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最悪な答え



「女子寮は男子立ち入り禁止だから、コッソリ入ってね。こっち。この窓なら行けるよ」

「お、おう…」


 シュリの案内でウリエラの部屋へ行くことになった。昼間なだけあって人気はない。寮の管理人にはどう説明しても授業がある時間に生徒と先生がゾロゾロ女子寮に入っていくのはオカシイので内緒だ。

 …と、いうか……


「………」

「………」

「………」

「………」


 レイトはいい。俺が呼んだ。カナも…まぁ分かる。シュリが話したと言っていたし、気になったんだろう。

 問題はギルベルトだ。お前なんで来た?

 あとちゃっかりオヴァール王子もいる。こっちの目当てはまだ分かるんだけどなぁ。


 そもそも2人は俺達が何で女子寮に向かうのかしつこく聞きまくったのでシュリが絶対大人しくしていることと、誰にも話さないことを条件にした上で同伴中だ。

 しかし女子寮にこんなゾロゾロ男子が侵入していいものか。カナも呆れた目を向けている。皆無言で寮へ侵入し廊下を進む。シュリが人気がないことを確認し全員2階へと上がった。更に廊下を進み一番奥の角部屋で彼女は止まった。


 ノックを小さく4回する。どうやらここがウリエラの部屋のようだ。


「ウリエラ、シュリだよ。先生…達連れてきた」

「……シュリちゃん?待って、今開ける…」


 内側からガチャガチャ鍵を構う音がして、ゆっくりとドアが開く。そっと顔を覗かせたウリエラは相変わらず髪の毛の跳ねっぷりが凄いが、目元の隈が今日は痛々しい。怪我はないと聞いているが、精神的に参っているのかもしれない。相手ボコボコにしたって聞いたけどな。


 ウリエラはシュリの姿を見てホっとしたような顔をして俺を見て少し不安そうにし、その更に後ろにいるクラスメイト達を見て固まった。大所帯でスマン…。

 すると慌てたようにドアを閉めようとするのでシュリも必死に止めた。


「だっ大丈夫!みんな協力してくれるから!大丈夫だからっねっ?」

「で、でもこんな大勢…え?れ、レイト…君…?」


 そして一番後ろにいたレイトを見て目を見開いた。


「なんで…だって今、中に…え?」

「…その話もするから、とりあえず部屋に入れてくれるか?ここにいることがバレると、先生や男子生徒がマズイからな」


 パニックを起こしそうな彼女にそう言うとコクコク大きく頷かれ招き入れてくれた。…部屋広いな。7人入っても余裕あるわ。

 人目を気にしなくて済むようになり体の力を抜く。そして改めてウリエラを見た。少しだけ泣きそうな顔をしているのは、やはり目線がチラチラとレイトにいっていることからして混乱しているせいだろう。本当に襲ったのはレイトなのかねぇ…とりあえず、今俺達の傍にいるレイトは襲った犯人ではないと断言出来るが。


「襲われたって聞いたが、怪我はないのか?」

「は、はい。大丈夫です…」


 再びコクコクと頷いてみせる彼女を尻目にカナは部屋の奥へとズカズカ入っていく。おいおい。そして1つのドアの前で止まるとこちらを向いた。


「―…ここにいるわよ」


 場所からしてバスルームかな…さて。


「先に確認だ。昨日の夕方、ウリエラは寮への帰り道で男子生徒…レイトに襲われた為反撃。のち相手を無力化させ拘束し部屋に監禁。目撃者はいなくて、そのことはここにいるメンバーしか知らない。といった感じで合ってるか?」

「はい……」

「じゃあ俺からも。昨日の夕方、レイトの部屋に俺が訪れ授業のことで長話をしていたから犯行は不可能と言っていい。しかも、まだウリエラの部屋で監禁されているにも関わらず今日授業に出て現在もココにいる。そのドアの向こう側にいる男子生徒は…偽者、レイトに罪をなすりつけようとした奴である可能性が高い」


 ウリエラはハッキリとレイトだと言ったのだから、変装だったのなら相当上手いこと化けたのだろう。魔術で変化した可能性もあるがその場合無力化した時に解かれるだろう。あとは薬か…。薬は可能性低いけどな。あれは本当に一部の者しか扱えない禁薬だし。

