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謎の魔術陣



「あのオヴァールのやつ1年の時、シュリに魔術大会でボコボコに負けてさーそれ以来シュリに惚れてんの。だからもう、なんていうの?アプローチが凄いのなんの…好かれようと努力してる時にシュリが恩師だって言ったアンタにイチャモンつけたわけだから、ああなったわけ」

「はぁーなるほど。シュリ美人だしなぁ」

「や、やめてよカナ。それは気のせいだよ。わたくしより強い人なんて沢山いるんだから…」


 夕食の為に外出許可を取り、娘二人とディナータイム。

 カナお勧めの店であるだけ料理も美味いし個室もあり店員の教育が行き届いている。金額はアレだが。これ見よがしに高いフルコース注文してるカナはご機嫌だ。うん、うちの子しっかりしてる。とほほ…。

 柔らかいフィレっぽいステーキを切り分けながら今日の授業を思う。


「でも…正直助かったな。シュリのひと言で大分俺の言葉を聴く生徒が増えた。ありがとな」

「シュリは魔術師として学年トップだからねー。その師となれば口挟めないでしょ。その師ポンコツだけど」

「お父さんは凄い魔術師なんだよ。なのに…あんな言い方して…知らずに物事を語るのは恥ずかしいことだってカナも言ってたじゃない」

「いやそれは知識の話。まぁあいつらが馬鹿なのは本当だけど」


 ポンコツへのツッコミはないのか?

 しかしシュリは本当優秀なんだな。学園内トップか。確かに魔力の扱いには長けている。彼女なら大人に混ざって実戦もこなせるだろう。カナも興味なさそうにしているが優秀だ。シュリより魔力は劣るが扱いは上をいく。だが本人が面倒くさがりで本を読むことが好きなので、実力を隠し平均を保っているらしい。俺に似たのだとクレイアが嘆いていた。…否定出来ん」


「授業は明日もあるし、仲良くやれればいいと思ってるさ。生徒達もヤル気になってくれてる子はいるし…ヤル気になってたよな?」

「さぁ?」

「大丈夫だよ。お父さんの話は面白いし、魔術も綺麗だもの。すぐ仲良くなれるよ」


 シュリの天使のような慰めに少しホロリとする。いい娘に育ったよなぁ…。天使。うちの天使だったら「調教すればいいのでは?」とか普通に言いそう。

 ワイワイと食事を楽しむと食後の紅茶を頂く。人払いをすると本題に入った。


「…それで、気づいたのはカナだったのか?」

「偶然だけどね。場所は図書館の天井裏よ」

「…偶然で見つけられる場所か?」

「うっさいわね。天井裏には古くなった本や卒業生が残していった貴重な魔術書とかが隠されてるのよ。見たことな本も多かったからたまに行って借りてくの」

「え、俺も行きたい」

「お父さん。本題からズレてる」


 シュリの注意に我に帰った。危ない危ない。でも後で天井裏には行こう。現場確認は必要だもんな、うん。

 コホン、と咳払いすると、それを見たカナが懐から1枚の紙を取り出した。


「後で実物見るだろうけど、コレ。一応模写したやつ」

「ありがとな」


 受け取りその紙を早速開く。描かれているのは1つの魔術陣だ。細かくしっかりと描写してくれたようで、分かりやすい。


「最初見つけた時は卒業生が試しに描いてみたような落書きだと思ったわ。でも、見たことのない陣だったし…」

「発動していた?」

「そう。淡い光が出ていたし魔力も感じた」

「わたくしも見に行ったけど、光ってたよ。だからお母さ…陛下に報告して、なら詳しい人を寄越すってなったの」

「詳しいっちゃ詳しいけど…まぁいい。この学園に何かあったら一大事だからな」


 他国の王子やら貴族やらが通っているのだ。何か起これば国際問題になりかねない。

 だからこその依頼なのは分かるんだが…


「なんで講師…別にコッソリお邪魔してコッソリ帰れば問題ないのに…」

「面白そうだったからあたしが提案した」

「お前かっ!!」


 まさかの娘の反逆だった。


「カナったらお父さんの授業受けられるって楽しみにしてたんだよ?なのに今朝照れ隠しに何でいるかなんて…」

「わーっ!わー!!」


 シュリの暴露に顔を真っ赤にして叫ぶカナ。あー…父ちゃん愛されてるなぁ。シュリと2人でニコニコとカナを見れば凄い目で見られた。…うん、本題に戻ろう。


「確かにこの陣は学園側が用意したやつじゃないな」

「どういった魔術なの?」

「…うーん、それがな。魔術の効果が出ないようになってる」

「は?何それ」

「どういうこと…?」


 2人の疑問に答えるべく、紙を机の中央に広げると指を指しながら説明する。


「魔術陣の中には魔術式で発動内容…つまりどんな現象を起こすか読めるようになってるのは知ってるだろ?まぁ式は人それぞれだから解読が難しいが…ここは古代語…西の国のものだな。その文字で書かれてるから読みにくかったとは思うんだが…書いてあることが滅茶苦茶だ。だが陣としては発動してる」

