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VS生徒達2



「じゃあ昨日の続きから。呼ばれた人は自分の自信のある魔術を展開、発動してくれ。攻撃はあの的。防御系はその場で頼む」


 そして学園の講師をし始めて2日目。再び訓練場にまで来て生徒1人1人のクセや実力を見ることになった。ミリス先生は初回の激しさはなんだったのかのというほど大人しい。心境の変化でもあったんだろうか。


「先生!」

「お、おう。どうしたオヴァール王子」

「僕からしてもいいだろうか?」

「いいよ。どーぞ」


 そしてオヴァール王子は昨日の土下座事件のあとからこんな感じだ。好きで強い女の子の師というだけで尊敬の念がうっすら見える。え、ええー…切り替え早いなこの子。相当シュリに入れ込んでいるせいもあるだろう。

 あと、ギルベルトは嫌そうにしながらも授業に参加してくれている。ボイコットされるかと思っていたから意外だ。ちなみに本日は3人ほどボイコットしている。無理に受ける必要はないが、少し寂しい。



「光よ貫け!」

「お」



 オヴァール王子が発動したのは光の魔術で光線を飛ばすものだった。なかなかの威力で的に当たる。的は中心に10センチほどの穴が空いたまま立っている。しかも彼、新しい術式、賢者のじーさんの方の式でやってみせた。3連に並んだ陣を消し、ドヤ顔で見てくる。


「コントロールも威力も申し分ないな。しかしもう取り入れたんだな術式」

「先生の本は読んだからね。この方法は確かに楽だし連射しやすい。とっさの攻撃や兵士達に向いている」


 おお、そこまで理解してくれたか。

 流石Aクラスだな。上の立場である視点というのもあるだろうが…なら1つアドバイス。


「オヴァール王子は光魔術をメインとするようなら杖に金属で装飾をつけるといい。魔術回路を繋げればより自身の魔力を陣に通しやすくなるはずだ」

「何でもいいのかい?」

「そうだな…電気…は通じないな。鉄、銀、金、鋼くらいから選ぶといいぞ」

「ふむ…では金で飾るとしよう」


 そういえばオヴァール王子の国は金の産出が多かったな。多くつけると重くなるだろうから職人さんとよく話し合うといいだろう。


「じゃあ次。ウリエラ・ヒュランド。やってみてくれ」

「は、はい…」


 呼ばれて出てきたのは小柄でヒョロっとした眼鏡少女だ。黄色の髪がピョコピョコ跳ねていて、目は菫色。オドオドと落ち着かない様子を見せながらも、手に持っていた自分の身丈ほどの長さある杖を構える。



「風よ守って…!」



 彼女が願うように言えば魔術陣が完成し、その小柄な体を包み込むようにして薄い円方の膜が張られる。風の防御結界か…へーよく出来ている。


「全方面均一に魔力が巡ってるな。魔術も物理も防御出来る、か…ウリエラ君。どのくらいの時間保てる?」

「は、はいっ…もって10分くらいです」

「10分か。結構長いな。なら次は15分を目指そう。術式をもう少し変えた方が君には合いそうだ」

「分かり、ましたっ」


 ペコリと彼女はお辞儀すると魔術を解いてそそくさと生徒の列へ埋もれた。彼女…この国の騎士団長の娘らしいけどイメージ違うなぁ…。


「じゃあ次、レイト君」

「はい」


 スっと出てきたのはクセっ毛な黒髪、ギルベルトと似た赤い目を持つ少年。背は高く体は鍛えているのかガッチリしている。ちなみに平民だ。平民は魔術を習うツテがないからAクラスにいるのは本当に難しい。全学年のAクラスで彼が唯一の平民である。

 レイトの手に杖はない。代わりに右の中指にボロボロの指輪を嵌めている。あれが杖の代わりの媒介なんだろう。集中するように目を閉じ肘を曲げて両手のひらだけを上へ向ける。彼の口から零れてきたのは子守唄だ。


