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読んでくださってる方、お待たせしました!

瞬くんに自重させないと決めているので文章の長さがまちまちになって申し訳ない!

 フェリス。そこは色街と呼ばれているが、旅の拠辺よるべ坩堝るつぼの街、職人の街、賭博街など、様々な呼ばれ方のある多くの職種が集まる混沌の街のことである。

 昼夜問わず色事が盛んな点から色街と呼ばれるだけで、夢や希望や締観や切望や色欲などの様々な感情や思惑を持ってこの街を訪れ、定住する者が後を絶たない。

 人口の数は既に把握されておらず、華々しい一面の裏には貧民街スラムの姿も見受けられるので、お世辞にも治安がいいとは言えない。

 そんなフェリスという街に二人の男女、ボクとティエラが紛れて歩く。


「さて、この街については道中話したような感じじゃ。まずはお主は何がしたい?」


「怪しい街って印象しか持てない街によく案内するよな……まずはゆっくりしたいから宿があるならそこかな」


「うむ、任せよ」


 自信たっぷりに先行するティエラの後ろに付いていきつつ回りを見渡してみる。

 説明されていた通り、色々な服装の人が見える。

 鎧姿にも軽鎧、重武装と幅広く、かと思えばシャツと短パンのようなラフな格好や、腕捲りして鉢巻を着けたいかにもな職人姿の人もいる。

 そんな姿が男女問わずいる中、やはり目立つのは妖艶な服装の女性たちだ。

 胸元を大きく開けている服や、風が吹けば見えてしまうだろう丈のドレス姿や、脚をちらちらと魅せつけるようなチラリズムに特化したような服や、下着が透けて見える服の人までいる。

 武器にしているのが身体のどこなのか、服装からとてもわかりやすい。


「ふふふ、やはり男じゃのう。ほれ、あまり見ておるとすぐに連れこまれてしまうぞ?」


 目線が奪われているとバレて、ティエラにからかわれてしまった。


「い、色々な格好の人がいるなって思って見てただけだよ!別に他意はない……ぞ?」


「おうおう、そういうことにしておいてやろう。別に責めておるわけではないのだから、見たいなら見たいと言ってもいいんじゃぞ?」


「何だ、ティエラが見せてくれるのか?」


 イタズラめいた笑顔でボクをからかってくるティエラに、恥ずかしさをこらえながら反撃してみたが、


「ふふ、人目のないところでなら少しくらい見せてやろうかの?この、ム・ッ・ツ・リ、め」


「……ぐぅ」


 ニヤニヤとした笑みで追撃されてしまった……




 †††††††††††††††††††



 言い負かされたままさらに歩けば、【金の鎖亭】と書かれた看板の建物に着いた。

 文字も読めるようにしてもらっているようだ、と気付きティエラを見ると、


「ほう、気づいたか」


 鷹揚に頷く女神はそれだけで高位の存在という雰囲気を醸し出す。


「そうじゃ、こここそがワシらが力を発するに相応しい宿じゃ。価値の意味を表す金の、力をものとする鎖、中々強き言葉を持っておる宿じゃろう?」


 これはこちらの意図が伝わっていない模様。


「安心せい、食事も美味いらしいぞ。金もしばらくはワシに任せてもらって構わんよ」


 やっぱり伝わってない……けど助かる。


「金稼ぎはやっぱり早くしないとまずいよな、ティエラのひもになる気はないし」


「ふふ、ワシも奴隷は持つ気はないのでな、そうしてくれると助かるのう」


 奴隷って……え、ひもってそういう意味になっちゃうの?

 困惑しているボクを無視して宿に入ったティエラが手続きを手早く済ませてきた。


「ほれ、いつまでもぼんやりとしていると危険かもしれぬぞ?はよう部屋に向かおうぞ」


「あ、すまん。今行くよ」


 入った部屋はそこそこ広く、大通りが見える窓が一つあり、少し離れてベッドが二つ(・・)、鍵も内側からしっかり閉められるようだ。


「ティエラ、この部屋って……」


「二人部屋じゃが、何か不都合でもあったかの?」


「いやだって、男女なら普通は分けないか?」


 当たり前のように同室らしい。


「お主には伝えなければならぬことはまだまだあるし、一々別の部屋を訪ねるのも手間じゃろう?嫌だと言うなら変えてきてもいいが……」


「いや、そっちがいいならこの部屋でもいいよ」


 女性と個室で一日過ごすのは初めてだが、特にそこに問題はない。むしろ本来ならご褒美に違いない。


「さて、一心地ついたところで、何か聞きたいことややりたいことはあるかのう?」


「そうだなあ……圧文はまた試したいって思うけど、今すぐしたいわけじゃないし……そうだ、圧力がどういう風に使えるのかとか、ボクがどう扱えるのかとかは知りたい、かな?」


