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第二十九話
「いいコーヒー持ってるな茜君。」
「美術館行ってきた?」
「えっ行きましたよ。」
「東京なんて一日じゃ回り切れないよな。」
「なるほど、山口康太の取材組の回し者ですね。」
「さすが、茜君は視点が違うな。」
「彼女撮らないでくださいね、高校生の生活を無断で掲載するのは、この学校の野球部で止めておいてください。」
「そりゃ、法律にも、それ以上の場面だって考えられるからね。アルプススタンド以外で。」
「さすが、記者ですね。」
「試合開始まで後5分です。」
「さー始まるぞ。」
「ミーティング、僕見て初球狙い撃ち、僕見て3回無失点、僕らを見ている甲子園へレッツゴー。」
「変わった掛け声ですね。」
「先発ピッチャー、山口、山口康太君。」
マウンドまで小走りで走る山口。
マウンドに登りキャッチャーを見て少し右肩を回してみた。
「なるほど、こういうことか。」茜は言葉にした・




