第一八七話 チームの話
「選手がマウンドに集まっていきます。」
「監督はじっとその様子を見ています。」
「あの山口が8回まで見ていた視線に変わりません。」
「それはきっと監督の指導でしょうね。」
「3月間練習した合唱で今、校歌を歌い出します。」
「先程の応援団のツイッター、家庭の事情で離れた山口のお母さんだと言うことです。」
リポーターが話す。
「やったね、茜くん。」
「ああ、ああ。」
「坂下高校監督、校歌を聴いてやっと笑顔になりました。
「中村は涙を見せません。悔しいですが、涙は見せません!」
アナウンサーが熱く言う。
「お兄ちゃんは頑張った、しっかりこの心には一番と写っているよ。」
「中村投手の妹さんからでした。こちら側のアルプスも温かい声援が包んでいます。」
こちらも熱く伝えた。
「それでは、今日の坂下高校の選手にお話を受けたいと思います。」
「まず、相内投手。」
「はい。」
「昨年は登板機会のなかった甲子園でしたが、見事決勝で投げ勝ちましたね。」
「はい、これも一年間の間に努力した結果、監督の采配に答えたい、結局チームをまとめるのに投手だけは回っていかない。」
少し、涙ぐんでいる相内。
「ありがとうございます。」
「中川投手、先輩の意地見せましたね。」
「はい、皆の応援があったからこそこういう場面での投球ができたと思います。」
中川が壇上を降りて、どよめきが起こる。
「では..。」
アナウンサーの言葉が止まる。
「ええ、アルプスから、一緒になろうよの演奏が流れてきます。」
「山口投手、一打の代打ヒットでしたね。」
「この音楽の演奏は今年4月から同級生と一緒に文化部で指導を受けて、怪我がなく迎え、終えた、そんな山口選手の甲子園でしたね。」
「ええ、それもすごく嬉しいです。自分は中学時代、家庭の事情で関東へやって来て、それまで、いや、高校に入るまでは野球は9人でやるスポーツだと思っていました。」
「その中で背番号1を目指すものだと思っていました。」
「でも、今日、それは違うと思いました。」
「野球は9人で守ります。..しかし、そこには観客の皆様がいて、アルプスの皆がいて、一緒に応援してくれた..応援してくれた・・。」
「野球はこのスタンドの中で、テレビを通して、結果を競い合うものであるのに不変な意味があると思い、この夏まで歩んできた。・・それはきっと、野球だと思います・・。」
「しかし、個人のベストプレーが、グランドの上の空まで、届いて、皆で校歌を歌えて、すごく充実した春から、文化部と何よりチームではなく、球場にその答えはマウンドでも正確にはわかりません・・。」
「中村選手との対決はどういう気持ちでした?」
「マウンドで分からないものは打席で理解しろ。」
「監督はそう言っていました。」
「だからこそ、結果には変わりのない、勝利ではなく優勝と理解していきます。・・しかし、難しい試合だったことは変わりありません。」