 しかしレイトを犯人に仕立てる必要はどこにあるのだろうか。レイト自身も居心地悪そうにしている。


「ハッ、どうせ平民…」

「ギル喋んな。今どういう状況か分かんないほどの馬鹿なら、あたしは友人辞めるわよ」


 ギルベルトの言葉に被るようにカナが一気に言うと彼はピタリと止まった。そして悔しげに黙りこむ。…ほー。ギルベルトがカナを、ねぇ…。


「そこのオッサン。変な妄想すんな」

「オッサンて…」


 ギロリと娘に睨まれたので大人しくします…うん。

 改めてドアの前に立つ。中は静かだ。暴れないといいが…。一応生徒達には杖を抜いておいてもらうと、ゆっくりと開く。そこには……



 顔の原型が分からないほどボッコボコにされた男子生徒が縛られ、ぐったりとバスルームに転がっている姿があった。



 ………鬼かっ!!!


「ちょ、えええぇぇ…これ顔判別出来ん…というか生きてるのか?!」

「あ、あの…見た目派手ですけど、急所は外してあるので大丈夫、ですよ?」


 おずおずと言うセリフじゃない!ウリエラ怖い…怒らせないようにしようそうしよう……。


「…ともかく、逃げられないように…してあるから、治癒術かけて人相ハッキリさせるか。聞きだすにも起こさないと駄目だしな」


 それでいいかと皆に聞けば、全員が頷いた。若干1人渋々だったのは見ない。俺は見てない。そして男子生徒の怪我を治そうとした時、レイトが前に出てきた。


「先生。オレが治していいか?ここまでボコボコに…あ、いや、怪我してる相手を治療することなかったから、やってみたいんだが」


 せっかくだし、といった様子でレイトが聞いてくる。別に俺は構わないけど、そうだな…拘束したウリエラ本人さえよければいいだろうか?彼女に目をやれば「失敗してもいい相手ですし、いいと思います…」と小さく返された。いいって。失敗するなよ、絶対だぞ。そして場所を譲った。


 皆が見守る中、レイトが子守唄を歌う。フワリと魔力が漂い陣が描かれる。そこから溢れた光がキラキラと倒れている男子生徒へ降り注いだ。…?少し魔力が流れすぎてる気がするが…制御失敗したのか?


 降り注ぐ光と共にボコボコだった顔が癒されていく。そして…誰もが息をのんだ。気になったのか、普段から目を閉じているレイトもうっすら目を開き、驚き治癒を中断する。


 そこには、レイトの顔があった。


 魔術で変化している様子はない。では双子?レイトは幼い頃の記憶がないといった。血縁者とか、その可能性は……。

 倒れていた彼が目を開いたことで、その可能性はゼロとなった。




「レイト!!見るなっ!!」




 咄嗟に叫んだが、遅かった。

 バチンッと何かが爆ぜる音と共にレイトの体が倒れるのを抱きとめる。グッタリとした彼は意識がない。


 くっそ…そうか。そういうことか。何で気づかなかった俺。

 全部全部繫がった。あの謎の魔術陣も、彼の部屋にだけ陣が直接書かれていたのも。最悪だ。縛られ転がっている彼を睨む。睨まれた相手はレイトと同じ赤い目となっており、ただ俺を見返している。


「おい!どういうことだよ!平民のやつどうしちまったんだ?!」


 慌てたようにギルベルトが俺の肩を掴む。その衝撃に支えていたレイトの体が揺れて、ブラリと力の無い腕が垂れた。その様子にギルベルトが青くなる。


「し…死んだ…のか…?」

「生きてる。まだ、な」


 俺はそう言うと娘達に目をやった。2人とも杖をしっかりと構えている。オヴァール王子とウリエラも顔を強張らせながらも杖は下げていない。

 だから、この転がっているレイトの顔をしたヤツの正体を告げた。



「…こいつはドッペルゲンガー。1000年以上前に滅んだと言われていた、妖魔だ」



少し短めです。

次回から伏線回収となります。読んでくださりありがとうございます。

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