第二十四話
キャッチャーの動きを見ながら茜は思った。
「指先までの血行が行き届いていると考えられるわ。身体の動きでわかる。バットを振り切っても、2歩目でちゃんと走る体制を獲れている、しかし、山口君は私の目からいえば他の選手の3分の2の量で済んでいる。」
「さすが、模写全国3位の実力ですね。」
茜は山岸に言った。
「ありがと、でも甲子園に行くとなると。」
「あー、茜君、インタビューお願いしたいんだけど、もちろん単独で。言っておくけど、インタビューでも取材扱いだから仕事になるよ。」
「寮にはルールで金銭の所得制限がありますからね。また、実家に送金か・・。」
「まあ、そう言うなよ。山口君の活躍あってのことなんだから。」
「学生なのか、それとも社会人なのか・・。」
茜はたじたじした。
その人物は環境省の表彰の時からこの夏までお世話になっている、公共放送の記者だった。
「よかった、公共放送で、・・茜君またね。」
そう言って山岸は球場から離れていった。
・・いい人だ
「それで、今回のピッチングで学んだものは何ですか。」
記者の質問に答える山口。
「えー、高校野球の準々決勝ということで、私自身すごく監督さんの言う通りピッチングをしたので、その勝利はすごくチームのためになっている、3回一人ひとり違う見方でピッチングできる、すごい経験値のある、9人の打者との対決でした。」
「東京都の準決勝予定日は・・。」
ウグイス嬢がアナウンスをする。
(どうせならば、試合の取材にあたっている記者にも発表をしているのだから、球場内放送もプロがやるといいな)
最近、どうも進んでいる社会の取材も見て、受けて、茜は少し時間に満足度を感じることが多くなった。
思い出にするには儚すぎる、夏の準々決勝を二人は無事突破した。
山岸も喜んでくれるだろう。
「いや、まだ甘い。」




