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妖精とイタズラ②


 そして当然のように例のオーク討伐依頼が俺の担当となった。

 ため息をつきながら依頼書に書かれていたオーク出現場所まで歩いている俺はボッチだ。2人ともそれぞれの討伐に勢いよく行ってしまった。一人でやる意味が分からん。PTの存在が薄れている。アイツ等に協調性を求めるのも間違ってる気はするけど。


「しっかしオークなんて森奥に住む魔物だろ?なんでまた海沿いの町近くの森に出現するかねぇ」


 依頼内容もおかしいがオークの出現場所もおかしいのだ。塩水が苦手だって知識はあるんだがなぁ…。でも突然変異ってのも可能性がないわけでもない。行けば分かるか。


「えーと…」


 地図によるとここら辺になるな。辺りの木を調べると野生動物がつけた傷などはあるがオークや他の魔物によるマーキング的な傷はない。さて、どうするかね。


「のんびり探すのもアリだけど、あいつ等に奢らされるのもなぁ…」


 早く見つけて狩って帰りたい。

 俺は真っ黒なローブから手を出す。今の服装は見るからに魔術師といったもの。ローブの中身も似たようなものだが、この真っ黒ローブ刺繍で魔術陣がコッソリ細かく描かれているので防御力はかなり高い。中身は普段着でいいから楽なんだよ。

 そしてメインの杖は今から用意する。


 ローブから取り出した手をぐっと空中で何かと掴むように握り締める。すると光の渦が手を中心に広がり、パッと霧散すると何もなかったはずの手には1本の杖が握られていた。俺の身長より多少高いほど長い杖は薄い緑色を全体に帯びている。少し細身で長いシンプルな杖だ。

 ところがどっこい、このシンプルな杖は元々ただの木の棒だった。そこに魔力で魔術回路を焼き付けたのだ。薄い緑は全体に描かれた細かい魔術回路がうっすら発光している為であり、よっぽど近くで見なければ気づかないとんでもないウェポンだったりする。

 ちょっとした実験で作ってみたんだが結構使い勝手がいいので愛用している。先程までなかった手の中に現れたのはこの杖に持ち主登録という創作魔術を書き込んであるので何処からでも呼び出し可能な為。いや、これだけ長いと持って歩くの邪魔でしょ?何処かに絶対引っ掛ける自信がある。必要な時だけ呼び出してあとはお帰りって便利な魔術だよなぁ本当。頑張って作ったかいがあったわ。


「さて、と」


 大きさとは比例してこの杖は非常に軽い。地面から少し浮き上がらせるとそのまま再び地面へと杖先を接触させる。トンっと軽い音と共にブワリと風が広がった。


「北、なし。南、1、2…西、なし。東…3、4…」


 不思議なことをしてると思うが、簡単だ。魔術で風を飛ばして生き物がどの辺にいるか確認しただけ。魔物や動物、人間などは植物とは違う当たり方するから意外とこれでいける。

 検索の魔術も一応あるんだが…酔うんだよな、アレ。俺あんまり好きじゃない。


「んー…なんか南東方向に人が集まってるなぁ。PTか?」


 数は5、6人ってとこか。同業者なら近づかない方が互いのためではあるけど、何か気になる。


「…コソっと様子だけ見てみるか」


 気配遮断の魔術をかけると人の反応があった方向へと進む。

 すると話し声…というより怒鳴り合い?のような声が聞こえてきた。おいおい、いくら町が近いからって森の中だぞ?魔物が寄ってきたらどうするんだ。しかもこの声…恐らく子供だ。

 嫌な予感しかしないな。


 コソコソと茂みから声のする方へと寄っていく。

「バケモノ!」「偽者だー!」「殺せ殺せ!」となんだか殺伐とした声が聞こえてくるなぁ…逃げていいかな俺。

 ようやく見えてきた視界に移るのは子供5人の姿。3人と2人が向かい合い言い争っている。違うか…3人が一方的に怒鳴って2人が怯え小さくなってる。


「お前がバケモノなんだっって、魔物なんだってことみんな知ってるんだからな!だからオレ様親父に頼んでオークを殺してもらえるようギルドに依頼してやった!早く討伐されちまえ!」

「なっ…?!違うっ!彼はオークじゃないわ!」

「まだソイツを庇うのかよリジィ。バケモノを庇うなんて本当に馬鹿だよな。一緒に退治されちまえ!」

「そーだそーだ!」

「死んじゃえ!」


 あー…んー…その依頼ってまさかとは思うけど俺が受けたやつじゃないよな?

