第五十六話
相馬は弟に言っていた。
23球目、汗をかく川中。
「坂下高校2点先制され、3回の裏に試合が向かいます。」
「山口。」
監督が山口を呼ぶ。
「行けるか。」
「・・はい。」
三回裏の攻撃中に冷蔵庫からスポーツ飲料を飲みに行く中村。
「四回の表、ピッチャー代わりまして山口君。投手の川中君、ライトに回ります。」
マウンドへ小走りに向かう山口。
・・。
「山口、三回目の首ふりです。」
「打球はセンター前ヒットになりそうです。」
(スライダー。)サインを出す上田。
(首を振る山口。)
(スライダー。)サインを再び出す上田。
(頷く山口。)
「また、ヒット、ノーアウト一二塁。」
「しかし、この二人の打者の7球、スライダーとストレートのみ・・。あれだけよいフォークを前回の緊急登板でも投げた山口・・いったいどういうことでしょう、また首を振っています。」
「フォークのサインが出ていないようです。」
「センターにぎりぎりボールが落ちる。」
「なんと、ノーアウト満塁!!」
「16球フォークをキャッチャーの上田、山口に投げさせませんでした。」
「すごい駆け引きですね。」
「小川先輩・・、山口君にフォークを投げさせないようですよ。」
「そうなるか・・。」
茜はしっかりと答えた。こういうときのための観衆なのだ・・。アルプスが応援しなくて誰が応援するというのだ・・。
試合が続く限り、俺は、バッテリーの・・いや、チームの仲間だ・・。




