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契約者



 薄暗い中、ぼんやりと発光している魔術陣を見つめる。

 …生徒1人と繫がっていて、魔力を帯びているが発動しない。やはり直接見てもバラバラの式が書いてあるだけで効果も手がかりも無い。


「どうすっかなぁ…」


 図書館の屋根裏で1人ボヤく。カナが言っていた魔術陣を今調べたところだ。ナナ達が見つけた陣と一緒だな。なんでこんな陣を生徒に描かせたのか…目的がサッパリだ。


 ともかく予定通り陣を消すことにする。描かれている陣の一部を魔力で壊してやればいい。ただ乱暴にやると魔力が跳ね返って生徒が怪我するので慎重に。指を滑らせ魔力を流す。パチンッと何かが弾ける音がして陣は光を消した。


「…よし。大丈夫だな」


 完全に消えた陣に満足すると顔を上げ……って、誰?


「うぇぇー…魔王サマ直々に相手とか無理ですぅー」

「なんか飛んでたから連れてきたぞー」


 いやそんな…犬猫じゃないんだから…。


 ニヤニヤしながら屋根裏に現れたヤシャは手にぶら下げているものを俺に見せびらかすように差し出す。幼児としか言いようが無い丸いフォルムの子供。えぐえぐと涙に濡れた大きな金の瞳と背に生やした蝙蝠のような翼が特徴的な…悪魔だ。

 クルクルとした赤茶色の髪が更に顔を幼く見せる。悪魔だし、見た目以上の年齢だろうけど。


「なんか見えないのをいいことに学園内の生徒をクンクン匂い嗅ぎまくってたぞ、コイツ」

「それはぁ!ちゃんと理由があすんですぅー!」

「お前さん、レイトと契約した悪魔だろ?」

「なんで分かったんです?!」


 やっぱり。

 悪魔と契約した者はその能力を使用する時に瞳が金色に染まる。一瞬だけ見えたあの目の色は見間違いではなかったらしい。


「治癒の力を授けるってことは…お前さん結構強い悪魔なんだな」

「こっこの姿はレイトの器に合わせてやってるんですぅ!というか姿消してるのに何でワタシが見えてるんです人間?!」

「そりゃオレ様の契約者だからな」

「魔王の?!」


 悪魔の契約者同士なら悪魔を肉眼で見ることは出来る。まぁ相手との差がデカイ場合だけだが。魔眼でもいけるな。そういったモノを見る魔術も存在するからそう珍しいことでもないが、言ったとおり治癒の力を持っている悪魔は珍しい。恐らく上位悪魔だろう。レイトの年齢で上位悪魔と契約するとなると、よっぽど彼に才能があったか…もしくは契約に差し出したものが大きかったか。


「お前さん、レイトの何をもらって契約したんだ?」

「け…契約の話はいくら魔王の契約者でも教えないです!それにワタシにはちゃんとルルチェという名前があるんですぅ!」


 プイっと顔を背けられた。…ほっぺがプクプクだな。つつきたい。


「契約内容は確かに契約者同士の密約だから無理に聞かないが…生徒達を嗅ぎまわってた理由は吐いてもらうぞ?」

「う…」


 ビクリと悪魔の顔が引きつる。この容姿だと俺が子供をいじめてるみたいで嫌だな。


「レイトの命令か?」

「うぅ…」


 縮こまるようにして体を小さくしていく悪魔…ルルチェが可哀想になったので俺はため息をつくとヤシャに「離してやれ」と告げる。それに不満そうなのはヤシャだ。


「コータはガキに甘ぇなぁ。悪魔なんか見た目と年齢関係ねーのに…まてよ。オレ様もちっこくなれば」

「お前のその思考何回目だよ…」


 幼児化したヤシャの見た目は天使だったが中身が残念すぎたので罪悪感もなしに絞めた。このルルチェって悪魔も演技の可能性もあるが…まぁとりあえずレイトに話を聞くとしよう。






**






「………」

「…ごめん、レイト」


 しょんぼりしているルルチェを小脇に抱えてレイトの部屋へと訪れた。Aクラスなので1人部屋ではあるが…なんか他の部屋に比べて狭いな。ここにも平民差別があるのか。面倒な。


 突然の訪問に契約した悪魔を抱えられている事態に彼は暫く無口で固まっていたが「…どうぞ」と部屋へ招き入れてくれた。リアクション少ないな。ヤシャ連れてきちゃったけど良かっただろうか。

 おじゃましまーすとばかりに部屋へ上がりこんでドアを閉めると防音の魔術をかける。そして振り返ったら……部屋の中心で土下座している生徒が1人…ええぇぇぇぇぇええ?!


