第八話
もちろん、尊敬している人も多い。
桜の中 夏が来る前 白球を追いかけ降る梅雨の雨。
「山口君って詞もかけるのよね。」
「いや、僕は身体に合わせて一緒に呼吸するように文章を読み上げるんだ。鍛えるというのは同じだよ。勉強だってスポーツだってルールがあるだろ。」
(この人、プロ行ける・・。)
茜は驚いた。人生を生きる教訓を知っている茜として支える側のやさしさがこみ上げる、そんな季節だった。
そんな中でも今日も茜はコーヒーカップをみがく。
「ブラジル産・・・。」
翌日、たまたま部活が休みになり、山口は喫茶店に遊びに来た。
「ここの絵画は1800年ものですね。」
「わかります?・・君はすごいな。」
茜は驚いた。山口には絵画を見る目もあるのか。
「さっ山口君、コーヒーを。」
「あっありがとうございます。」
山口は笑顔になった。中々来れない日々で、マスターから飲み物が味わえるとは・・・。しかし、コーヒーか・・。
お茶やスポーツドリンクになれた山口が、コーヒーを味わう・・。
茜はその様子を見ていた・・。
「安定した成績を残すのは、140キロの登板で5回、球数が120球。それを持続するのが、このコーヒー豆。」
「感覚とトレーニング・・。」
山口が店長に言った。
「豆もスポーツも育て方だよ・・。」
「うまいな。」
「それを紹介してくれたのも茜だものな。」
「横浜まで行かせてラーメン食べさせるわけにいかないだろ。」
「はは。おもしろいな。」
山口も微笑む・・。
野球部員とは意味があってしみじみ話していると茜は知っていた。しかし、それを言うつもりはない、そこには見え隠れする疲労や、不安、プレッシャーの中で遊びに来てくれたのだ。
同級生と言えど客である。
「いやいや、康太君、2戦5回一失点とはいい成績じゃないか、甲子園見に行くからな。」
「まだまだ、背番号11ですから。」
・・一年生で?・・。
「しかし、上手いですねえ。マスター。野球を感じます・・。ホント。」山口は言った。よくしゃべる・・。




