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青い魔女の通過儀礼  作者: 籠り虚院蝉
Ⅲ 百年の孤独と人間の玉響
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幕間i

 ──まさか出会(でくわ)すとは思っていなかった。


 一人残った喫茶店でもう一杯コーヒーを頼み、砂糖をひとつ入れて一口流し込んだ。まともに心安らぐ時間など少ないのだから、もっと甘い飲み物にすれば良いものを──苦笑いをしているのがわかった。


 彼女は変わった。あんなにも堂々と自分の考えている事を話してくれた事は無かった。表情だって彼女自身は気付いていないかもしれないが、僕といた頃よりだいぶ豊かになった。それに見ず知らずの人に話し掛けて困り事を伺うために近寄るなんて、今までの彼女なら絶対に有り得ない事だ。彼女は優しくなった。


 あの子に依頼をして正解だった、レティシア。


 きっとあの子がエルネスティーを変えてくれた。


 でも、あんなにも冷たい目をしたあの子が、どうして彼女を劇的に変える事ができたんだろう。あの子はこの町にはいないようだから報酬は要らないという事だろうか。それとも何らかが原因で、既に亡くなってしまったのか。


「ますますこの世は面白いな」


 生きていく価値がある。


 そうしてまたコーヒーに口を付けた。


 彼女は手紙に目を通してくれただろうか。もう一度会う日時も場所も、二人しか知らない場所だからよくわかってはくれているだろうが。


「殺すべきか、愛するべきか、共に生きるか、死に別つか……」


 そのどれも選べなかった自分の弱さを、今の彼女なら受け容れてくれるだろう。


 手に入れたカートリッジを確認し、再び懐に入れ僕は立ち上がった。

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