第十七話
茜はふと思った。そう思いながら、もし本当に坂下が甲子園に出たら、この喫茶店にテレビを置かなければいけない・・すると、公、民のディスプレイとなるわけだ。
そこにラーメン屋の息子と言うのは意外にいい所に入ってきたみたいだ。無論、そんな考えては喫茶店がラーメンになってしまう・・。
まあ、もう夏休みなのだ。
試験のことは気にせずにすむべきである。
不安がその時だけ勝利に変わる瞬間を茜は感じた。
「茜君、投手だけではなく野手までも野球選手の情報を見てどうするんだ。」
「それは、山口君にもプロの世界を知ることを勧めたいからです。今は学校の一人として頑張っているけど、後二年もすれば、プロも注目する、今の一番の友達だからここまで。」
「僕だったら15分はかかっちゃうよ。それを読むのには・・。」
「マスターは豆の挽く時間とメディアを分けすぎですよ。同じテイストの夏は繰り替えすのは難しいもの・・。」
「いいじゃないか、夏休みなんだから。」
「まあ、そうですけど。」
茜は明るく言った。
接客は確実に上がっている。チームの成績と共に。
「物事の浅はかさが露呈しますが、それも3年生になれば結果を残せる。売り手と買い手は違うようで、もっと、もっと深いところで繋がってるんです。」
「なるほどねえ。」