 歌詞のないただの旋律。だがこれが彼の魔術式。フワリフワリと優しい光が魔術陣を描く。それが一瞬強く光ると彼の体に吸い込まれるようにして消えた。


「治癒魔術か。珍しいな」

「…はい」


 目をゆっくりと開いた彼の瞳が一瞬だけ金色に見えた。…なるほどなるほど。


「先生。オレは治癒術を極めたい。それで孤児院の子供達の怪我や病気を治す医者になりたい。だから、もっと上手くなれるよう教えてくれ」

「いいぞ。まず、」

「はっ…大層な夢だな。平民のくせに」


 俺が答えるより早くギルベルトが吐き捨てるようにして言った。えぇー…。

 だがレイトは彼を一瞥さえせずただ真っ直ぐ俺を見て返事を待っている。ガン無視か。凄いな。


「先生。オレの治癒術はどう変えればいい?」

「無視すんなっ!平民のくせに!!」


 そしてもう一度問いかけてきてギルベルトに怒鳴られている。すると面倒くさそうにレイトは彼を見た。同じ赤い目が睨みあう。


「平民だから夢を見たら駄目なのか?お前は自分が貴族貴族とよく言うけどオレは貴族らしいお前の行いを見たことがない」

「なんだと?!」

「それにこの学園内で身分は関係ないと規則に書かれてる。今は授業中でオレが先生に教えを請う所だ。邪魔しないでくれ」

「ふざっけんな!!テメェ何様のつもりだ!!」

「アンタが何様よ」


 ドゴッといい音がしてギルベルトがしゃがみ込む。振り上げられているカナの手から察するにチョップされたか。あれ痛いよな…。


「何すんだよカナっ!!」

「うっさい。アンタがレイトに突っかかるのは毎度のことだけど次はあたしの番なのよ。時間取らせないで」


 そう言ってカナが前へ出た。カナはどうやらギルベルトと親しいみたいだな。まぁ同世代の王族と公爵家だし幼馴染ってとこか?知らなかったなぁ。今度詳しく聞いてみよう。

 確かに時間は有限だし、レイト少年に声をかけた。


「そうだな。今発動した魔術ならある程度の傷を治すことは出来るだろう。これ以上となると術式を弄るか医学の知識を頭に詰め込むしかないだろうな。歌っていう魔術式に混ぜるとなると難しいから…後で本を貸そう。役に立つはずだ」

「ありがとう」


 少しだけほっとしたような表情で彼は生徒の方へ戻る。ギルベルトが睨んでいるがカナに言われた手前我慢している。

 っと、次はカナか。さてさて何を…って、


「おまっそれっ…!!」


 カナが取り出したのは…俺が昔錬金術で作ったライターもどきだった。なんとなく作ったものだが完全に失敗作だったので仕舞っておいたんだが…いつの間に手に入れてたんだ?!ニヤリと笑みを作った彼女がライターもどきをこちらに向け術式を…やばいってそれは――…!!




「いっけぇぇぇえ!!」




 ドオォォォォォンンッ!!!




 視界が真っ白に染まり、爆音で耳がおかしくなってる。あのライターもどきは失敗作。なんせ、目の前の空間の魔力を全て取り込み爆発する。最初は魔術師でもない人間が使えたら便利だなーと軽い気持ちで作ったら屋敷の一部が吹っ飛んだ。それをカナはぶっ放したわけだが…。


「んー…イマイチね。まだ改良の余地があるわ」

「カナ…何か恨みでもあるのか俺に…」

「うっさいわねー殺傷能力なしで照明弾と音爆弾の合成魔術にまで書き換えるの苦労したのよ。試す機会がなかったけど、今回いい機会が巡ってきたと思ったのよね」


 稀に見るカナの満面の笑みだ。…嬉しくない。

 カナは錬金術の方に特に興味があるようでよく俺が作った試作品を更に改造したりしている。まさか失敗作にまで手を出しているとは…でもあの魔術式を殺傷能力なしでこうも光と音をでかく出来るのはやっぱ天才だな。カナならじーさんの次の賢者にまで登り詰めるかもしれない。

 だが…。


「カナ。そのライターは没収。いくら殺傷能力がくなくても強い光やデカイ音は被害が出る。ほら、皆びっくりしてるだろう」

「…びっくりというか、気失ってるわね」


 うん見事に…咄嗟に防いだのか、立っているのは数人だ。それでも目や耳を押さえている所から相当きていると思う。ビビやキューももだえてるし。この2人は五感強いからなぁ…。


「そもそも実力を見るための授業でそんな実験するんじゃない。城の方の実験室でやれ」

「あたし出禁なのよね」


 何やったんだオイ。

 ともかくライターは没収した。口を尖らせているカナにシュリが文句を言っている。「みんな倒れちゃったよ!カナも手伝いなさい!」とシュリが皆を介抱している。俺もとりあえず治癒術を発動させながら生徒を見ていく。…大丈夫そうだな。とくにオヴァール王子は気絶したフリしてシュリの介抱を待っている。…あ、ヤシャが行ったな。頑張れ王子。


「…ホードラーン先生」

「えっ?!あ、すいません。よく注意しておくので…」

「カナレル王女の持っている魔導具は先生が作ったんですか?」

「あーあれは知り合いが作ったものです。見たことがあったので驚きました」


 今俺はホードラーンとしてここにいる。オリジナルの魔導具はコータが作ったことになるから、ホードラーンが作ったわけじゃない。カナが改良したわけだし。屁理屈じゃないぞ。こんな危ないの作ったの先生じゃないから!

 冷汗ダラダラで微笑んでいると、ミリス先生はじっと俺を見つめた後…ふっと目を逸らした。


「…そうですか」


 い、意味ありげな顔されてもどうしようもないんだが…。


 困惑したまま、その日の授業は生徒達の介抱で終わってしまった。まともな授業が出来てない…。

読んで頂きありがとうございます。

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