 オーク討伐受けたら人殺しの依頼だったとか…まさかな。親に頼むってことは大人の目が一応入ってるわけだし。でも何でオーク?2人組の方へ目をやると強い目を宿した少女が背後に少年を庇っている。

 ん?あの少年…



「混ざってんなー」

「うおっ!?」



 急に背後から声がして驚いた。ヤシャがいつの間にか後ろにいた。

 思わず上げてしまった声に慌てて口を塞ぐが遅かった。


「おい!何かいるぞ!」

「ま、まものか?!」

「逃げろ!!」


 あっという間に責めていた3人の子供達は逃げ出した。残された2人はこちらをじっと見つめている。逃げない?いや、逃げられない?


「よぉ。お前ら、こんな所で何してんだ?」


 判断つかねているとヤシャが茂みから飛び出し声をかける。

 というかアイツ、依頼終わったのか?…やっぱり勝負なんてするもんじゃない。


「…お兄さん、誰?町の人じゃないよね?」

「オレは冒険者ってやつだな」

「!!クリクを殺しに来たの?!」


 訝しげな顔から少女は怒りの顔つきになりヤシャを睨みつける。

 それを見て彼は楽しそうに顔を歪めた。あ、マズイ。


「いいねぇ気が強い奴は嫌いじゃな」

「子供を口説くな」


 言い切る前に杖で殴って止めた。こいつは気が強い奴をひねり回すの大好きだからな。老若男女関係なし。

 そして突如また増えた人物に益々少女は警戒を高め少年を抱え込んだ。


「なんだよコータ。嫉妬しなくともお前が一番」

「あーはいはいそりゃどーも。じょーちゃん、確かに俺は依頼を受けた冒険者だ。でも俺は“オーク”を退治する為に来ただけだから、“人間”を退治することはしない。安心してほしい」


 俺の言葉にピクリと少女と少年は反応した。もう少しかな?


「…彼はオークじゃないわ」

「半分人間だからいいんじゃね?」

「半分というか、混ぜられてるな。珍しいケースだ。じょーちゃん、その子とは友達?大丈夫、ここから先は近づかないし手出ししない。ちょっと話をしないか?」


 ヘラリと気の抜ける笑みを浮かべてみせれば物凄く胡散臭げな顔をされた。何故。


「…リシィ、もういいよ」

「クリク?!」


 胡散臭げな顔をした少女に腕の中から少年が声を上げた。驚く少女から離れた少年の顔は…酷く醜いものだった。

 目はギョロリと飛び出ており、口は閉じることが出来ないのか剥き出しの歯がガタガタ見えておりヨダレが垂れている。鼻は潰れたような形で大きく、顔全体は酷く赤い。確かに人型の魔物であるオークに似ている。目元と鼻かな。しかし目はしっかりと意思があるし、先程聞こえた通り話も出来る。


「ボク…殺されるの?」

「殺さないよ。君は人間だろ?」

「でも…こんな顔だし」

「不細工な顔の人間なんていくらでもいる」


 「ブサイク…」と落ち込んでしまった。すまん、口が滑った。

 おい隣の男、笑いこらえてんじゃねーよ。少女も睨むのを止めてください。




「それに、元からその顔じゃなかっただろう?」




 驚いた顔で子供達が俺を見た。

 おおイイ反応。じゃあもう1つ。



「妖精に、イタズラされたんじゃないか?」



読んでくださりありがとうございます。

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