雑な導入なんすけど……
ハロー、全国のヲタク諸君。
突然だが、君たちは異世界転生やら異世界転移に憧れたこおはあるかい?他にも例えばある日突然不思議なぱぅわーに目覚めて世界を救う戦いをすることにー、なんて夢を見たことは?
いや、皆まで言う必要は無い。こんな小説を読むくらいだ、そのくらいあるだろう。
あることを前提に話を進めよう。
これは俺の、なんてことない会社員が異世界へと飛ばされてなんやかんやと巻き込まれる、そんなありきたりな、でも俺にとっては特別な物語だ。
さて、前置きはこのくらいにしておこう。
話は俺が異世界へと飛ばされる少し前に遡る。
年末決算がやっとこさ終わり、その日は会社の忘年会が開かれた。雪の降る、綺麗な夜だった。思い思いに皆飲み食べ騒ぎ、二次会、三次会を経てそろそろお開きという頃、俺は仲の良い会社の先輩と仲良く飲んでいた。
「故に、最近のラノベは異世界ブームとなったわけですねぇ!先輩、わかりましたかぁ!?」
普通、会社の上下関係で先輩という言葉を使うことは無いのだが、うちにいる海外から日本に来たこの上司は先輩という言葉に憧れていたらしく曰く「先輩という言葉は日本の萌えが詰まっています。その文化を、少しでも私に味あわせて頂きたいのですよ。」とのたまった。
何故野郎が野郎に萌えを感じるのかは意味不明(ホモではないと信じたい)だが、少なくとも今はオタク仲間ということで仲良くさせて頂いている。
しかしこの上司がチート臭かった。眉目秀麗とは彼のことかと本気で考えたほどだ。世にも珍しい金髪碧眼とどこの王子ルックスだと思えば、運動神経も抜群とこれは生まれる時代を間違えた人だった。いや、今でも超人気なところを考えると間違ってもいないのか?しかし同性たちからは嫉妬の眼差しで見られていることから現代のイケメンは大変だと思う。
どうか俺にまで被害が及びませんように。
まぁそんなこんなで仲の良い先輩と宴会が終わるまで駄弁っていると、どうやら俺はいつのまにか潰れていたらしい。気がつけば先輩に肩を貸してもらい帰り道を歩いていた。
朦朧とした意識の中、呂律の回らない口でなんとか謝罪と感謝の言葉を口にすると、先輩はいいよいいよと微笑んだ。
くそぅ。モテるわけだ。
こんな人になら掘られても良いかもなとか馬鹿なことを考えていると、先輩は不意に可笑しなことを言い出した。
「君は、本当に異世界があると思うかい?」
「ぅぁ…?ぁー、あったらいいなぁとは思ってますよ。」
「君が言うような、素敵なところじゃないかもだよ?」
「うははは。じょーとーっすよ。スーパーパワーで駆け上がってヒーローっすよ。らくしょーらくしょー。」
「あは、君は愉快だね。なら異世界に行けるとしたら、行きたいかい?」
「もちっす。」
俺は対して考えもせず返事をし、最後にサムズアップまでかました。これが、人生の転換期になるとは思いもせずに。
「あはは、なら行こっか。異世界へ。」
「ぅぃー。ごーごーごー!」
その日俺は、日本から、世界から姿を消した。あまりにも呆気ない、物語の始まりだった。