ある日森の中、
目が覚めるとそこは知らない天井、などというレベルではなく見知らぬ森の中だった。意味がわかりません。
とりあえず身体に異常が無いか確かめる。着崩れたスーツに鞄、財布なんかも確かにある。スマホは大丈夫だ。ハンカチティッシュ、仕舞っていたネクタイなんかもあるからまったく問題無いと思う。
では周りはどうだ?見覚えのない森だ。少なくとも自分の会社の近くや帰り道にこんな辺鄙なところはない、はず。
誘拐の可能性も少ないはずだ。そもそもこんなところに置き去りにされる意味がわからん。
最後の記憶は先輩との帰り道だった。そうだ、先輩はどこだ?いつも気障ったらしく微笑むあの妙に小憎たらしい先輩は。いまどこに?
もしかして一杯食わされた、とか?
いや、あの人に限ってそんなことはないだろう。
知り合いにゲームと称して酔って意識のない相手を県外のホテルに押し込めて先に戻って来れた方が勝ちという、陰湿極まりない虐めをされたやつがいたが少なくとも先輩はそんなことをする人間じゃない。これは断言出来る。
とにかく意味不明な状態から早く抜け出るために、俺はとりあえず周りを散策してみることに。すると意外にもしばらく歩いているとかすかに人の声が聞こえてきた。俺は喜び勇んでそちらへとダッシュしてみるとそこにはなんとも不思議な光景が広がっていた。
「ほ?」
外人さんだ。外人さんたちがクワ持って談笑していらっしゃった。Hey S○ri、ここはいつから外国になったんだい?わかりません。
意味不明な状況に俺も外人さんたちも硬直してしまった。しかし驚いたことに何故か外人さんはにへらと笑うと俺に声をかけてきたのだった。
「あんれまぁ、タカトくん。そないなところでどしたよぉ。」
遅らせながらも俺の名前がここで初登場。俺の名前は鷲上高人。平凡な会社員だ。しかし何故彼は俺のことを知っているのか。
よく見れば外人さんたちはみな一様ににへらにへらと笑い俺に親しい雰囲気を出していた。意味不明。なにこれ怖い…。
「や、えっと、森で迷っちゃってまして……。」
残念ながらコミュ障な俺にはこれが精一杯。むしろどうしろってんだ。第一村人発見!ってしたところにこれだぞ。混乱しない方がどうにかしてる。
そんな俺に気を使ったのか、一人の外人さんがとある方向を指差して村の方向を教えてくれた。ありがとうございます。
「今度は道に迷っちゃダメだよぉ。あぁ、それと教会でシスターさんがタカトくんのこと呼んでたよぉ?はよぉ行ってやんなさい。」
「ありがとうございます……。」
とりあえずは教えられた通りに村へと向かうことに。しかしあの人たちは誰だったんだ?先輩の知り合いか?いやしかしそうだとしても訳がわからない。しかもシスターが呼んでいるってどういうことだ?知り合いにシスターなんていないぞ。
ダメだ、頭が痛くなってきた。
この意味不明な状態を早く脱出する為にも、俺は駆け足で村へと向かうとした。