第七十三話
「野球は俺達を繋げる。」
「奴が怪我する前に・・。行ってくる。」
「相馬君も呼んだら。」
「待ち合わせをする時間はない・・相馬には甲子園で会うことを伝えておいてくれ。」
「行ってくる。」
中村の妹、真樹は中村を送った。
康太のメールを送られてきた相馬が転送した画像に中村はユニホームの山口が笑っていた。
「俺はこの試合の後、投げられなくなるかも。」
写真の下に康太の言葉が書いてあった。
(知らなかった。・・でもこのメッセージを見ないでお兄ちゃんは甲子園に行った・・。)
「俺達は仲間だから!」
北海道に父の転勤で千葉のチームに行ったとき、仲間がくれた言葉だった。
「小学生の仲間だって、本当は時間が経てば登板の苦悩を探す笑顔の怖ささ。」
「でも、信じるんだ。」
山口は北海道にそんな言葉を送っていた。
「怪我も承知で右足にしびれが出てると・・。」
カメラの後、記者は言った。
「足に?」
スタンドの奥に消えていく、記者を見て、北海道のチームメートは唖然としていた。
「いいから、試合を見るんだ。」
北海道ホエールズ、中学野球で甲子園を見に行っている監督は言った。
「わからない・・。ただ、昔の仲間とはそういうものなんだぞ。」
北海道ホエールズの監督は選手に言った。しかし、この監督が坂下高校に投球をやめさせるよう言ったのは・・言うまでもない・・。
山口はグローブを見ながら思った。




