第六十三話
「今は怪我も治る時代なんですよね。」
「定期的なスポーツカウンセラーを坂下高校は持っている。」
「しかし、助言を行うのはベンチだ。本音を言えばあまり、山口自身は今の状況では期待していないだろう。」
「余りどころがないということですか・・。」
「そんなことはない。」
「彼にはそれだけの能力がある・・。」
「大丈夫、この二人は記事にしないって決まっているから・・でもよかったな、前店員のわしいさんの代わりに素敵な甲子園ヒロインができて。」
「じゃあ、野球ボールと即席ラーメン発売決定記念のポスター持って。」
「はいっチーズ。」
「なんでそうなるの・・。」
シャッター音が鳴る。
今まで天気の心配はなかったが、夏にあるのは真夏に飲むラムネの存在だけではない。それは、天候である。
空気の流れとは恐ろしいものだ。甲子園で活躍した選手は秋風、その冬の寒さを教えてくれる風で勝負は人々から忘れられる。甲子園の魔の風が吹いて決まっていた勝負も同様に。
真夏の風が兵庫に吹きボールの握りかたを天候により少しカウントを取りに行くトリックピッチング、スプリットを交じえる、イメージトレーニングも、昨日もにわか雨があった甲子園の試合をテレビで見返し山口は思っていた。
生で中継を見るか・・疲労回復のため、宿舎で選手と話すか・・。
答えは一生でないだろう・・。