「ふふふ、ファルテイナに興味を持ってくれて嬉しく思うぞ。ワシに教えられることなら何でも教えよう」


 とても嬉しそうだ。こちらとしてもこの世界は気になることだらけだから教えてもらえるのはありがたい。


「さてまずは圧力についてじゃったな。これはこの世界の根本となるエネルギーのことじゃ。あらゆる事象を引き起こすには物質以外に力が必要じゃな?瞬の元の世界じゃと雷力らいりき、そちらでいうでんりょくというものが主体だったようじゃが、こちらでは全てそれぞれの力に変換して利用できるのじゃ」


 ふむふむ、自由に使える力で、様々なエネルギーとして変換して利用できる力か。とてもファンタジーな力で素晴らしい!


「じゃあ、その力を自由に使えれば属性を感じずとも圧文は使い放題というわけだな!」


「そうじゃ、何故瞬が属性を感じ取れぬのかはわからぬが、圧文を使いこなせておるのは先の龍で証明されておる。あとは圧力をどれだけ集められるか、貯め込むことができるかじゃ」


「集めるのと貯め込むのは違うのか?」


「少々ややこしいがの」


 簡単にはまとめると、圧文を使う時の他にもカッコイイことをすると圧力は発生するが、それをストックすることもできるらしい。


「じゃから貯め込んでおくと手早く何かしたい時や、圧文旋律の際に圧力が足りない時なんぞに便利に使える利点があるかのう」


「そうだ、圧力を貯め込むのは何か必要なこととか物とかあるのか?あと、発生する条件みたいなものがあるのかも知っておきたい」


 エネルギー垂れ流しで事象を発生させるというのもいいとは思うけど、いざという時に失敗とかしたくないし。


「そうじゃな、発生条件は主観的と客観的に見て力を感じる行動・発言であるか、じゃ」


 何だか曖昧だな……


「はっきりしないと思うたじゃろう?」


 苦笑いしながらティエラがこちらを見つめてくる。

 目を反らし辛かったので素直に頷いておいた。


「素直じゃの……まあ仕方ないかのう。こればかりはそう伝える他にないのじゃ。例えば……」


 そう言ってティエラがふぁさっと髪を広げる。流れる銀髪はとても幻想的で綺麗だった。


「これで圧力が発生したのじゃ」


「へ?今ので?」


 思わぬ流れで間抜けな声が出てしまった。


「うむ、ワシ的に圧を感じさせる行動を取ったつもりじゃ。お主も圧を感じ取ってくれたようじゃの」


 確かに、少しカッコイイと思ったが……


「そう、それが主観的と客観的な圧なのじゃ。片方だけが感じ取っても圧の力は弱いが、双方が感じ取る、もしくは感じ取れるであろうことで発生する力は強くなるのじゃ。試しに瞬の圧を感じさせられる、つまりカッコイイと思う行動を取ってみておくれ」


「フッ、面白いことを言う!我にかかれば造作もない!」


 顔に手を当て、指の隙間からティエラを見つめる!

 目が合ったと感じた瞬間に目を閉じ、そのまま腕を振るうと同時に背を向ける!できればマントやコートが欲しかった!


「う、む……素晴らしい!」


 ティエラに向き直ると、少し顔が赤くなっていた。このカッコよさがわかってくれるか!