「悪魔との契約の件、黙っていてはもらいたい…!オレはどうしても治癒術を極めたいんだ!だから、」

「ま、まったまった!展開についていけん!とりあえず立とう!な?!」


 何で俺は生徒に土下座を毎度されにゃいかんのだ。必死に立たせようとすればルルチェも慌てたように「レイト~立ってよぉぉ~」と腕を引っ張っている。ちなみにヤシャは爆笑だ。


「というか…なんでレイトは悪魔の契約を黙っていてほしいんだ?」

「…オレの世話になった孤児院が、天神教だからだ」

「あー」


 この世界で悪魔と契約することは特に禁止されていない。だが宗教となると話は別だ。


 彼のいう天神教とは、天界を最も神聖なものとし天使を崇拝する宗教だ。そして反対の魔界と悪魔を排除しようとする結構過激な団体でもある。正反対の宗教もあったな。魔神教だったかな?

 天使は治癒の力が強い為、天神教は病院や孤児院などを経営している所で大抵奉られている。悪魔に対して以外はかなり善良とも言えた。



 だが、目の前にいるレイトは悪魔と契約している。天神教を崇めている孤児院出身でありながら。



 バレれば処刑。…というか私刑だよなコレは。そして彼自身だけでなく孤児院自体も私刑対象だろう。そしてそこにいる職員も…子供達も。


「…レイトはどうして悪魔と契約したんだ?」


 なんとか立ち上がらせることに成功し椅子に座らせそう問いただしてみる。他に座る所がなかった為、俺はベッドに座らせてもらった。ヤシャはそのベッドに寝そべっている。おいおい。居心地悪そうにルルチェはレイトの背中に隠れていた。


「…オレは気づいた時には孤児院にいたんだ。6歳くらいの頃にボロボロになって道に転がっていたオレを、当時の院長が拾ってくれた…らしい。オレはそれ以前の記憶がないからなんとも言えないんだが…」


 なんと。記憶喪失なのか。

 自分が誰なのか分からず、傷だらけの体だった子供を院長は受け入れ「レイト」という名をくれたらしい。まるで我が子のように可愛がってくれた院長に彼は懐き本当の父親のように思っていたという。そして…院長は病に倒れ亡くなった。


 お金はなかった。だが天神教に信仰を持っていた為治療を受けられた。それでも最高の医者を派遣されたわけではない。亡くなるまであっという間だったという。新しい院長は来たがレイトは酷く悲しんだ。そして前院長の部屋の遺品を整理している時、古びた指輪を見つけた。



「これが、その指輪だ」



 そう言って彼が自分の右手を上げる。それは以前授業で使っていた魔術の媒介のものだった。年季の入ったものだと思ってたけど、院長さんの遺品だったか。

 ん?真ん中の魔石に…陣が描かれている?


「ルルチェはこの指輪に封印されていた悪魔なんだ」

「へぇ…?」


 なるほど、とレイトの背中に隠れている悪魔に目を向ければ慌てたように目を逸らされた。封印されるって何やらかしたんだ。


「ルルチェは言ったんだ。願いを口にして自分と契約しろと。そうしたら自分は自由になりその願いは叶うだろうと」

「へぇぇ~?」


 じーと見えないルルチェに目を向ける。なにやらワタワタとした様子が伺えるが…うん。コイツもやっぱ悪魔だわ。

 悪魔は契約だけで願いを叶えることは出来ない。差し出す対価を得て願いを叶える。それを言わずに契約しようとした所からして…自分の都合のいい対価を貰って願いを叶えたフリしてトンズラしようとしたな。もしくは子供を喰って力に変えようとしたか。

 だが見た所レイトは契約したままだし五体満足。さて……


「願ったのは治癒術か」

「…ああ。治癒の力が欲しいと願った。魔力は元々あったみたいだからな。魔術の適正を全て治癒の方へ回してもらった。だからオレは治癒の魔術しか使えない」


 治癒術が使える人間は少ない。

 だからこの学園に治癒術しか使用出来ないにも関わらず入学出来たのだろう。Aクラスになったのは本人の努力だろうけど。


「レイト。お前さん…悪魔との契約に対価が必要なことを知ってたな?」

「ああ。昔院長に聞いたことがあったんだ。悪魔との契約の危険性を…だけどオレは…院長が死んじまった時の絶望を、身内がいなくなる悲しみを皆に味わってほしくなかった」


 そう言って彼は俺をしっかりと見た。赤い瞳は強い意思で言ってくる。この契約は望んだものだと。




「オレは、オレの全てを差し出すと言った。寿命がつきれば、この体も魂も何もかも、ルルチェに渡すと誓ったよ」



読んでくださりありがとうございます。

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