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第三十五話
指揮者の指揮が一瞬止まり、そして、また、腕をあげ、ミュージカルのあの名曲が、決勝まであと一人というところで流れ始めた。
「来ました―、今演劇界で注目される話題のいとこに、坂下高校吹奏楽部が甲子園まで封印していた曲を流しております。」
驚きでセンターを見る山口。
帽子のふちをさわる・・。
一球入魂・・。
キャッチャーがマウンドへ行く・・。
「さすが、一年生にマウンドを任せ、マウンドへ助言するキャッチャー・・上手くやってくれる・・。」
「一球入魂。」
「今、キャッチャーの小川が、何か一言言葉を掛けます・・。」
「一球入魂と言ったようですね・・。」
そう考える余裕を持った。
キャッチャーの方に振り返る。
笑顔で頷く、キャッチャー小川・・。
「山口くーん。」
山岸が珍しく声援を送った。