「ここはよいところだな……!」


 感無量である。


「お主にそう言ってもらえると連れてきた甲斐があるのう」


 大きく頷いてくれるティエラはとても嬉しそうだ。ずっとにこやかだな。


「少々ドキドキさせられたが、これで圧力は生じておる。お主にもわかりやすくしてやろう。≪可視せよ、奔流は身に感じるだけでなくまなこに映し出されるべきである≫」


 ティエラが圧文を旋律すると同時に暗い雷のような流れが目の前に見えた。


「これは……!これが圧力か!闇のエネルギーというわけだな!」


「うむ、エネルギーは特色や属性で色に染まる時もある。此度は黒に染まっておったようじゃが、これこそがお主が今発生させたものじゃ」


「おお……これが、我の力……」


 黒の奔流が我が元を流れている。


「して、ここからが次の答えとしようかのう。先ほどの発生条件はこれでわかったじゃろう?次はこれを貯め込んでみようかのう。そもそも圧力は発生させた当人しか貯め込むことはできぬ。まあ圧文次第では絶対に不可能とは言わぬが、基本的には自身の力になる。そしてこれを貯めるには……」


 そう言ってティエラが我の手を取る。


「はぁあっ!?」


 突然過ぎて大声を出してしまった。


「手を取ったぐらいで騒ぐでないよ、大丈夫じゃ、悪いようにはせぬ」


 そう言って微笑みながら我が手を再度握り、


「これ、は……?」


 手のひらから球体が現れた。白いエネルギー結晶といえる物が突然、手のひらに現れたのだ。横に振っても逆さにしても離れる様子はない。


「これが答えじゃ。圧力はこれに貯め込むことができるのじゃ」


 改めて見ても綺麗なエネルギー結晶だが、どうやるのだろうかと少し掲げてみると、ずっと周囲に流れていた黒の奔流がするっと吸い込まれた。


「そうじゃ、そうやって貯め込むことができるのじゃよ、わかったかの?」


 これでティエラの実践的説明は終わったらしく、満足気な態度だ。


「圧力は自動的に貯まることはないのか?」


「特にそういったことはないのう」


 勝手に貯まると楽なのに、と思ってしまう現代っ子な我だった。

 むしろ試してみたらいいのでは?思いついたので、すぐに実践してみるのがいいだろう。


「≪我より生まれ出でる源泉よ、奔流は我が手に流れ集え、溜まりしは我が黒源こくげんたる圧の力、無意識の檻に集いてかしずけ!≫」


 未だにティエラの圧文が効果があったらしく、圧力の奔流が視界に映る。さっきと同じく我の周囲を奔流が流れたかと思うと、大部分が消失し、多少残ったものが手元にするりと吸い込まれた。


「おお……お主、何ともすごいことをサラッとしでかすのう……」


 ティエラが目を見開いて驚いている。


「これは……成功したのか?」


 よくわからないので、軽くポーズを決めてみることにした。

 足を交差し!右腕をくの字にして肘を突き上げる!もちろん手の甲は顔の前に!左腕は腰に当てる!決まった!


 瞬間、圧力が溢れ出し、そのまま手に吸い込まれる。


「多分、成功してる?」


 確認する方法がわからなかった。


「う、む……手のひらを上に向け、念じるがよい。【圧力発動】と」


 圧力発動、か……っと、


「結構簡単にできるんだな、驚いたぞ」


 さっきと同じく、手のひらにエネルギー結晶が浮かび上がる。しかし、


「このエネルギー結晶、さっきと色が違うな?」


 そう、先ほどの白とは異なり、今は赤く染まっているのだ。


「それは貯め込む総量で色が変わるのじゃ。実は貯め込んだ圧力は売買ができるのじゃが、その判断基準にも使われておる」


 新情報だ。ちなみに色は白、水、青、紺、桃、赤、黄、金、黒という流れらしい。法則性が変な感じだな。


「というか一気に色変わったんだな」


「それだけ先ほどのポーズが良かったわけじゃ」


 そう言って何度も頷いているが、どれだけあるのかわからないしな……


「そういえば総量も人によって変わるんじゃないのか?」


 ふと気づいたので聞いてみると、


「よく覚えておったのう、もちろん総量は人によりけりじゃよ。各色の限界値までしか貯められぬ者も多い。まあ瞬には関係ないじゃろうがのう!」


 快活に笑っているが、そんなものかね?


「さあ、せっかくじゃし換金してみようかの?色々試してもらいたいし、もうしばらくで夕食時じゃからの」


 そういえば、お腹空いたなあ

次回、ご飯の時間もぶれることなく!

何か間違いや指摘点などございましたらよろしくお願いいたしますー

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