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第八十話 特別な旅・・というと?
中村は中学時代にシニアの監督から言われた言葉を思い出していた。
「監督。」
「どうした、太田マネ。」
「山口くんの肘は治るんですよね。なのになぜ決勝戦を山口君に見させないんですか。」
「それは監督として責任があるからだ。」
「川中君との約束が念頭にあるのではないでしょうか。」
「さすが、選手の感情をグローブで読み取れる程成長したか。」
「茜くんのこともある。とにかく山口は後半年間は投げられない。回復したとはいえ茜君をここまで疲弊したこともやはり責任を感じている。」
「彼も今は山岸さんとも顔を会わせようとはしません。」
「彼のことだ。やはり今後、相談は担任の先生か、私にするべきだと言っておこう。」
「それに山口君と茜君、山岸さんには特別な旅が待っている。」
「特別な旅・・。というと?」




