第四十九話 甲子園試合開始
しかし、この40日後、山口はこの夏を何度も思いださせる苦境、体の故障を抱えてしまう。
「第一回戦、坂下高校対ましたか高校。」
「強豪だわ。」
太田マネージャーはそう言い、同じころアルプススタンドでも山岸が茜の隣で言った。
「この組み合わせ、すごくアンラッキーでした。」
山口はプロになっても15年同じことを言った。
「一回表、坂下高校。一番ショート坂下君。」
「偶然です。」
監督は事前取材でそう答えた。
坂下高校一回戦、一回表は得点0だった。
「先発ピッチャー2年生飯田君。」
今日は晴れていた。
「ストレート、スライダー、フォーク、スライダー2。」
投球練習をする飯田。隣には先輩中川もいる。
「すごい、この風、二番手が困るような風してますね。」
山口はベンチでそう言っていた。
「坂下高校、飯田、全てスライダーでボールワンを取り、三者連続三振!!」
アナウンサーが実況する。
・・。
茜は無言で試合の様子を伺った。それは山口も同じだった。
「このままだと。」
千葉ライアンの同期、相馬は思っていた。
「山口。」
監督が呼ぶ。
「はい。」
「行けるか。」
「無理はしなくていいぞ。」
「さっきのスライダーで分かりました。」
「頼むぞ。」
飯田はベンチの奥へ向かった。その顔は悔しさのあまり少し泣いていた。




