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行動と予想外



「協力しましょう。他国とはいえ僕もこの学園の生徒です。妖魔などに好き勝手させやしない」


 一番早く協力を申し出たのはオヴァール王子。

 シュリが父と言ったせいだろうか。敬語な上丁寧な仕草になっている。真っ直ぐに俺を見てくる瞳は正義感に溢れている。若いねぇ。


「オレも協力する…させてください。こんな危ねぇの放っておいたら眠れやしない」

「わっわたしもっやります!」


 つられるようにギルベルトとウリエラが同意する。娘達は…この2人は最初から協力する気満々だな。


「俺は群のボスを見つけ出し始末する。ボスが消えれば他のドッペルゲンガーも能力が薄れ退治しやすくなるし、本物との区別がつきやすくなるはずだ」

「ボスの特徴は?こちらに来ていた場合、把握しておきたいのですが」

「胸だけではなく、顔以外に全身紋様が浮かんでいると文献には書いてあるな」

「それは分かりやすいわね。女子生徒はタイツさえはいてなければすぐ分かるからありがたいわ。気をつけなさいよ、ギルにオヴァール」

「ああ」

「任せてくれ」


 カナの言葉に男子生徒は強く頷く。さて、気を失っているレイトもどうにかしないとな。ルルチェに介抱させるか。いや、向こうにも影響が出ている可能性が高いな。一緒にいるビビは大丈夫か?



「ヤシャ、聞こえるか?」

『どうした?』



 俺と契約しているヤシャには離れすぎていなければ声が届く。頼むぞ。


「ナナとキュー…あと出来ればビビ達と合流して訓練場へ行ってくれ。場所は知ってるよな?そこに行けばシュリとカナがいるから、指示に従え」

『面倒な…まぁいいか。りょーかい』


 俺がそんなやり取りをしているとシュリが中心となり生徒達も行動を開始した。


「わたくし達も行きましょう。放送室を借りて皆を訓練場に誘導させないと…妖魔がいるとは言えないから、上手く誤魔化さないといけないよね。うん、頑張らないと」

「僕らは校舎を回って声をかけよう。怪しいやつがいたら拘束する。なるべく早く訓練場に合流出来るよう心がけるよ」

「レイトは…」

「ああ、俺が保護しよう。行っていいぞ」


 意識がない人間は重いし、足枷にしかならんだろう。俺なら安全な場所へ送れる。

 そう言うとギルベルトはじっと俺を見ると…深く頭を下げた。


「よろしくお願い致します」


 ………なんというか。

 印象が大分違うな。走り去っていくギルベルトの背を見ながら困った顔になる。どっちが演技なのか。どっちも本当かもしれないが、困惑するな。

 さて…俺もやりますか。


 握り締めた手を前に出せば何もなかった手に長い杖が出現する。愛用の長い杖だ。一振りし、感触を確かめる。問題ないな。

 後は…じーさんの知識によると、


「ドッペルゲンガーは魔力を本人以外から吸うと体内で混ざり合わず2種類の魔力を保有することになるってあるな…ならシュリ達の呼びかけに答えず訓練場に集まらない奴に俺の魔力を少しぶつけてみるか」


 そして紋様の確認…となるが女性だったら困るな。そんなこと言ってられないが。


「レイトは……うちに送るか」


 アカとクロに頼んでおけば客間に運んでくれるだろう。イタズラはされるかもしれんが…大丈夫だと思っておこう。




 行動を開始すると同時にシュリの声で放送がかかった。早いな。

 上手い具合に集まる理由をぼかしながら放送し、学園の中の全員が訓練場へ慌てず移動を開始するのが分かる。訓練場は広いから全員難なく入ることが出来るだろう。


 だが…群で動く妖魔だ。1人殺されたことはバレているだろう。俺は訓練場から最も離れた校舎から順に駆け抜けていく。こっちに逃げてきたり訓練場へ向かわない奴を疑う為だ。

 学園に張られている結界は学園長(妖魔じゃないことは確認済み)に頼んで最高レベルに上げてもらっている。学園内から出て行く心配はしてない。この結界破るほどドッペルゲンガーは強くない…はず。


