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第二部 投げすぎた一年 二十一話
「ああ、山口君。」
山口と話す茜の父親。
「彼はすごくいい人ですよ、でも、生活を意識し続けている、僕も野球歴14年ですが、彼は中華屋さんで15年を過ごした。その生活、生涯が僕との出逢いで試されている・・その点はすごくいいと思います。」
「ただ・・。」
「ただ?」
「いや、なんでもありません。今度の試合、北海道から応援が来るので、おじさんもその同級生を連れてきてください、このチームがきっといい結果で夏の野球を熱くしてくれると思います。」
「そうか、頑張ってくれよ。しっかり、店でPRするけどな。」
「横浜のラーメン屋ですけどね。」
「はは。さすが、2年目の地元愛は一味も二味も違うな。」
「はは。ありがとうございます。」
山口は答えた。
「準決勝、坂下高等学校先発山口。」
右腕を回しながらマウンドへ向かう。
・・よかった。




