第百二十三話
「連続ドラマの主題歌、テーマ曲、愛でした。」
「一番、ショート、山口。」
「坂下高校。」
「昨年夏、500球以上を投げた優勝投手は、今年の春、打者として、圧倒的な投球数をこなしたマウンドではなくバッターボックスに向かいます。」
「今年の春の選抜高校野球開幕です。」
帽子のキャップに触る山口。
「投球の準備をしていた、両打席打法が甲子園に広がります。」
サイレンが鳴る。
「一番ショート山口。」
「中村選手。」
画面でプレーを見つめる二回戦を控えたチームの一員であり、背番号1の中村は取材に応じた。
「涙なしでは見られないですか。」
「それはマウンドで泣いているのと同じです。」
「背番号が、見えません。不思議ですね。プレーしているのは同じグランドなのに。」
「ありがとうございました。」
少し、記者も涙ぐむ。
「ただ、マウンドに上がらない選手達がマウンドを見たとして。僕はまだあきらめずに一番ショートの山口を見ているだけで、マウンドが来るなと言っているように聞こえます。」
「優勝したいと思う気持ちに伝わるんです。」
「でも、昔を知っている僕らならわかります。」
「決してそうじゃないと。」