 学園長…女王の依頼書見せて説得させたわけだが動揺しすぎてズラが完全にズレた。騒がしくした侘びにもっといいやつを贈ろう…。

 陣もほぼ壊したからなぁ…レイトのドッペルゲンガーと同じように空腹に我慢出来ず生徒を襲うやつもいそうだ。訓練場にはナナも行ってるから大丈夫だろうとは思うが。彼女の声には逆らえまい。


 杖を片手に校舎を走っていると、所々に気配がする。さて…結構多いな。これが全員妖魔でないことを願おうか。






**






「……おかしい」


 まさかの全員白でした。


 ドッペルゲンガーが1人もいない。訓練場もヤシャと連絡をとったが全員妖魔ではない上に生徒も全員集まっているらしい。あれー?群で行動ってじーさん知識にあるんだが…知識が間違ってたのか?進化したとか?

 でも陣のことがある。よく分からなくなってきたぞ。


 人が途方に暮れていると「いたーっ!」という声が背後から迫ってきた。


 振り返るとビビとルルチェだった。ビビは元気に飛んで来ているがルルチェは顔色悪く歩みが遅い。やっぱり影響は出てたか。


「もー!コータちょこまか動きすぎ!探す方の身になってよー!」

「悪い。まさか探してるとは…ルルチェ大丈夫か?」

「ううー…気持ち悪いですー…レイトに何かあったんですぅ?」


 ビビは一旦置いといて具合が悪そうなルルチェを抱き上げた。プラン、と小さく丸っこい体はされるがままだ。


「悪い、俺のミスだ。今は屋敷で休んでもらってる。ほれ舐めておけ」

「んぶっ…ってなんですかこの魔力量ー?!って旨ぁ…流石魔王の契約者…」


 ギルベルトを真似て指を魔術で軽く傷つけ口に入れてやった。血に含まれた魔力を喰ってルルチェの顔色はみるみるうちに良くなった。大丈夫そうだな。

 治り血はもう出ないのに名残惜しそうにちゅぱちゅぱ指をしゃぶっているルルチェを剥がしビビへ視線を向ける。


「それで何で俺を探してたんだ?」

「あ、うん。そこの悪魔が匂いの元発見したって」


 レイトのドッペルゲンガーか。本当すまん。もう処理し終わったわ。




「生徒じゃなくて教師だったんですよ。いくら匂い嗅いでも生徒に絞ってちゃ見つからないはずですー」




「………は?」


 今なんて言った?


「教師…?」

「そーそー。えっと…なんて名前だったかなー。んーと…コータを敵視してた…誰だっけ?」

「ミリスって名前のエルフ教師ですよ。妖精、それくらい覚えてて当然です」

「なによー!姿も消せない悪魔がエラソーに!」



「ミリス先生…?」


 あの、エルフの先生が?


 魔術陣を描いた?レイトの部屋に?レイトのドッペルゲンガーが描いたんじゃなかったのか?じゃあ彼女が…ドッペルゲンガーの、ボス?

 なにか引っかかる…が、無関係ではないだろう。話を聞くか。戦闘になる可能性もあるが、いくしかない。


 ギャーギャーじゃれあっている2人の間に割り込むとルルチェの首根っこを掴み顔を合わせる。


「な、なんです?苦し」

「ミリス先生は何処にいる?」

「自室にいるですよぉ~…中に入っていく所まで見送ったので間違いないです…ぐ、ぐるじい…」


 自室?というと職員寮になるが…あそこも人の気配がないか探しながら通り過ぎたはずだ。誰もいなかったが…気配を消す魔導具はある。そういったものにも感知するようにしてたんだけどな。

 …自室に戻ったように見せて別の場所に行っている場合もあるか。


「よし、2人ともついて来てくれ。力を貸してほしい」


 その言葉にビビは嬉しそうに、ルルチェは面倒くさそうな顔をしてみせた。



主人公知識はあるけどそのせいで振り回されることが多いです。

読んでくださりありがとうございます。

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