。冒険者ギルドの圧力を使って危険な任務へ追いやられた。俺の部下以外の人間も疑わしい人間が消されている。

 それに、あいつは部下にしたくない。俺を、正確には俺の部下たちを目の敵にしてるし、裏切るという予感がしているからな。


「ひょっとして、すでに接触があったか」

「はい……」

「気をつけろと言ったはずだ」

「ですが! ジャック様が追放されたと聞きまして。俺ならばギルド内にある程度影響力が聞くと。ニルス殿下にも一泡吹かせてやると」

「関係ない」


 ああそうだ。リアはこういう子だった。俺を絶対的に崇めすぎて、自分が役に立つんだという気持ちが大きすぎる。ゆえに、危うい。忠誠心は信頼できるが、それゆえに害ある行動を見抜けずに騙されそうだ。


「しかし、私は許せません! ジャック様を無能の金食い虫呼ばわりして、これまでさんざん頼りにしておきながら追放するなど! しかも処刑しないだけ感謝しろといったそうじゃないですか!」

「気持ちはわかる。だが落ち着け。それにそのことは関係ない」


 リアにも追放が偽装のことを話すか。そうすれば納得はするだろうな。だが、暴走しがちだし、危ういんだよな。スフィアとかリーベルは忠誠心も有能性も信じられるが、リアは忠誠は信じられるがコロッと騙されそうだ。あるいは、ポロッと漏らしてしまうかもしれない。俺はこんなにすごいんだと。それが簡単に裏切るような部下に知れ渡ったら。

 だめだな、リアにはまだ話せない。恐らく第二王子派を完全に排除する前に、俺がニルス側だということがバレる。その直前だな。


「しかし」

「それに、正確に言うならば俺はニルスの味方ではない。ニルスのパーティーメンバーのサラの味方だ」

「それも、恋人だと思えば反吐が出ると言われたではありませんか!」

「それでもだ」


 まあ、リアに話したのは本心なんだよね。ニルスの味方をしてたのは最初は冒険者として箔をつけるためで、途中からはサラが第一王子派だったからだ。サラが裏切るなら俺も共にする。


「俺は、サラを信じる。きっと、ニルスに言われて仕方なくそうしただけだって」

「ですが……」

「それにだ」


 たとえ何を裏切っても、部下たちを全員裏切ることになろうとも、サラに裏切られようともサラだけは見捨てないって決めたんだ。


「一度惚れた女の幸せを願わない男はいない。そうだろう? そのために協力してくれるか、リア」

「……わかりました。ジャック様の言う通りにします」

「それでいい」

「ですが、ジャック様はもう少し周りの女性にも目を向けていただきたいです。私、とは言いませんがスフィア様とか」

「耳が痛いな、考えておくよ」

「それでは失礼します」


 リアの台詞。ただ、俺の今の状態では応えるわけにはいかない。仮に第一王子が負けた場合、俺も首を切られるだろう。その時に、部下たちは巻き込みたくないからな。それをへたに関係を持ってしまえば、部下たちも道連れにしてしまう。まだ、好意は利用することしかできない。許せ。





 俺の変装技術は最高峰のものだ。例えば、ただの町娘にだって化けられる。鬘で髪を黒くし、少し化粧で女っぽさを出して服を女物に着替える。胸を少し盛ればそれで完成だ。身長が低いと女性の体格にも慣れるからいいよね。大きくするには詰め物をすればいいけど、小さくはなれないし。

 で、そんな俺が何をしているかと言えば、秘密裏にニルスに接触するためだ。武器の配達を命じられた鍛冶屋の娘という体で1番街にあるニルスの邸宅に潜入する。実際配達するものもあるしね。元々部下が配達予定だったものを俺が入れ替わったのだ。


「うむ、確認は受けている。入れ」

「ありがとうございまーす」


 元気いっぱいの女の声でニルス邸へと入っていく。まあ俺の盗賊技能を駆使して侵入してもいいんだが、驚かせるのもあれだしな。


「ニルス様、武器を届けに来ましたよー」

「ああ、いつもの場所に置いといてくれ」

「それじゃあ、入りますねー」


 素早く部屋の様子を確認する。どうやら、ニルスとエレナだけのようだ。紅茶を飲んでくつろいでいる。まあ、キールマンを討伐して帰ってきたわけだし、少しはゆっくりしたいか。でもちょうどいい。


「おい、置いといてくれと言ったはずだ」

「サラを呼んでくれ」

「っ!?」


 ジャックの声に戻す。


「お前、ジャックか?」

「そうだ。これからのことを話す。サラを呼んでくれ」

「ああ、わかった。エレナ頼めるか?」

「わかりました」


 エレナが部屋を出ていく。さて、これからのことを話さないとな。元々キールマンの討伐は予定がなかった。元々はニルスたちが王都に帰還したタイミングで根回しをしておいてことを起こす。その予定だった。まあ、根回しは制度が悪いとはいえ張り巡らせている。いつまでもここに滞在していると流石にリーゼンヌ砦の洪水のヴァルターも動くだろうからな。後は恐らくヴァイネスは西海岸にやってくるはず。


 って待てよ!? キールマン討伐は予定外の出来事だ。当然、ヴァイネスもミモザカートの混乱を期待していたはず。それが失敗した今、ヴァイネスはどうする? 決まっている。その失策を取り返すため、油断をしている今攻勢を強めるに違いない。

 完全に忘れていた。これじゃあだめだ、間に合わない。くそ。もっと時間的余裕があるはずだったのに。これじゃあ、間に合わないか。俺単独なら間に合うが、かなりきつい。


 ならば、新しいプランを考えないといけない。どうすればいい。簡単だ。ヴァイネスの計画を呼んだうえで教会派が動かないようにすればいい。ならば。


「ジャック! 元気してた?」

「サラか。ああ、こちらも順調だ。それにしてもよく俺だとわかったな」

「私がジャックを見間違えるわけない」


 少し頬を膨らませるサラ。かわいい。それにしても、サラはなぜか俺の変装を見破れるのだ。愛のなせる業かな。


「それにしても、本当に女みたいね。ちょっと嫉妬しちゃうわ」

「こいつの変装は、俺もわからなかったよ」


 まあ、声も変えていたし。どうやら変装が好評なので声も女声で通しますか。

 できることなら、もうちょっとサラと一緒にいたい。もうちょっといちゃいちゃした時間を過ごしたい。だが、現状そうするわけにもいかなかった。


「サラ、頼みがあるの。ちょっとこれから、別行動をとってもらいたくて。私ともジャックとも違う別行動、頼める?」

「わかったわ。必要なことなんでしょう?」

「ええ、後で2人きりになったら話すわ」


 敵を欺くからにはまず味方からだ。それに、詳しすぎる嘘は信憑性を欠くからな。


「それで、ジャック。俺たちを王都に呼び出した目的は何だ?」

「それね。それじゃあ、説明するわ。これから、教会派第三位、枢機卿シュテファン・フォン・ラインハルトを暗殺する」

女装少年は大好物です

ちなみにミドルネームのフォンは、教会から枢機卿に与えられるものという設定です

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