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青い魔女の通過儀礼  作者: 籠り虚院蝉
Ⅰ 青い魔女と記憶失き獣
15/77

幕間a

「知ってますよ。こいつについては、よくよくね」


「知っていたのか」


「昔の話です。ほんの些細な縁があった」


「顔見知りか」


「そんなところです。ところで、今まで何度も挑戦なされたと」


「聞かんでくれ。凄腕を幾度も雇ったが、魔女め。どんな手を使ったのかことごとく失敗に終わっているのだ。綿密に計画した手さえ無駄骨に終わってしまってな……金も精魂も寿命も尽きた。もう目的は果たせん。この混沌とした世の覇者となるには魔女の身体が必要だったのに……」


「残念ですが、その手の話にはとんと興味がない。昔の人間は自己の境遇に対して異常なほど感傷的(センチメンタル)だ。自分はそう思いますがね」


「できるか、できないのか」


「野暮は聞くもんじゃありませんよ」


「……それもそうだな」


「構いません。自分を知らない人間はよく使う言葉です」


「……」


「それで、本当に日時はこちらで決めていいんですね?」


「ああ。だが遅くとも今日から一ヶ月以内、必ず首を持ってこい」


「充分です……さあ、我々の巡り合わせに乾杯といきましょう」


「ああ」


「乾杯」


「乾ぱ──」



━━━━━━━━



「昔の人間はどいつもこいつも……死ぬ時にまでお伺いを立てるなよ……」


 手は下していない。


 老人はただ、眠りこけるように死んでいった。

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