「つまり?」

「材料もないのに料理しろーって言われてるもんだ。無駄に魔力が消費されてるだけ…発動だけしてるってのは凄いがな」

「ちなみにちゃんと効果あったらどうなってたの?」


 書かれた文字をなぞる。ここが、一文が1つ2つ3つ…それ以上はない、か。


「そうだな…リラックス効果と眠くなる効果と…少々の癒し効果だな」

「平和な内容だね。でも…発動してるなら術者がいるはずだね?」

「ああ。いかに無害な魔術陣でも許可がなければ学園内の設置は許されない。見つけ出して説教だな。明日図書館に出向いて魔力を見てみるよ。魔力が注がれてるなら書いた本人と?がってる…はず」

「曖昧ねぇ…」


 カナの呆れた目線が痛い。仕方ないだろう。?がらず送る方法もあるんだし。生徒が出来るとは思わないが生徒じゃない可能性もあるしな。

 ともかく問題の方は早く解決させないといけないな。あと授業。俺1カ月も無事にやってけるのかねぇ…。






**






 屋敷に戻ると制服姿から何故か女医さん姿にコスチュームチェンジしているナナに出迎えられた。


「お帰りなさいませ、マスター」

「ただいま…別にいいんだけど、何でそんな格好?」

「マスターがお疲れの様子だったので医者コスです。お好きでしょう?」

「好きだけど!…違う意味で取られそうだな」


 いや別に女医さんとどうこうな関係になりたいわけではないが…男なら好きでしょう。ピチピチのタイトスカートに白衣は。ナナが似合いすぎてて文句出ません。く…網タイツにピンヒールとか最高か。


「マスターの好みは把握しておりますので。ご息女達との夕食はいかがでしたか?」

「ん?楽しかったよ。久々に会ったけど元気そうで良かった」


 実の子ではないが家族だ。慕ってくれる子がいるのは嬉しい。だからこそ…彼女達が通う学園を守りたい。


「ナナ」

「はい」

「何が分かった?」

「学園内に数十箇所。記録にない魔術陣が設置されていました。どれも出鱈目で発動はしていますが魔術の発現はしていません。魔術は微弱ですが流れ込んでいます」

「だよな…面倒なことになった」


 魔術陣自体に脅威はない。魔術が発動したとしても危害にならないものばかりだ。だが、陣は微弱に魔力を吸い上げ続けている。

 それはマズイ。


「特定は?」

「ヤシャとキュスルが追いましたが、全員バラバラでした。そして白です」

「そうか…2人が無理なら俺も無理だな。カナ達の手前強気なこと言ったけど…」


 ふぅ…と頭をかきながらカナが模写してくれていた陣を思い出す。わざと術が発動しないようバラバラの術式が組み込まれた陣。それが発動し続けるということが異常だ。魔力が注がれ続ければ魔力が枯渇し最悪命に関わる。マナに干渉させれば出来ないことはないが、この陣では無理だ。そして学園内には数十箇所似たような陣が描かれていて全て発動中。1人の人間がしていたら命を落としていただろう。だが1つ1つの陣の魔力が異なっているという。つまり、全部違う人間…生徒達が似たような陣を学園内に描いているということ。しかも、無意識に。


「全員白ってことは…この学園に入学出来るほどの魔力を持った生徒複数を気づかれず操り陣を描かせたとんでもないヤツがいるってことになるなぁ…」


 こりゃ面倒な予感しかしない。しかし魔力を陣に奪われ続けている生徒達はピンピンしている。ほんの少ししか注がれていないのだろう。だが…これが一気に何らかの手で陣が完成され魔術が起動され続ければ枯渇する生徒が出てくるかもしれない。


「明日は手分けして魔術陣を消してくか…でも何でこんなことしてんのかね…目的が分からん」

「ただの愉快犯かもしれませんよ?」

「そうかもしれんが…なーんか嫌な予感がする」

「マスターの予感はよく当たりますよね」


 当たってほしくないけどな。


「明日はヤシャとキューには陣の破壊を頼む。ナナとビビは生徒で西の方の出身のやつをリストアップしてくれ」

「分かりました」

「俺は明日の授業の予習と出来かけの原稿してから寝るわ」

「診察します?」

「いや、プレイは遠慮します…」



読んでくださりありがとうございます。

主人公は足フェチです。

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